-殻-

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2002年10月31日(木) 意味

「好きだ」とも、
「愛してる」とも、
「結婚しよう」とも、

ただの一度も言ったことはない。

そんな言葉に意味がないことは、お互いに知っているから。


言葉はただの記号だ。
約束も、その刹那のベクトルの表出に過ぎない。

そんなことを言うと、大抵は(特にコイビト、とかいう輩は)
「なら何故一緒にいるのか、なぜ付き合っているのか」と責める。

そう言わないであろう君が、
僕の側にいることはとても大きな意味を持つ。


誰かが誰かでなければならないとか、
何かが何かでなければならないとか、
そんな絶対的な必然など存在しない。

偶然その手の中にあるものを、必然と思っているだけだ。

君は、
それを知っているという点において、
偶然ではあるけれど意識的に僕に選ばれ、
今ここにいる。


君でなければならない理由などない。
でも僕は、間違いなく君のような存在を求めていた。
それだけは間違いない。

だから、君なんだ。


これからも僕は、
「好きだ」とか、
「愛してる」とか、
「結婚しよう」とか、
口にすることはないかも知れない。

だけどそれは、
そうじゃないということを必ずしも意味しないんだ。


きっと君は、それさえも知っている。


2002年10月30日(水) 坂の途中

二度と会えないひとがいる。
会いたくて会いたくて、それでも叶わないひとがいる。

だからこそ忘れられないし、
それぞれの瞬間に焼き付けられているからこそ、
永久にあの姿のままで、
僕の胸の中に生き続けられる。

元気でいますか。

その一言を伝えたい。
だけど、きっと、
このままで、
会わずにいた方がいい。

そして僕らは、お互いに特別であり続ける。

時を止めてしまおう。
いつまでも、あの頃のままに、
何もかもを閉じ込めてしまおう。


2002年10月29日(火) 常識

箱の中の常識は、社会的ではありえない。
不特定多数の暗黙の了承と妥協の中にだけ、社会性が存在する。
外界との軋轢なしにそれを獲得することはできず、
客観性のみが定義することに意義があり、価値がある。

だからと言って、君が「そうである」必要はない。
「そうであるように振舞う」ことだ。
「常識的に考えたら」というのは、君が考えるのとは違う。

君は、君の思うように考え、感じ、動けばいい。
少なくとも、この許された空間の中では。

そして外に出るときに、
服を着るように、社会性を纏えばいいんだ。
例え誰かが下世話に興味本位で、君のその服の下を想像したとしても、
露出しなければ想像の域を出ることはない。

君は君を変える必要はないんだよ。
ただ、隠す術を身に付けること。
それが本当の君をも守ることになる。


でも、この例えはあまり良くなかったかもね。
寝てると無意識に服を脱いでしまう君には、ね。


2002年10月21日(月) 夜空

求めて止まない。


どんなに君の奥深くまで分け入っても、
どうしても君とひとつにはなれない。


だからこそ今日も僕は求め、
君はそれを受け入れる。


どこまでも、

どこまでも、

行き着くところがその先になくても、


僕らは求め合い、絡み合い、
融け合うことを夢見て、

進むしかない。


立ち止まって埋もれてしまえば、
楽には違いないだろうが、
それは「緩慢な死」を意味する。


辿り着くのだろうか?

僕らは、どこかに辿り着けるのだろうか?



窓からは、やけに明るい、真ん丸い月が、
秋の乾いた空にきりきりと輝いている。

そのせいか、

いつもは見えるはずの小さな星たちが、今日は見えない。



2002年10月02日(水) 目覚め

朝、アラームがなる前に目が覚める。
君は隣で、気持ちよさそうに寝息を立てている。

僕が時計を見ようとして身体を捻ると、
君が目を覚ましてしまった。
「・・・何時?」
君が尋ねる。

「もうすぐ6時半だよ。」
今日は僕も遅くていいから、もう少し寝ていられる。

君は眠そうに軽く伸びをすると、
ふみゅ、と甘えたようなため息を一つついて、
僕の身体に擦り寄る。


最近、少しずつ君は、
そういう表情を僕に見せるようになってきた。
それを、幸せのひとつのかたちだと思ってもいいだろうか。

まだ、君が僕に求めるものが、
はっきりとわかっているわけじゃない。
それでも僕は君を選んで、
今ここにいる。


7時を過ぎて、ようやく身を起こす。
身支度をして、君が車で駅まで送ってくれる。

僕が駅の階段を登りかけて、ふと振り向くと、
君は窓越しに小さく手を振る。

僕も小さく手を振り返す。


いつまで続くのだろうか、
このささやかな日常は。

失くしたものとの重さを、つい比べている。

一人であることを知っている者どうしが、
これから作ろうとしている生活を思うと、
それが果てしない空虚の中に存在しているような気がする。

それとも、

幸せなどというものは、
所詮空虚の中に浮かぶ塵のようなものなのだろうか。



台風の過ぎた空は、どこまでも、どこまでも乾いた青。





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