女の世紀を旅する
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2006年08月18日(金) オリバー・ストーン監督の仏教的死生観


オリバー・ストーン監督の仏教的死生観






アメリカのオリバー・ストーン監督(1946年生まれ.60歳)といえば,ヴェトナム戦争の不条理な戦いを描いた映画「プラトーン」や,一昨年に公開された歴史スペクタクル「アレキサンダー」などの作品が知られるが,彼はハリウッドではめずらしく仏教を信仰している点がユニークである。一般にキリスト教徒が多いアメリカ社会の中で,この社会派監督は仏教の信仰者である点が彼の映画作りに独特の視点を与えているのかもしれない。「プラトーン」は戦争が兵士を狂気に駆り立てる真実に視点をすえていた。

以下に彼自身が2年前に述べた自らの仏教的な死生観を記載しておきたい。




●仏教を信仰して

「 15年間暖めていたアレキサンダー大王の映画化がやっと実現し,改めて32歳の若さで死んでしまった彼の運命に参ってしまう。別に彼と比べるわけでないが,私自身の死に際を企画の時から毎日考えさせられ,映画が完成した今,実はいつ死んでも良いと思うようになった。アレキサンダーの生き方を映画化し,歴史ドラマを作るのが私の長年のゴールでもあったからだ。

実はこの10年来,仏教を信じるようになり,毎日,死を考えることが習慣になっている。生と死が仏教の基本だろう。人生は死,という考え方は非常に面白いものだ。感情的に死に慣れ親しむようになる。ただ知的に悟るのではなく,長い長い旅で,複雑な道のりをたどらなければならない。私は終わりがいつきても良いように準備している。しっかりと,落ち着いた心で死を受け取りたいのだ。

私の映画が暴力的だと評判になっているが,私自身の心境は無の境地に近い。――もっとポジティブに平和な心で物事を考えるようにしないと世界はますます乱れるばかりだ。仏教は私に人間の良さを信じる心を与えてくれた。

 多くの人は私が死ぬ時は空中爆発する飛行機からみじんになって飛び散るイメージを想像するだろうが,そういう状況でも私は覚悟を決めて,安定した心で粉々になりたい。少し前までは数珠を着けていたが,信心深くなるに従って,そういうものは必要なくなってきた。身ひとつで生まれて,身ひとつで去っていく。アレキサンダーのように毒を盛られて死ぬのも,ロマンチックにしてドラマチックな死に方で私にふさわしいかもしれないが。」





●監督の最新の映画「ワールド・トレード・センター」

2006年08月12日

 米社会派オリバー・ストーン監督の「ワールド・トレード・センター」(パラマウント)が、ニューヨークで封切られた。社会派らしい切り口は封印し、01年の米同時多発テロで倒壊したビルの間に生き埋めになった2人の警察官の救出劇を実話に基づいて迫真に描き、家族、人間愛、勇気を伝えようとした。


 ビルに最初の旅客機が突入した直後、警官らが現場に応援派遣される。指揮官役をニコラス・ケイジが演じる。警官らは惨状に驚きつつ、情報もないまま取り残された人たちの避難誘導に向かい、ビル倒壊に巻き込まれる。

 警官らが閉じこめられた地下の狭い空間と、彼らを心配する家族を中心に映画は展開する。 初日の上映後、ニューヨーク中心部の映画館では多くの観客が拍手した。ただ、平日とあってか、半分以下の入りだった。

 事件から5年がたち、今春のユニバーサル映画「ユナイテッド93」と合わせ、「9・11」をとらえたハリウッド映画が続いた。悲劇を描く商業映画を市民が直視する用意はできたのかどうか、その一方で事件の風化もメディアで話題になった。好き嫌いの分かれるストーン監督の今回の作品に、米メディアは好意的な評を多く寄せている。


カルメンチャキ |MAIL

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