女の世紀を旅する
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2003年01月23日(木) 北朝鮮の核危機とブッシュ政権の対応

北朝鮮の核危機とブッシュ政権の対応
                   2003.1.23




 イラク攻撃が切迫している中,北朝鮮の核問題も予断が許されない情勢だ.日本にとって直接的な脅威となる問題だけに最大限の注意を払いたい.

 いよいよ,ブッシュ政権の対北朝鮮包括協定構想の輪郭が明らかになった。核開発放棄の他、通常兵力削減の要求などもあり、アメばかりではなくムチも用意されている。一方、北朝鮮は米国との不可侵条約の締結に固執し、主張は平行線をたどっている。また、米構想には建設中の軽水炉原発を破棄し、火力発電に変更すべきとする内容もあり、日本もその対応にせまられよう。



●米政府強硬派の主張を反映した包括協定構想


 同構想は、1月13日のケリー国務次官補の記者会見、14日のブッシュ大統領の会見、17日のアーミテージ国務副長官の会見、これらの発言でその輪郭が明らかになった。全容は公開されていないが、明らかになった限りでは、政権内強硬派の主張が強く出ている。要点は次のようになる。

1、不可侵条約は拒否。
ただし代案として、大統領や国務長官が北朝鮮に敵意は持たず、侵略もしないと発言した内容を文書化する。

2、枠組み合意破棄、新協定締結。
 枠組み合意ではプルトニウム施設の破棄だけだが、新協定は高濃縮ウラン施設と大量破壊兵器の破棄、通常兵力削減なども対象とする。

3、軽水炉を火力発電に変更
 枠組み合意で約束した軽水炉原発建設を破棄、火力発電に代えることをKEDO(朝鮮半島エネルギー開発機構)理事会に提案する。

4、大胆な支援イニシャティブ
 米国はじめ各国が政府、または民間レベルでエネルギーや食糧支援に協力する。

5、北朝鮮との交渉
 北朝鮮が核開発を検証可能な方法で破棄したあと、米国は交渉に応じる。それまで接触は事務レベルの対話に限定する。





●北朝鮮にはアメよりもムチが多い提案


 このブッシュ政権の構想に対して、北朝鮮はまだ公式な回答をしていない。しかし、これまでの反応は否定的だ。ブッシュ大統領が「大胆な支援イニシャティブをとる用意がある」と表明した翌日の15日、北朝鮮外務省は声明を発表、「米国が声高に叫ぶ食糧、エネルギー支援は絵空事であり、欺瞞にすぎない」と述べて、相手にしないとの態度を示した。

 また、21日の労働新聞の社説は「ブッシュ政権がわれわれを攻撃する意図を持たないなら、なぜそれを法的拘束力のある文書にできないのか」と述べ、「核問題はわれわれの安全を法的に保障する不可侵条約を結ぶことによってのみ解決できる」との従来からの主張を繰り返した。

 北朝鮮は02年10月、今回の核危機が表面化して以来、この「不可侵条約の締結によってのみ核問題を解決できる」との主張を繰り返してきた。不可侵条約はいわば、解決の大前提だ。しかし、ブッシュ政権はそれを拒否、代わりに、より拘束力の弱い宣言や声明を文書化するとの提案であり、北朝鮮には不満なのだ。

 また、枠組み合意についても、従来のプルトニウム施設の破棄だけでなく、高濃縮ウラン施設破棄や大量破壊兵器禁止、通常兵力削減なども対象に入れ、新協定にするとの主張だ。21日の労働新聞はこれについて、「ブッシュ政権が北朝鮮を核危機を起こした犯人として、武装解除しようとしている」と反発している。包括協定構想は、北朝鮮にとってはアメよりはムチのほうがはるかに多い内容ということになる。





●クリントン政権時代の確執も背景


 アーミテージ国務副長官は17日、ワシントンの日本人記者団に包括協定構想を説明した時、「米議会が不可侵条約を承認する可能性はない」と述べ、同条約を拒否する理由の一つにあげた。共和党を中心とする議会内の保守派は、北朝鮮の独裁体制を嫌悪し、クリントン政権が北朝鮮と枠組み合意を結んだ時にも北朝鮮に甘いと強く反対。このため同政権は議会の承認が必要な条約とせず、単なる政府間の合意とした経緯がある。

 ブッシュ大統領はじめ同政権内には、今も枠組み合意に不満を抱く強硬派が多く、彼らにとって今度の核危機は同合意の破棄か、改定の好機なのだ。同時に、彼らにとって不可侵条約締結など問題外でもある。ブッシュ大統領も02年8月、ワシントン・ポスト記者のインタービューに答え、金正日総書記が国民を飢えさせているとして「心底から腹がたつ」と嫌悪感をあからさまにしたことがある。その総書記の政権を不可侵条約で保障することは、同大統領にはできない相談なのだ。

 また、こうした政治的背景からだけでなく、技術的な面からも、枠組み合意の改定を要求する意見は提起されていた。軽水炉のような大型原発を供与しても、北朝鮮にはその電力を送電する高圧配電網がないこと、原発技術者も不足していること、また万一の事故に備える国際条約に未加盟であることなどが理由だ。このため軽水炉より、安価で建設が早く、需要の多い地域に近接して建設できる火力発電のほうが適当との意見が出されていた。今回の核危機によってこの主張が表舞台に出たとも言える。





●日本にも影響が出る軽水炉問題


 包括協定構想は1月17日、日本を訪れたモリアティ国家安全保障会議アジア上級部長が日本政府関係者に説明した。福田官房長官の反応は「一概に評価は言えない」だった。日本が深くかかわる軽水炉建設の中止問題は影響が大きいからだ。

 枠組み合意では、軽水炉2基(出力計200万KW)を提供し、その費用46億ドルのうち韓国が32億ドル余り、日本10億ドルを負担する約束で、日本はこのうち3億2千万ドルをすでに支払った。建設は03年までに最初の1基、その後2年以内に2基目を竣工する計画だったが、作業が遅れ、1基目の完成が07年以後になる他、建設費用もかさむことが確実となった。このため、建設が容易な火力発電に代えるべきだとの主張が勢いを増したことも事実だった。

 建設中止はKEDO理事会が決めるが、問題は北朝鮮が応じるかどうかだ。また、軽水炉の本体を製作中の韓国の意向も無視できない。日本も大手電気メーカー3社が発電部分などプロジェクトの中枢部分にかかわる部分を製作中だ。建設中止の場合、これら日韓の関係各社への補償問題が出ることも間違いない。

 これらの費用に加え、新たに建設する火力発電所の建設費も含め、その分担をどうするかも今後の課題だ。軽水炉原発は日本と韓国が経費のほとんどを負担し、当時のクリントン政権は年間50万トンの重油の提供分だけを負担した。今回、ブッシュ政権が多くを負担しようとしても、米議会が認めない公算が大きく、結局、日本と韓国がほとんどを負担することになりそうだ。。





●外交優先だが、強硬措置も視野に入れている米国


 今度の核危機では、日米韓3国に加え、中国、ロシアが問題解決のために大きな役割を演じている。特に、ロシアはプーチン大統領の特使、ロシュコフ外務次官が1月20日、平壌で金正日総書記と6時間にわたって会談。朝鮮半島の非核化、北朝鮮の安全保障、エネルギーや食料支援の3点について、米朝間の調停を試みている。

 ブッシュ大統領は10月、今回の核危機が表面化した際、日米韓中ロの5カ国と共通の戦略を立て、外交手段で問題を解決するとの方針を打ち出した。その後、5カ国は朝鮮半島の非核化を推進する点で足並みを揃えた。関係国の利害が衝突してきた朝鮮半島でこのような各国の共同歩調は異例で、この面ではブッシュ外交の得点だった。

 しかし、非核化を実現する手段では、各国の意見は一致していない。当の北朝鮮は米朝の交渉を主張し、中韓もこれに近い。一方、米ロは国連安保理に問題を持ち出したい。特にブッシュ政権は北朝鮮が核開発放棄に応じない場合、安保理を動かして経済制裁も辞さない構えだ。

 また、CNNによれば、マイヤーズ統合参謀本部議長は1月15日、軍部が対北朝鮮作戦を検討しているとの情報について質問され、「軍はあらゆる可能性に備えて作戦計画を立てる」と述べ、軍事行動をあえて否定しなかった。北朝鮮が核放棄に応じない場合、ブッシュ政権が今は外交手段を優先しているが、北朝鮮が核放棄に応じない場合、最後の手段として軍事行動も捨てていないことを示しているとみてよいだろう。






2003年01月19日(日) 《 独裁者と核への恐怖  》

《独裁者と核へのの恐怖》

                2003年1月19日






●サダム・フセインの予言

 1990年6月、イラク大統領サダム・フセインは、オーストラ
リア生まれの政治評論家グレゴリー・コプレイに語った。冷戦
が終わり、米ソ二極構造の崩壊した後には、各地に力の空白地
帯が生じ、そこに地域的覇権国家群が登場するだろう。そして
中東で覇権を握るのはイラクである、と。
 
 これが2ヶ月後のイラクによるクウェート侵攻の予言だった。
サダムの野望はアメリカを中心とする連合国軍によって阻止さ
れたが、敗戦後もサダムはしぶとく生き残り、今また第2次湾
岸戦争の危機が迫っている。

 米ソが対立しつつも、それぞれの陣営を守っていた冷戦とは、
一つの秩序であった。米ソそれぞれによって、多くの民族紛争、
領土争いが押さえ込まれていたからである。サダムの言うとお
り、ソ連が崩壊し、陣営内のタガがはずれると、とたんに各地
で紛争が始まった。湾岸戦争は冷戦後の乱世の幕開けだったの
である。現在の第2次湾岸戦争の危機も、その歴史的なパース
ペクティブの中で捉えなければならない。
 



●冷戦後に多発した民族紛争

 たとえば、ユーゴスラビア。国内に6つの言語があり、宗教
もカトリック、ギリシャ正教、イスラムと多様な連邦国家だっ
た。1991年6月、国境を接するオーストリアに近い風俗を持ち、
住民のほとんどがカトリックを信仰するスロヴェニアが連邦離
脱を宣言した。ギリシャ正教を信じ、スラブ意識の強いセルビ
ア人を中心とするユーゴ連邦軍がそれを阻止しようと、内戦が
始まった。

 独立を巡る内戦は、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴヴィ
ーナと繰り返されていく。ソ連軍が健在であれば、このような
内戦は即座に戦車で踏みにじられたであろう。

 エチオピアの共産主義政権はソ連がキューバ軍を使って作っ
た。しかし、ソ連が経済的窮乏から1989年8月に軍事援助を打
ち切ると、自治領エリトリアのイスラム過激派が反乱を起こし、
91年4月にはついに共産主義政権を打倒して、独立を果たした
が、その後もエチオピアとの間で領土紛争が続いている。

 ソ連にタガをはめられていた世界各地の民族独立運動が息を
吹き返し、そのための紛争が勃発したのである。
 



●サダムの野望

 イラクもまたソ連の影響下にあった。ソ連は多数の軍事顧問
をイラクに派遣し、イラク軍の指導に当たらせていた。冷戦時
代にイラク軍がクウェートに侵攻したら、アメリカはそれをソ
連の差し金と判断しただろう。それはかつてソ連がキューバ軍
を使って、エチオピアを支配下においたのと同じ構図となる。
アフリカならまだしも、石油供給の大動脈たるペルシャ湾への
進出はアメリカとしても許せない。アメリカとの全面対決を望
まないソ連は、サダムがクウェートの併合を企てても決して許
さなかったであろう。

 しかし、ソ連とイラクの軍事同盟は、1987年に終わっていた。
ゴルバチョフのもとで民主化・自由化を進めるソ連にはもはや
イラクを押さえ込む意思も力もなかった。ソ連のタガははずれ、
サダムは行動の自由を確保していた。軍事力は蓄積され、中東
で覇権を握る機会は目前にあった。
 
 サダムは、紀元前6世紀に現在のイラクからエジプトに至る
版図を築いた新バビロニア王国のネブカドネザル2世を礼賛し
  ていた。この王は紀元前586年にエルサレムを奪ってソロモン王
  の神殿を破壊し、ダヴィデ王以来のユダヤ王国を根絶やしにし,
  ユダヤ人をバビロンに強制移住させた。サダムの御用ジャーナリ
  ストは次のように言っている。
 
「パレスチナのユダヤ人を、ネブカドネザルは征服した。
彼について思いを馳せるのは、アラブ人ことにイラク人に
いいたいからである。歴史は諸君に責務を課しているので
あり、責務とは戦いである。」
 
 サダムは、ネブカドネザル2世の肖像と並んで立つ自分の姿
  を絵に描かせている。
 



●アメリカは介入するか

 サダムは、イラクがクウェートに侵攻しても、アメリカは介
入してこない、と判断していたようだ。1990年8月2日の侵攻
開始後、ブッシュ政権が米軍の派遣を発表すると、サダムは8
月17日に行った声明の中で、英米は8年間も続いたイラン・
イラク戦争には直接の介入をしなかったではないか、と言った。

 侵攻の1週間ほど前、アメリカのイラク駐在大使エイプリ
ル・グラスピは、サダムと面会した際に、イラクとクウェート
との争いに関して、アメリカは「格別の見解はもたない」と言
った。これでサダムは、アメリカの介入はないと読んだようだ。

 これをアメリカが謀略でサダムを暴発させたとする見方もあ
るが、アメリカの偵察衛星は東欧のソ連軍の撤兵状況を監視す
ることに忙しく、イラクの地図すら作っていなかった事から、
アメリカの外交上の失敗と見る見方もある。

 いずれにせよ冷戦時代なら、アメリカが米ソ対決の危険を冒
して、イラクを暴発させることなど考えられないし、またサダ
ムが、アメリカは介入しないと読み誤る事もなかったろう。お
互いがどう出るか分からないままに、手探りでゲームを続けな
ければならないのが、乱世の習いである。




●「戦争に負けるよりも深刻」な事

 8月2日朝の時点では、ブッシュ大統領は米軍を使用する計
画はないと言っていた。しかし、偵察衛星からイラク軍がサウ
ジの国境近くに展開している状況を知り、サダムがさらにサウ
ジ東部の油田の奪取を企てていると読んで、米軍派遣を決断し
た。

 このまま放置すると、サダムは中東8千万のアラブ人と世界
の石油の半分以上を支配下に置くことになる。「中東の地図を
書きかえ、世界の経済に打撃をあたえるような軍事的冒険を、
合衆国は許すことができない」とブッシュは言った。

 アメリカの動きは予想外だったが、サダムは後に引けなかっ
た。8月末には彼はこう発言したと伝えられている。

「もし私が島と油田とを保持するためにのみ引下るとすれ
ば、国民は決して承知しないだろう。それは戦争に負ける
よりも深刻だろう。」

 また10月にはゴルバチョフの特使エルゲイ・プリマコフが
サダムに会って「アメリカは戦争をはじめ、ソ連がそれを止め
にはいることはないだろう」と言うと、サダムはごく平静に
「分かっている」、「しかしイラクは戦争に敗れる」とプリマ
コフがたたみかけても、サダムは驚くほど冷静に「おそらく」
と応えた。

 戦争に負けても、欧米を相手に勇敢に戦ったというアラブ世
界での名誉は残る。戦いで何十万人イラク国民が死のうと問題
ではない。「戦争に負けるよりも深刻」な事とは、自分が卑怯
者とされて失脚し、物理的生命を失う事を意味した。

 米軍はバクダッドまでは攻めてこないだろう。空襲だけなら
生き延びられる。敗戦後も秘密警察で国民を締めつければ、政
権は維持できる。この時点で、サダムは名誉ある敗戦を戦って、
生き延びる道を選んだのである。このシナリオは成功し、サダ
ムは今も政権を継続して、現在の第2次湾岸危機につながって
いる。




●許されなかったイスラエルの反撃

 乱世には群雄が割拠する。中東での動乱の目となってきたの
がイスラエルだった。米ソの自由主義と共産主義のイデオロギ
ー対決が消滅すると、その陰に隠されていた民族対立が表面化
する。

 イスラエルは、1981年6月にイラクが開発中だったバクダッ
ド近郊の原子炉を航空爆撃により破壊した。イラクはその直前
にイスラエル全土を射程距離に収めたミサイルを配備しており、
さらに核兵器開発を許すわけにはいかなかった。

 湾岸戦争で連合軍の攻撃が始まると、イラクは地対地ミサイ
ルをイスラエルに撃ち込んだ。イスラエルが反撃すれば、湾岸
戦争はアラブ対イスラエルの戦争となって、アラブ諸国は連合
軍から離脱するだろうというのがサダムの戦略だった。

 アメリカもそれを読んで、イスラエルにはイラクに反撃する
ことを許さなかった。イスラエル国民はイラクからのミサイル
攻撃を受けつつ、十分に反撃する戦力もありながら、じっと耐
え忍ぶしかなかった。アメリカのイスラエルに対する影響力が
弱まっていたら、湾岸戦争は中東全体を巻き込む、より大規模、
複雑な戦乱に発展していた恐れもあった。

 しかし、もしイスラエル空軍の出動が許されていれば、かつ
ての原子炉爆撃のようにイラクのミサイル網を徹底的に破壊し
て、その後の危険の芽を摘めたのに、というのが、イスラエル
の言い分である。




●独裁者が核を持ったら

 イスラエルのもう一つの言い分は、イラクの原子炉を破壊し
たからこそ、イラクの核開発が大幅に遅れて、湾岸戦争も成功
したという事である。確かにこの時点で、イラクが1個でも核
兵器を持っている恐れがあったら、米軍も容易にイラクを攻撃
できなかったろう。たとえ核ミサイルが未完成でも、核を積ん
だ艦船や飛行機で自爆攻撃をかければ、アメリカの艦隊や地上
部隊に甚大な被害を与えることができる。

 冷戦時代には、米ソがお互いに核兵器を持って、睨みあって
いたからこそ、核戦争は避けられた。お互いに核ミサイルを撃
ち込まれて、自国民を数百万人も殺される事はなんとしても避
けたいと言う自制心が働いていたからだ。

 しかし、自国民が核兵器で大量に殺戮されても一向に構わな
い独裁者に対しては、核を使ったら核で反撃するぞ、という脅
しは効かない。サダム・フセインや金正日のような独裁者が核
を持ったら、アメリカの武力をもってしても、容易には押さえ
込めないのである。




●乱世に広がる核兵器
 
 湾岸戦争ではアメリカの通常兵力の強さが実証されたが、同
時にそれに対抗するには核兵器しかない事を乱世の雄たちは再
認識した。彼らに核技術を供給したのが、旧ソ連から流出した
核技術者であり、また中国であった。

 中国は冷戦時代から、米ソの狭間にあって、独自の核開発を
進めてきた。ソ連崩壊後は、米国の一極構造に挑戦する「乱世
  の雄」であり、同時に「死の商人」として、いくつかの反米国
  家に核施設やミサイルを輸出して外貨を稼ぎつつ、乱世に拍車
  をかけてきた。

 中国は国境紛争を戦ったインドを牽制するために、パキスタ
ンに核技術を提供した。1989年に最初の軍事用原子炉が中国か
  ら届き、1998年にインドが核実験を行うと、すかさずパキスタ
  ンも後を追って、地下核実験を成功させている。

 湾岸戦争後の91年、イラクの宿敵でありイスラム過激派のイ
ランは、中国首相李鵬を迎えて、年間50億ドルの軍事産業支
援協定を締結した。イランはそれまでにも中国から相当数のミ
サイルを購入していたが、この協定を機に、年末には3千人に
ものぼる中国人技術者がイランの軍需工場で働くようになった。
92年7月には、中国製の核製造用原子炉2基が届いた。

 中国は最高指導者カダフィが独裁するリビアにも、原子炉を
輸出したと言われている。



●乱世に向かう世界情勢

 冷戦時代、米ソ対立の狭間で、米軍に守られていた日本は、
平和で安定した類い希な幸福の一時を過ごした。非武装平和主
義は、この幸福な一時にのみ咲いたあだ花であった。

 米ソ冷戦が終われば、恒久的な平和がやってくるとの根拠な
き楽観もそのあだ花の一つであった。冷戦とは一つの秩序であ
り、それが消滅した後、新しい秩序が生まれるまでは、群雄が
割拠し、しのぎを削る乱世となる。世界史を見れば、このよう
な乱世の方が常態である。しかも、現在の乱世は、小国でも核
さえ持てばアメリカにすら対峙できるのだ。

 このような乱世では、経済援助も軍事力強化につながる恐れ
がある。日本の中国へのODAが軍事力強化につながっている
という指摘は以前からなされてきた 。湾岸戦争前にイラク
が外国の政府・民間から受けている経済援助の実に73%は日
本からで、日本に対する累積債務は6千億円に達していた。
 乱世の実情に無知のまま、善意の経済援助を続けることは、乱
世に拍車をかけることになりかねない。

 このような乱世では、自らの生きる戦略や原則をはっきりさ
せる必要がある。たとえば多くの地方自治体が非核宣言を行っ
ている。それが単なるポーズでないなら、まず核を拡散させて
いる中国や、ただ今現実に核を開発し、わが国に脅威を与えて
いる北朝鮮にこそ、非難の声をあげなければならない。また一
朝事ある時に、自衛隊が効果的に国民を守れるよう、法的整備
も急がなければならない。

 ソ連や中国の核兵器には目をつぶって、米国の核にのみ反対
する反核運動、自衛隊の手を縛る事だけを目的とした反戦平和
運動は、幸福な冷戦時代のあだ花である。乱世にわが国がどう
生きるのか、世界の現実を見つめつつ、独自の戦略的な外交を
  とらなくてはならない時代がやってきた。泰平の時代は過ぎ去
  り,世界は間違いなく乱世に向かっている。時代の相が明らか
  に変貌し,パワーシフトが起こりつつある。
   


2003年01月08日(水) 2003年の相場動向(株式・為替)を予測

2003年の相場動向を予測する

――景気と為替の方向性を探る――
                     2003.1.8




今年は,デフレ不況の克服に焦点が向かうだろう,また銀行の不良債権処理が進展するか否かが,日本経済の明暗をわけることだろう。

インフレターゲット政策の実施も予想されるが,株価の反発は小泉政権が総辞職して総選挙が実施された場合に起こる可能性が高い。

為替は円安に向かうと予想する






週末の米国株 NYダウ8601(−6)   ナスダック1387(+3)

 年最初の2日のマーケットは、NYダウが265ドル高、ナスダックが49ドル高と急騰した。週末3日には反落の動きが出ずに強い動きとなった。



    日経平均 為替 長期金利 NYダウ ナスダック 米長期金利

3週前  8516    122   1.00   8433  1362    4.07

2週前  8406    120   0.94   8511  1363     3.96

1週前  8714   119   0.91   8303   1348     3.80

年末 8578 119 0.90 8601 1387 4.03



日経平均25日移動平均 8755円(+15円)






●膠着する景気と為替はどちらの方向に動くか?

・半導体製造装置受注落ち込むが、米ISM製造業景気指数は急回復

・米国、10年で72兆円の景気対策を追加へ

・原油、金の投機化進む。OPECは原油増産で価格安定化へ

・日本マクドナルドが店舗削減を拡大



 現在注目されるのは、景気と為替が上下どちらのトレンドが見えてくるか。景気は昨年半ばから横ばい状態、為替は120円はさんだもみ合いが続いている。



●米ISM製造業景気指数が急回復、景気上放れの兆か?

 経済指標については年末年始に発表されたものを概観する。

日本の11月の鉱工業出荷・在庫ともに横ばいの動き。電機セクターの出荷(≒生産)は10月に上放れかけたものの11月は落ちた。しかし、ここ半年間のもみ合いの範囲であり、方向観が出るほどの動きにはなっていない。横ばい状態が続くだろう。

 心配なのは日本製半導体製造装置の受注が11月に落ち込んだこと。ただし、世界半導体販売額は11月も堅調に伸びており需要動向はまずまず。

 この横ばい状態が続くとして,景気がどちらに動き出すかが非常に注目されますが、新年早々に発表された米国の12月ISM製造業景気指数は事前の予想の50を大幅に上回る54に。特に新規受注が11月の49から63へと急上昇しており、大いなるサプライズとなった。これを受けて米国株とドルはともに大幅に反発した。景気が上昇トレンドに戻るサインとなりそうな気配も出てきた。

 この動きを後押しするかのように、米国では10年間で72兆円(6000億ドル)の追加景気対策が打ち出された。すでに始まっている162兆円(1.35兆ドル)の景気対策とあわせ、10年間で234兆円という空前絶後の大型景気対策となっている。

 

●原油と金の上昇トレンドはピークアウトが近いと予想

 金価格は2002年12月はじめに316ドルだったものが345ドルまで急騰したが、1月の年始にはさらに351ドルに上昇した。原油は11月半ばに25ドルだったものが30ドルとなっていましたが、年始には33ドルまで続騰した。一段と投機化して株式市場の波乱要因になっているが、そろそろこの動きは一服すると予想される。原油についてはOPECが25〜28ドルのレンジに収めるべく増産することになった。

 

●為替は円安トレンドを予想

 今後の為替動向については、円安方向となると予想する。また、それが株式市場を押し上げる要因になるのでなかろうか。

円安予想とは,逆に一般のマーケットでは次のようなポイントで円高方向の予想が圧倒的に多い。

・米国政府がドル安政策に転換するのではないか

・イラク戦争など政情不安でドルが避けられるのではないか

・米国の財政赤字

・日本の財務官が交代した。

 米国政府がドル安政策を明確に取る可能性はほとんどないと思う。アメリカ産業界からのドル安待望論は当然あるが、米国市場からの資本流出が懸念されている状態でドル安政策をとることは考えにくい。前財務長官は為替介入を一度もせずに実質的に中立スタンスであったが、新財務長官になってもこのスタンスは続くのではないでしょうか。

 政情不安についてはドル安要因にもドル高要因にもなりうるので、一方的にドル安要因とするのはこじつけに感じられる。おそらく、出始めたトレンドをどちら方向にも加速させる理由づけになるのではと思われる。

 米国の財政赤字については、通貨不安を起こすほどのレベルでは到底ありません。また、かなり積極的な経済対策の結果でもあり、むしろドル高要因にもなりえる。

 日本の財務官が交代した隙に円が狙い打ちされて買われるという説については、99年7月に榊原さんから黒田さんに交代した後に円高が起こったことからの連想で、そのように言われている。これも、円高への相場エネルギーが溜まっていれば、それを解き放つきっかけになるだろうが、そのこと自体が円高トレンドを生み出す力にはなり得ないと思う。



●円安を予想する根拠

・日本政府の円安スタンスが明確であること

・日銀の量的緩和の方向性が明確であること

の2点である。

 円高の節目は117円、円安の節目はとりあえず130円。これは、90年代以降続いている円ドル相場の三角もち合いの上下のライン。昨年半ばにかけての円高時にもこのラインが機能していた。今回も機能すると思う。

 年末年始のNY市場では118円台まで円高が進んだ後に120円前後まで戻している。再度円高に向かったとしても117円台までと予想される。このまま円安の動きに入る可能性もあると思われる。

 米国経済の回復トレンドと円安トレンドが見えてくれば、当然ながら日本の株式市場にとってプラスに働くから,トヨタやソニーなど優良株も上昇しよう。



●外食産業は今が最悪期か?

 毎月の企業月次成績を見ても分かるように、外食は最悪の状態である。主要外食チェーンの既存店売上は昨年11月までで実に60ヶ月連続前年割れになっている。デフレが深刻化し,外食業界は当面苦戦がしいられるだろう。

 もっとも、この動きもそろそろ大底になりつつあるのではなかろうか。外食産業の苦境が大々的にマスコミでも取り上げられるようになり、日本マクドナルドなど外食デフレの象徴的な企業が店舗削減に動きだしているからである。




●予測の結論

 
・経済はここから下降しても底は浅い。再上昇トレンド入りの可能性もある

・円安になりそうだ。少なくとも円高の可能性は少ない

・金と原油の投機化はそろそろ沈静化しそう

・イラクとの戦争もたいした波乱材料になりそうもない

・需給面は外人、信用で売り圧力小。銀行の保有株売り懸念も後退する

・12月から個別にセリングクライマックス的な動きが相次いでいる

などの点から考えて、引き続き、日経平均は8200円から下に抜ける可能性は少ないと予想する。8000円割れがあっても,一時的となろう。


★ 景気については横ばいで方向感が出ていませんが、かりに下に行ってしまっても、そもそも生産レベルがほとんど上がっていませんから在庫の積みあがる心配が大きくありません。在庫が積みあがらなければ、景気の底はかなり低くなる。景気が下にいっても底が低ければ、昨年後半の株価下落でそれを織り込んでしまっている可能性が高いです。

 需給面については、銀行保有株の持ち合い解消は日銀がだいぶ吸収しそうですし、外人の日本株保有比率はベンチマークの半分程度まですでに落ちている。信用買い残も90年代以降のほぼ最低水準にすでに達している。これら需給面から見て、株価がここからさらに大きく売られる可能性は少なそうです。金融不安を深刻化させる8000円割れの事態は考えにくい。

 以上から、日経平均については2003年の相場は「当面、8200〜9400円のレンジでのもみ合い」と予想する。8200円は年初来安値近辺であり、9400円は9月末の水準で銀行の持ち合い解消売りが出やすい水準ということが根拠となっている。いずれにせよ,今年の相場は日本経済の再生か没落かの,正念場となることだけは確かだ。3月決算がハイライトとなろう。


カルメンチャキ |MAIL

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