| 2003年10月30日(木) |
デウスの棄て児/獄本野ばら |
++ 不義の子として生まれ、神に弄ばれ、棄てられ、絶望し、私は神を見限りました。 神に背きし者、その名は「天草四郎」――(帯より抜粋) ++ ひさびさの野ばらさま作品。ブランクがあると、よけいにこの方の作品の異質さというか特質さが際立って感じます。 これは、3万人以上の切支丹が殉教した島原の乱(「16歳でみんなの大将天草四郎」って語呂で年号覚えましたよね)の、天草四郎のお話。 日本史の1ペィジが、さすが野ばらさまって感じの解釈でこんなにも背徳的かつ耽美に…。こんな日本史だったら、選択する生徒も増えるに違いないです。
天主(デウス)よ。私は貴方に勝ったぞ。万物を創りし全能なる天主よ、貴方はさぞかし孤独であろう。淋しかろう。(略)哀れだな、天主よ。
獄本野ばら:デウスの棄て児 A Child Abandoned by Deus,p.174,小学館.

| 2003年10月27日(月) |
恋刃〜Lancet 〜(7)/五條瑛 |
革命シリーズの第4弾。 雑誌「小説推理」の連載7回目。 ふと、この16ペィジ前後の連載を読むためだけに、毎月\720出していることにはっと。他の連載も読めばいいのですが、とてもそんな余裕が…。なら立ち読みしたら?ってことですが、この雑誌が毎月手に入る環境に引っ越してきたなら、買わなきゃとファン根性出しているのです。 さて、ストーリィは佳境に入ってきたかな、というかんじ。 サ様に大川の夢をみたことを隠してしまう亮ちゃん。浮気を隠しているかのようでした。 さらに、いつのまにかキラの腕には“love violet storm”のタトゥが…。キラってばそんなにすみれちゃん命だったんだね。
欲望を刺激したのは、詩神(ミューズ)。 いま彫翔の耳許で、神がとろけるような甘い声で囁いている。お前の芸術という花は、これから開くのだ。わたしが咲かせてやるのだと。(小説推理12月号p.293)
| 2003年10月25日(土) |
ワーズワースの放課後�供真�原智則 |
++ 目が覚めると丸一日たっていたり、いつのまにか保健室のベッドに寝かされていたり、ぼくの一日が徐々にあやふやになり始めた。さらに現実の世界でも向こうの世界と同じように“言葉”を感じるようになったぼく――いったいぼくはどうなってしまうのだろう……? 一方、向こうの世界での王子としてのぼくは、終末を阻止するため、仲間達と聖地に向かう。かつて、人々が住んでいたという楽園へ、“始まりの人々”が築いたという砦へ……!(表紙折り返しより抜粋) ++ 展開の読めないまま続いた前巻の勢いそのまま、かなり最後まで終わりが見えずおもしろく読めました。 知恵を得た人々は、時と秩序を生み、その影で無をも生じさせた。っていう設定もおもしろかったし。 現実世界から逃避するために夢を見続ける(=眠り続ける)「眠り病」も、ありそうで少しいや。
ぼくは“言葉”たちに力を与えつづけた。 彼らを操るのではなく、彼らをただ信じるのではなく、彼らを愛するのではなく、彼らを頼るのではなく、彼らとともにありつづけるぼくがぼくであろうとするために。
杉原智則:ワーズワースの放課後�供�p.254,メディアワークス.

| 2003年10月17日(金) |
ワーズワースの放課後/杉原智則 |
++ 家のベッドで眠ったはずのぼくがふと目を覚ますと、そこは学校に似た場所で、でも、クラスメイト達は“魔法使い”だの“光霊(プラウマ)騎士団”だの“歩み(アルコーン)”だの馴染みのない言葉をあたりまえのように交わしていて、しかもそこでぼくはどうやら“王の息子”らしく、でに無能な王子と呼ばれていて……。 眠るたびに二つの世界を行き来するぼく――だが、次第に二つの世界が奇妙な一致を見せ始めた……。(表紙折り返しより抜粋) ++ 本屋さんでジャケ買いしてしまったもの。イラストと帯文句につられてしまったのですが、なかなかおもしろかったです。 ファンタジーって先が見えたら終わりじゃないですか?(ミステリは先が見えても終わりとは思いませんけど)なのですが、この話は終わりが全く検討つかずです。 次巻を早く読まなきゃ。
ぼくはふと、あることに気づいた。 いつの間にか、現実よりも夢の時間のほうが長くなっている。
杉原智則:ワーズワースの放課後,p.287,メディアワークス.

ふと思い立って実家から送ってもらって、読書(というよりも解読?)。 ここ1ヶ月くらい、何を思ったのか、高校生の頃に古典の授業で使っていた古典読本を読んでました。 私の母校は教科書の他に、1年が徒然草、2年が枕草子、3年が選択授業で方丈記or源氏物語という古典読本のラインナップ。 私は、徒然草、枕草子、源氏物語を使ったので、それを。 昔とった杵柄、なんとか古語辞典なくても読めました。解釈が合ってるかは微妙ですが…。 昔、ノートに原文写して、ひたすら単語分けして、品詞と活用形書いたのが懐かしい。今思うと、ああいう単純作業は嫌いじゃなかったはず。 ひたすら化学式を解いたり、ひたすら因数分解したり、漢文をひたすら書き下したりもしかり。
日々に過ぎ行くさま、かねて思ひつるには似ず。一年のうちもかくのごとし。一生の間もまたしかりなり。 かねてのあらまし、みなたがひゆくかと思ふに、おのづからたがはぬこともあれば、いよいよ物は定めがたし。不定と心得ぬるのみ、まことにてたがはず。(第一八九段「今日はそのことをなさんと」より)
解釈はこちら→日々が過ぎていく様子は、それまで予定していたこととは異なっている。一年もそうだし、一生もまたそうだ。 ならば、予定していたことは全て異なってくるのかと思うと、たまに予定どおりにいくこともあるので、物事を一概に決めつけることは難しい。つまり、物事はどうなるかわからない、と思っていることだけが真実であり、まちがいない。←
吉田兼好:徒然草
| 2003年10月13日(月) |
陰陽師 生成り姫/夢枕獏 |
++ 十二年前、月の明るい晩。堀川の橋のたもとに立ち、笛を吹く源博雅と一人の姫。すべては二人の出会いから始まった――。淡い恋に思い悩む友を静かに見守る安倍清明。しかし、姫が心の奥底に棲む鬼に蝕まれてしまった。(裏表紙より抜粋) ++ 短編ばかりだったこのシリーズ、初の長編です。 映画化・漫画化の影響か、このシリーズ360万部突破とか。立派です。 さて、今回はなんと言っても、鬼と成りかけた姫の描写が怖い。 長い髪を逆立て、顔には丹を塗り、赤の破れ衣を纏い、鉄輪を頭に被り、鉄輪には蝋燭が揺らめいている。額から皮に包まれた角が盛り上がり、目尻は裂けて眼が迫り出し、口は耳元まで裂け牙が長く伸び、唇からは血の玉が浮いている。 こんな姫に向かって、「鬼になったそなたが愛しいのです」なんて言える博雅って、ほんとにすごい。 姫は博雅に救われたでしょう、きっと。
「人と、鬼とは、ふたつにわかつことのできぬものだ。人あらばこその鬼で、鬼あらばこその人なのだよ(略)人は誰でも、時に、鬼になりたいと願うことがあるのだよ。誰でも皆、心には鬼を棲まわせているのだ」
夢枕獏:陰陽師 生成り姫,p.291,文藝春秋.

| 2003年10月01日(水) |
ブライトン・ロック! 2/椹野道流 |
++ イギリスの港町、ブライトンで地元の大学生ジェレミーと出会った留学生の航洋。お互いの傷を受け止め合い、「家族」として暮らし始めたふたりの元へ、航洋の元カノが現れ、日本へ一緒に帰ろうと迫る。 ++ 以前、同じ作家さんの著作に散々文句を言って、名前買い(本の内容を見ずに著者名だけで買うこと)は止めようと決めた私ですが、このシリーズは前作を読んでいたので、かなり迷いつつも購入。 感想は、まぁもう少し様子をみてみようかな、という感じ(←ナニサマのつもりだよ)。 結果として、航洋は日本へ帰るという選択肢をとったわけですが、この選択には納得。無理のない選択かと(こんなことを言うと、某さまに「現実性求めないでよ」と言われそうですが…)。 このシリーズ、次作が出るとすると、日本に帰った航洋が休みを利用してイギリスに行くとか、そんな感じになるのでは。
「(略)自分を取り巻くすべてのものに神様を感じて生きていけたら、最高だと思うぜ。(略)」
椹野道流:ブライトン・ロック! 2,p.192,二見書房.
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