頭のおかしい対談企画です。パネリストは跡部景吾くん(15)と不二周助くん(15)です。
 ついて来られない方は安心して置いて行かれてください、そのほうがいいですから。




ウェブあとがき。ベルさんのご本にうちの周助くんと景吾くんを載せてもらいました。所謂ゲスト。

−−−それではお願いします。
不二: こんにちは。はじめまして。結構長い話でしたが、お付き合いいただきありがとうございます。主役の不二周助です。
跡部: 相手役の跡部景吾です。
不二: なんかね、うちに帰って、漫画メインの本で小説があの分量だとイベントで手に取って下さった方が引いちゃうよっていうふうに言われまして。ベルさんごめんね。‥‥本当に長かったんだよ(跡部に)
跡部: アーン、そうだったか?
不二: うん。それに僕も、普段のサイトでの仕事とちがって色々悩んだり動いたりしたから、今回はかなり疲れました。
跡部: 俺は何もしてねえ。
不二: 僕の恋物語ですから。

−−−お二人は今回、Hはされたんですか?
不二: したよね?
跡部: してないです。
不二: するはずだったんですよ。
跡部: 確かはじめは「お前とセックスしたい」みたいな台詞があったはずだが‥‥
不二: なくなってたんだよね。
跡部: だから俺様は何も言ってねえし何もしてねえんだよ。
不二: 跡部、不満なのかい。
跡部: オイこの流れだとヤッてねえから不満みたいじゃねえか。
不二: 出番が少なかったから不満なんだそうです。
跡部: そもそも俺とお前しか出てないのに俺の出番が少ないっておかしいだろうが。
不二: だから少なくないんだよ。何もしてないからそう感じるだけだって。
跡部: だからだよ。「何もしてない跡部景吾」にお前は疑問を持て。
不二: ちゃんと仕事してください。

−−−跡不二について、お二人の率直な意見を聞かせてください。
跡部: 妥当な線。
不二: どういう意味だよ。
跡部: まあ有り得なくはねえよな。
不二: 上から物を言うねえ。
跡部: 相手に困ってねえからな。
不二: お互い様だよ。
跡部: 別に、嫌ならやってねえよ。
不二: 僕も嫌とは言ってない。
跡部: ま、相手にとって不足無しってとこか?

−−−お互い以外で絡んでみたい相手はいますか。
不二: 絡むって、カラむの?(跡部に)
跡部: そういう質問か?(記者: そうです
不二: あんまり痛いのとか、心無い相手はやめてほしいな。
跡部: ここで希望を述べることに意味があるか疑問だ‥‥手塚だな。
不二: 述べてんじゃん!
跡部: 手塚ァ、聞いてるか。俺様と対等に渡りあう覚悟があるならかかって来い。いつでも相手になってやるぜ?
不二: なんだ、ノリノリなんだ‥‥跡部は真田なんてどうかな。
跡部: アーン?
不二: 接点あるじゃない。ジュニア選抜だし。
跡部: 見たいか。
不二: 見たい見たい。
跡部: お前は本当に心の無いヤロウだな。
不二: フフ。僕も一応手塚で。王道だし、無難だよね。
跡部: なら3Pか。
不二: 死んでくれないかな。
跡部: 冗談だバカ。俺はシングルスしかやらないぜ。(決まった!)

−−−では最後に本の宣伝をお願いします。
跡部: この本を買うと無料でついてくる大島の漫画が最高に面白い。こいつ(不二)の便通の話だ! 是が非でも買ってくれ。
不二: そういう時だけ「買って『くれ』」なんだね!
跡部: わかってると思うが勿論こういう本じゃねえぜ。
不二: 普通の跡不二です。
跡部: それはいいが、ここで宣伝して効果あんのか?
不二: ううん。普通に跡不二の人とか、ベルさんのサークルの読者の人が買っていくから、僕らは関係ないよ。にぎやかし以下かな。
跡部: だろうと思った。
不二: 対談の〆っぽいでしょ。というわけで、本日はどうもありがとうございました。
跡部: これがやりたくて原稿やったんだよな。





ベルさんごめんなさい。オラたち友達だよね!
大島ベルさんのサイト「megalo」

2006年12月30日(土)

■ローテーション■ だめんずうぉーかーず


 男前を腫らした跡部くんがうちに来た時、俺は馬鹿正直にものすごく笑ってしまった。跡部はムスーとして黙っていた。笑うだけ笑って、どうしようかなと考えて、夕飯の支度をしている母さんに「友達が来たからちょっと公園行ってくる」と言って家を出た。

「もういいの?」

 夜になるとカップルが寄り集まってくる家の近くの公園は、薄暗くて閑散としていた。チカチカする外灯の明かりで跡部の顔の傷を見た。そりゃあの大きいのにやられたら、このくらいは当然だろう。俺は、むしろ、あいつは加減したと思う。やっぱり好きな男の顔が二目と見れないくらいに変わってしまうのは、別れ際であれ苦しいものだ。特にこの綺麗な顔なら。

「ああ」
「そう」

 男らしく答えた跡部の顔を俺はもう一度じっと見た。なんでこいつこんな堂々としてんだろう。今しがた痴情のもつれでブン殴られてきたくせに。恋人がいるのに他の男と寝たくせに。ホモのくせに。なにが「ああ」だよ、唐突に別れ話かまされた相手の身になってみろ。どうせ、「好きな奴ができたからお前とは別れる」とか言ったんだろうなあ。

「なんていったの」
「お前に言えるかよ」
「言ってよ」
「だめだ」

 跡部はえらそうだった。このえらそうなとこと、この綺麗な顔が、きっと忍足侑士は好きだった。俺もそうだ。この人の、それ以外のところを好きになる奴なんかいるんだろうか。

 跡部の腫れた頬は熱かった。俺は忍足の大きい手のひらを思い出した。跡部の首をぐいと引っ張って、切れた口の端を舐めてやった。そしたらそのままキスされた。暗い公園の外灯の明かりの中で、まるでスポットライトを浴びてるみたいだ。この人のこういう恥ずかしいところは嫌いだった。でもそういうこの人にキスされてる俺のことは好きだった。

「ちょっと待ってよ」


 俺は跡部の肩を両手で思いきり押しやる。跡部が舌打ちする。

「俺がきみとつきあうと思ったの?」
「ああ?」
「別れてきましたハイそうですかって、言うと思ったの」
「千石、てめえ」
「俺の前の男とつきあってたきみとだよ」

 少しは考えな。跡部の頭をポンポンとやさしく叩くと、俺はスポットライトの輪から出た。

 今、俺はカッコいい。対して跡部は勘違いの間抜けヤローだ。ぷぷ。この人のファンの女の子たちに見せてやりたい。この人はどうとも思わないんだろうけど。ホモだから。

「待てよ千石」

 跡部が大きな声で俺の名前を呼んだ。どこまでも、どこまでも聞こえそうな声だった。町中の人が今夜俺の名前を知っただろう。

 あーあ。せっかくカッコよかったのに。

 俺は引き返して、スポットライトの中から跡部を引きずり出し、暗闇の中でキスした。途中で跡部が噎せたけど構わず再度、キスした。この人が俺を好きになるのは初めからわかってた。

 跡部は間違いないく忍足が探してたような男だったし、二度と会わないことも俺は選べたけど、そうしなかった。えらそうなとこと、この綺麗な顔。この人のそれ以外のところを好きになる奴なんかいるんだろうか。はっきり言おう。そいつは跡部のことを好きなんじゃない。自分が可愛いだけだ。

「晩ごはんうちで食べてきなよ。親に紹介するから。この男前が新しい彼氏ですって」
「そういうことは事前の約束なしに行ったら失礼だ」
「ばかじゃないの。言うわけないじゃん」

 俺は跡部の手を引っ張ってマンションへ向かって歩き出した。心配しなくてももうちょっと経ったら今度は俺がこいつをぶん殴る番になる。その時が来たら手加減なしでやってやろうと思っているけど、わからない。俺って優しいからね。きっとこの綺麗な顔をこのまま取っておいてあげようと思うだろう。次に待ってる誰かのために。



(了)


結局これ千忍なんじゃないの。
最近ゆりゆりしたものが好きだなあと思ってたけど、もともと千石と忍足をくっつけようとしてた辺りとかはじめからゆりゆりが好きなんじゃないのかなー。

2006年12月09日(土)

■さよなら少年■ ダブルデート


 嫌がらせのように向かいのホームの電車は扉を閉じて行ってしまった。すべての総武線が余すところなく山手線に接続されていればいいのに。むしろそうでない理由が分からない。だから僕は表参道ヒルズなんかに行くのは嫌なんだ。

「不二?不二やないか」

 舌打ちしながら顔を上げるとびっくりした忍足の顔がそこにあった。僕はびっくりして「わぁっ」と小さく言った。白いタンクトップを着た忍足の上半身は思いの外、美しかった。
 思いの外というのは別に忍足が美しくていけないとかそんなはずないとかじゃなく、自分がそんな風に思うことはないだろうとどこかで信じていたのだ。忍足は、美しい肩の曲線をゆるやかに崩しながら、前髪を掻きあげた。フウーッと長く彼が溜め息をつくと、夏が新宿を席巻した。

「ああ悪い。そんなつもりはなかったんだ」
「どんなつもりなら声かけただけで舌打ちされんねん」
「ごめん」

 彼は黙った。僕も黙った。ポツリと「キレーな顔して」と忍足が言ったので、「きみも綺麗だよ」と言ったら、また黙った。
 会話が跡切れてしまったのが悔しくて、僕は興味もないのに尋ねた。

「どこかに行くの」
「表参道ヒルズ」

 僕は表参道ヒルズなんかに行くのは嫌なんだ!!

「今日は、どうしたの」

 僕のクイックイッという仕草を見て忍足が吹き出したことでなにかすごく充実した感じを得た。調子に乗って何度もやると忍足は、いつも眼鏡があるそのあたりを左手で覆った。何しろこのギャグは手塚を笑わせたことがあるのだ。

「‥‥おいてきた」

 眼鏡のない忍足の顔はあどけない。そして女教師とつきあっていそうな顔だ。やらしいなあ。

「‥‥罰ゲームで」

 忍足にムラムラ欲情する女教師の心境を想像してムラムラしていたら、おなじみの『お下がりください』に少し反応が遅れた。僕の左の肘の少し上の辺りを忍足の手が遠慮がちに(しかし毅然と、そして無意識に)掴んだ。喉仏の下がむずがゆく疼いた。

「青学不二ーっ!」

 今日はよく名前を呼ばれる日である。
 隣りのホームに顔を向けると陽炎立つ線路の向こうで氷帝芥川が僕らを指差していた。茶色か黒と、白かピンクの、タンクトップを重ね着して三十七℃にまばゆく照り返していた。少年は夏だ。僕らは夏だ。芥川の髪が一瞬金属のように光って目を焼いた。やがて山手線渋谷・品川方面行きがそれを隠した。

「あいつなんで覚えられへんねん」
「一緒に行こうか」
「ふぁ?」

 動揺したらしい忍足が馬鹿げた声を出した。僕は前髪を掻きあげて、切ったばかりの髪のツルツルした表面を確かめた。

「表参道ヒルズ」
「えー」

 あっかわいい、と思った僕が声を低めて笑うと忍足は大人っぽくちょっとだけ笑った。僕らは夏だ。たとえ三人の誰一人日に焼けていなくても。
 目の前で閉じる扉に乗り込んでしまわない忍足は芥川と待ち合わせしてる。行き先は表参道ヒルズ。駅前のあのカフェに三人で行ったらきっとあいつの機嫌は悪くなる。そしたらあのギャグをやってみよう。
 跡部は笑うかな。


(了)

2006年12月08日(金)

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