わずしにたくなってしまった‥‥

昨日の日記に赤←観を書いたんですが失敗した何が失敗したって観月の片想いに耐えられない私が。
無理無理無理無理無理‥‥すごく無理‥‥shinitai‥‥arienai‥‥yurushite‥‥

耐えられないので千栄ちゃんの話をします。
赤澤千栄ちゃん(43)。東京都多摩市にお住まいの主婦。二人の息子がいます。
男勝りと言われるサバサバした性格の割に家庭的で結構凝り性。
旦那様は単身赴任ですが月に二度は会いにいっちゃうアツアツ結婚今年で二十年。
短大を出てウエディングプランナーとしてホテルに勤め、職場結婚したよ。
趣味はこれといってないけどお料理とテーブルコーディネートかな?
キッチンでハーブを育てているんだけど、そのうち家庭菜園にも手を出してしまいそう。
お気に入りの家電は去年買ったばかりの斜めドラム式乾燥機付き洗濯機。

あのねー千栄ちゃんは観月くんが大好きなの。
だって吉朗(息子)は全然無関心だけど観月くんはトイレのオーナメントとか玄関のブーケとか替えたら誉めてくれるから。
紅茶の葉を新しいのにしたら気付いてくれるから。髪型変えたら気付いてくれるから。
キッチンで一緒にウェッジウッドのティーセットでお茶を用意しながら
「おばさん女の子が欲しかったんだよね。しかもお兄ちゃんも吉朗も全然モテないんだもん、彼女連れてくる気配もなくてさぁ。最近は観月くんがよく遊びに来てくれて本当に嬉しいな」
って言われて合ってるんだけど合ってないっていうかおばさんは確かに観月くんを女の子だとも吉朗の彼女だとも一言も言ってないけど何かが変っていうか。
あと吉朗が観月と遊ぼうとすると「お前は宿題でもやってろ」って言うので困っちゃうよ。

そんで千栄ちゃんの得意料理は当然カレーなんだけど、なんていうか当然普通のカレーなのね。
フレッシュハーブを使った冷製パスタとかキッシュとかパイ包みとか比較的ハイカラなレパートリーをお持ちなんだけど、
カレーは普通ののいわゆるこくまろと熟カレーをブレンドしたりしてつくるあのご家庭のカレーなの。
でもすごい美味しいの。菜の花とか夏野菜とか七種のきのことかすごく手が込んでて、ドロッとしてごはんにかかってる癖に美味しいの。
付け合わせが大概タマゴサラダなんだけどそれも美味しいの。だから観月はとっても複雑な気持ちになるよ。

だから赤澤の家って小金持ってるんですよ。そんで栗原はるみリスペクトなの。
赤澤ってジーパン穿かないんですよ。どっちかっていうと標準はチノパンなんですよ。
Tシャツよりポロシャツなんです。缶ペンじゃなくてペンケースなんです。
ソックスの丈が長いんです。くるぶしソックス履かない。ベビーC(※)しない。
ポケットに直に小銭入れない。砂浜以外でビーサン履かない。街で短パン履かない。
でもリンスするのが本当にいいかは私にもわからない。そりゃ確かに観月はするけど。
あと電気カミソリが嫌いなんですけど理由が「うるさいから」なのね。
観月はそれを聞いて「それじゃあどうしてもっと静かに生きられないのか」と思ったけど。

※ベビーC ‥‥ ベビーGのバッタもんの腕時計。山吹生の必須アイテム。


ちなみに吉朗の部屋にはウォークインクロゼットがある。
お兄ちゃんの部屋との境にある両開きタイプだけど向こう側は封印されているのでほぼ吉朗専用。
もっとも大した服がないのでダイビングの用具とかうきわとかビーチボールとかが入れられているけど。
あとたまに観月が入れられううんなんでもない。あれは自主的に入っていなんでもないったら。

2005年04月26日(火)

■チノ■

 向こうの角の一つ奥のアパートメントが改修工事に入った。アパートと言っても、玄関は共同だしトイレは別棟だし風呂もない。ただ建築そのものが妙に(と言っていい)堅牢で、古いなりに綻びを感じさせない居住まいを観せている。聞けば昔、ほんの一時そこは病院だったらしい。この辺りの地主の関係者が開業するにあたって建てたのを、廃業後にうまくして人に貸したのだそうだ。その地主のせいなのだろう、僕らの寮のあるこの一区画には古くて洒落た洋館が多い。数にすればほんのいくつかなのだが、割りと新しい街でそれらは身を寄せあうようにひっそり建っているから、置いていかれたような隔絶されたような雰囲気が漂っている。改修中のアパートは、再来年の春、聖ルドルフの四つ目の学生寮になる。

「いい子たちだから、うまくやっていってくれると思う」

 僕は思わず振り向いた。後ろで話し込んでいた観月と赤澤がきょとんとして顔を上げた。

「どうしました淳」
「その‥‥いい子って誰が」

 おかしな質問だったと思う。でも観月を知る人間なら大概の奴がここで思わずおかしなことを聞いてしまうだろう。だって観月がおかしなことを言ったのだ。

「新三年生。きみの可愛い後輩たちですよ」

 観月はため息を柔らかく零すと前髪を指先で触れた。今のこの反応。

 中等部を出て観月は落ち着いた。険が取れたというか、だから、落ち着いたのだ。いつも安定している。柳沢をして「男の子の日」と言わしめたあの定期的な竜巻あるいは鉄砲水も、そういえば年明けの一発以来すっかりなりを潜めていた。

 これが観月の本来のキャラクターなのではないか。最近そう思う。これまで僕らが観月の性格だと思ってきた脆さや混乱した部分は、一過性の特殊なものだったようにも思える。新しい生活が彼に与えた過度の緊張が、それに少なからず影響していたんじゃないか。もちろん根拠はない。ただ今の僕がそう思うのは、もうすぐ二年になる観月との付き合いあってのことだ。苛立っていたり沈んでいたり浮き足立っていたり、それはもう色々な状態の観月を見てきた。怒鳴り散らされ無視され鼻で笑われ謝られ、時には頼られた。何が観月らしさか、それなりのことが僕にも言えるはずだ。

 そう、観月は確かに安定していたが、あの強烈にして苛烈な「観月はじめ」は少しも損なわれてはいなかった。相変わらずテニスは手厳しいし、毒を吐かせれば種は尽きないし、得意になれば天井知らずだし、厭味には磨きがかかっている。それに前より冷淡になった。恐るべき処理速度で、興味をなくしたものをばっさばっさ切り捨てていく。こうして挙げていくと観月の特徴といえるものは一般に人の短所にあたると気付かされる。でも僕らは、それを好きだった。観月の優しさだとか、注意深さや熱心さなどの美点は、彼の魅力的な欠点の前には言うに足らないことだ。だからこれはフォローすることになるが、観月は今も十分厭な奴であり僕らの愛した非情な悪辣ぶりは健在だった。

「淳も近々行ってやれよ。あいつ連れてさ」
「うんわかった。俺もそろそろ柳沢とやりたくなってきたし」

 赤澤に言われて僕は担いだテニスバッグを踵でトンと蹴り上げた。ルドルフに移る時に持ってきた古いテニスバッグは、僕の当時の予感に反して未だ現役だ。あの頃は自分がどこまでも新しいものを欲しがっていくんだろうと思っていた。なんとなく、それは諦めに近い気持ちだった。

「あ。今の野村が聞いたら泣いちゃうかな」
「泣くぐらい構わないでしょう。柳沢はもう帰ってるんですか」
「多分さすがに。あいつどう、夜ちゃんと寝てるか?」
「多分、さすがに‥‥あと半月の辛抱だしね」
「そうですね」

 観月は半分はどうでもよさそうに流した。柳沢は少しの間テニスを離れている。来月頭の全国模試で何位内だかに入ると親御さんに啖呵を切ったそうだ。ルドルフの高等部は決して悪くないが、柳沢の進路も決して簡単ではない。聞けば目眩のする難関だ。それでも残ってくれたことを考えると僕はいくらでも彼を待っていたいと思う。だが地区大会への調整を睨んだ観月はそうも言っておれず、ご機嫌は右肩下がり。先日とうとう柳沢の部屋のカレンダーにレギュラー決定の日取りを赤マジックで書き込んでしまった。僕は今は野村と組んでいる。野村は裕太と組むことが多かったので、僕のお守をする傍ら二年の先輩たちとの相性を見ている。

 高等部のテニス部に三年はいない。もしかしたらこれからも伝統的に二年が主力になっていくかもしれない。テニスのために入った僕らは最後の秋までやっていくつもりだけど、どのみちレギュラーの半分は後輩から選出することになるだろう。

「本当言うと俺、柳沢も赤澤も外部だと思ってた」
「ああ?俺もか?」

 まるで予想しなかったという顔で赤澤が顎を突き出す。

「将来さ、省庁とか行きたいかと思って」
「どんだけ賢いの俺は」
「淳は『行きたいかと思った』って言っただけだ」
「はいはい希望な。持つだけはタダな。お前は揚げ足取らずにいられないのかよ」

 そう言って、少し先を歩く観月のシャツの後ろ襟を掴んで引っ張った。観月の軽そうな(物理的意味で)頭が仰け反った。墨のように真っ黒い髪がぱさ、と赤澤の手の甲を打つ。僕は、見てはいけないものを見た時のように、無表情に目を逸らした。

「やめてください裾出るでしょう」
「あーそうだはじめ」

 肩が、大きくびくりと跳ね上がったように見えたのは僕の側の欺瞞だろうか。少なくとも赤澤はそれに気付かなかった。観月もごまかすようなことは言わなかったししなかった。赤澤が観月のことを観月と呼ばないことに、もしかしたら二人は慣れてしまったのかもしれない。僕だけが未だに違和感を捨て去れない。自分自身が「淳」と名前で呼ばれるように、同じように観月が赤澤に呼ばれることを、僕は受容できない。それは違う、あるべき形ではないのだ。少なくとも僕と観月にとって。

 その名前はもっと特別に呼ばれるべきなのだ。僕はずっとそれを待っていた。

「今度うち来てくんねえ? 小一時間でいいから」
「いいですけど」
「悪ぃな。優加が、つうかおふくろがやたらお前の話するからさ、あいつも会ってみたいとか言い出しちゃって」

 観月が立ち止まり振り返る。それは、ただ僕らが寮の階段の前まで来てしまったという理由に過ぎないのだけど、まるで意味深長だった。観月は赤澤に向かって手を差し出した。赤澤はまとめて肩に背負っていた観月のテニスバッグを渡した。それについての言葉は交わされなかった。観月と僕らの、とりわけ赤澤との間にできた幾つもの、意味や理由をいちいち必要としない事柄。幾つもの、はじまりが埋もれてしまって残された端的な結末。それらは海を埋め立てそうに増えてしまった一方で大事な何かを置き去りにしてきた。観月はバッグの礼など頭にも浮かべずに、怪訝な視線で赤澤の表面を読み取った。

「自分の都合で呼びつけるのに小一時間でいいとは、僕の忙しさに随分配慮してくれてるみたいだ」
「リクエストがあるならうちの千栄おねえさまが腕をふるっちゃうよ。」
「じゃあカレー」
「いやまじで」
「だからまじで。金曜にしませんか。お姫さま二人がよければ」
「よし金曜な。帰るか?」
「週末課題次第ですね。今週は土曜部活できないし」
「じゃあ決まり。土曜、中等部は午前練。一緒に行こうぜ」
「課題次第。それじゃあ、お疲れ様でした」

 右手のバッグを少し上げて、観月は背を向けた。そのまま短い階段を昇っていく。じゃあな淳。赤澤は僕にそう言って手を振った。僕は辛うじて機能している惰性でもってなんとか手を振り返した。赤澤が坂を下りていく。早く観月の後を追わなければと思っているのに足が竦んでいる。もうすぐ観月が玄関の扉を開けてしまう。赤澤がふと振り返って僕のはるか上を見上げた。

「はじめー、ラケット忘れんなよ金曜!」

 僕は、後ろで観月がどんな反応を示したのか、振り向いて見ることができなかった。どうしてもできなかった。赤澤が少し笑ってまた踵を返す。ゆるやかな坂を下って角を曲がって消える。工事現場からかんかんと何かを打ち付ける音が規則正しく響いていた。それはずっと、寮へと向かう道にずっと、響いていたのだが僕がそれに気付いたのは今この瞬間ようやくのことだった。

 思い過ごしであるならその方がよかった。観月は何一つそれについて僕に話さなかった。柳沢にも野村にも誰にも何も話さなかった。裕太にだって話したはずはない。あの正直なまっすぐな目に見られて観月が耐えられるはずがない。いや、観月は、耐えるのかもしれない。彼がどれほど忍耐強く冷静で感情を殺すことに長けているか僕には想像が付かない。あの観月が、あの、湿気が多いと言っては苛立ち気圧が下がったと言っては黙り込みする気分屋が。襟が折れることにも靴下の踵が捩れることにも鞄の持ち手が滑ることにも我慢ならない観月が。これまでどれほどのことに耐えてきたのか、僕には、想像できない。想像することができない。

 すっかり萎えた足を叱咤して階段を昇った。僕が傷つくことなど何もない。それは傲慢だと、思った。僕は観月を理解したいだけだ、理解している気になりたいだけだ。がらすの扉を押し開けると観月が玄関に座り込んで靴紐を解いていた。傍らに鞄とテニスバッグが無造作に重ねられていた。夕食の支度が始まろうとしている食堂から、賄いの小母さんたちの声と微かなテレビの音声が聞こえた。

「淳?」

 観月が顔を上げる。慌てて靴を脱ぎ下足入れに突っ込んだ。スリッパを掴む。観月が隣に並んだ。靴箱の蓋を持ち上げローファーをしまう、横顔には表情はなかった。

 先んじて奥へ向かう背中に声を掛ける。

「ねえ観月。さっきの、千栄おねえさまって」
「ああ。おかあさんですよ赤澤の」
「それじゃあ、優加っていうのが」

 語尾が掠れた。気付かれなければいいと祈った。観月は階段の途中から、首を少し傾げてちらりと僕を見た。

「彼女です。僕も会ったことはないけど」

 観月は笑ったのかもしれない。笑うような気がした。観月の感情は、外に出すにはあまりにも繊細すぎた。だからこんな時彼は笑うんじゃないかと、そういう気がした。

 他人の気持ちなどひとにはわからないものだ。それを知っているのに、どういうわけか僕らはそれを理解したがる。共有したがってしまう。無謀なことなのだ。それでも僕は赤澤がもう二度と観月の名前を呼ばないことを切に願った。もう二度と観月を見て笑いかけないことを、彼の視界で陽の光を浴びないことを、幸福そうに目を閉じないことを祈った。一分一秒だってあの男が観月と無関係に呼吸することが許せないと、誰でもなく僕のためにそう思った。赤澤の声が観月から名前を剥がしていく。彼の名前が彼の名前でなくなる。僕を兄と区別するために「淳」と呼ぶことは今までもこれからもあらゆる人間がそうするけど、たとえそのことが僕を疎外しても、痛みに変わることは多分ない。赤澤だけが観月から名前を剥がしていく。優しく、親しみと愛情を込めて呼ぶごとに、そこから意味と理由とが砕かれていく。

 けれどもそれが観月を静かにした。あの頃僕が観月に感じていた独特の空気は、ひとつの悲愴さだった。全てが僕の思い過ごしなのだろうか。あるいは僕こそが観月に対して絶望的に恋焦がれているんだろうか。それなら、それでいい。その方がいい。


(了)

2005年04月25日(月)

■競技恋愛■ 忍足くんと千石くん(とその他)


 僕は赤が似合わない。多分赤の方が僕にそういう感情を持っているのだ。だから選抜のジャージは好きじゃない。越前も英二も似合っているのに僕だけ似合わない。似合わないものを着ているのは気分のいいことじゃない。僕は僕に似合わないものをそばに置いておきたくない。耐えられないのだ。

 でも、これは救いにはならないが、このかっこいいジャージが絶望的に似合ってないのは僕一人ということもなかった。その負け組の一人が食堂にいるのを見つけたので、僕はそこで読もうと思っていた雑誌を丸めて部屋へ戻ろうとした。その時、声を聞いた。僕はびっくりしてそこから動けなくなった。僕をその声でその場に縛り付けた奴がやがて僕に気が付き、僕を部屋へ回れ右させた奴が釣られて振り返り僕を認めた。ここに、世にも尊き色から忌み嫌われた三人の戦士が集結した。戦士たちはいずれも疲弊していた。

「ポンタ飲む?グリーンアップルあるよ」

 千石くんは僕に手招きして言った。テーブルの上にはミニサイズの炭酸飲料の缶が各種取り揃えられていた。

「冷えてないじゃない」
「氷持ってこようか?」
「オレンジ」

 千石くんの、止まっているものに対してはふし穴らしい目がオレンジのそれを探す。向かいに半ば俯すように座っている男がズズズと控えめな手つきで探し物をこちらへ押しやった。僕はそれを取って開けて飲んだ。温いソーダなんて最低だ。でもよく冷えたそれよりはましだ。

「飲んだら、不二、ちょっと外して」

 彼は言った。その地を這う低い声は僕を三味線に加工される途中の猫の皮の気持ちにさせた。そのあまねく嫌悪に塗りたくられた僕の毛並みを更に逆なでするような千石くん(この場合存在自体)は澄まして口を挟んだ。

「あれ、聞かれると困る話なんかしてたっけ?」
「黙っとれ赤頭」
「忍足くんの色彩感覚って大雑把だね」
「じゃあご馳走様。おやすみ」
「不二くん」

 なんなのだ。僕はこのおつむの明るいのともそこのもっさいメガネとも当事者にはなりたくないのに、二人はあたかも僕が何かしでかしたかのような顔をしている。

「居なよ。それ読むんでしょ」

 僕は想像の中で、石斧のごとく硬く丸めた雑誌を千石くんの頭が地中にめり込むまで叩きつけまくった。

 隣のテーブルから引っ張ってきた椅子を千石くんと忍足くんの真ん中に据えて腰を下ろした。そうして言われた通り雑誌をめくりはじめた。いわゆるお誕生席に座った僕に千石くんがハッピーバースデーを歌い出さないことだけを祈った。

「何がしたいんかわからんし」

 ゴーレムの寝言こと忍足くんは真っ先にそれだけ言って黙った。まあ、順当なやり方だ。でも全然だめだ。

「俺ですか」
「俺は今だれと話しとんのや」
「いや、ハハ」

 千石くんは誠意のないドナルドダックみたいに笑った。

「ねえ、さっき言ったこと。この人に聞こえる声でもう一回言える?」

 アヒルちゃんはお風呂場の隅に忘れられたビニールのアヒルよろしく頼りなげな目で忍足くんを見つめて甘い声を出した。僕は彼が僕を「この人」とか呼んじゃう某かの権利を有しているのか思わず考えた。

 忍足くんは千石くんを見て、僕の方へ視線を走らせた。そして目が合うとそれを望んでいなかったという疎ましげな顔をして顔を背けた。恐らく彼は僕の存在を見て確認したかっただけで、そこに僕が彼を見るという僕側の主体性は不要だったのだ。しかしながら、目を逸らした後彼は再び僕を見た。事態の打開を求める表情で。僕は忍足くんにミスター自己中の称号を与え謹んでそれを黙殺することにした。

「不二は」

 この男の僕に対する姿勢はぞんざいだ。正確に言うと親しげだ。千石の親しげな態度は正確にはひどく冷たい、それと同じことだ。

「こいつのこと知っとるん」
「都大会で対戦したよね」
「決勝でね。あんまり覚えてて欲しくないんだけどなあ」

 千石くんは話を続ける意思があることを見せて僕はそれを無視した。それで気付いたのだけど、僕は普段無視することを意識したりしない。

「おまえが好きなんは跡部やろ。俺は関係あらへん。違うか?‥‥そう言うたんや」

 今すぐ5万ガロンほどゲロを吐いてこいつら二人カナダ辺りまで押し流してしまいたい。瞬時にそう思ったが、大層言いにくいだろうことをずばっと一息に言って退けた忍足くんに敬意を示す意味で席を立つのは思い留まった。そうとも。僕は忍足を尊敬した。

「答えてみいな。それこそ、不二に聞こえる声で」

 関係ない関係ない俺は関係ない。彼らは、どうしてか僕を物事の当事者にしたがり、そうすることに成功した。僕は自分が誰であるのか忘れそうになる。何故だろう彼らがこんな暴虐を行えるのは。この僕に対して。今まで誰がこんなことを成し得た?(この僕に!)忍足くんは先程の痛々しい説明台詞からこっち延々千石くんの顔面に視線を縫い付けている。それが彼のやり方、この誰にとっても居心地の悪い現状を打破しようという試みなのだ。今までも彼はきっとこのやり方で幾つかの問題を解決あるいは破棄してきたに違いない。

「違う。俺がすきなのは君」

 千石くんは落ち着いて切り返した。僕の想像の中で忍足くんの超カッコイイメガネのブリッジがすっぱり二つに分かれて両方の耳にぶらぶらぶら下がった。

 ライジングショットだ。日常生活で僕らの放つ球は十中八九、コートを蹴って跳ね上がる。千石くんは一瞬を見逃さない。球に込められた予見牽引示唆誘導ハッタリあらゆる回転は、彼にミートした瞬間、無効化する。僕ら(この場合不本意ながら僕と忍足)の、積み上げてきた自分のショットに対する確信と自負とが、そのまま彼の多分本当は根拠なんてない自信に満ちた態度を裏打ちしてしまう。

 彼の言うことは嘘だ。僕は(忍足は)自分にそう諭す。そうだ、絶対に、あいつに確証などあるはずがない。諭せば諭すほど忍足の(僕の)自らへの信頼は揺らぎ、彼に干渉を許す羽目になる。忍足くんは本当は切られていなかったメガネのブリッジを押し上げた。僕は慌てて雑誌のページを捲った。

「どうして信じないのかな。俺が君を可愛いと思ったらそんなにおかしい?」

 おかしいだろ。

「おかしいやろ」
「じゃあ跡部くんだったらおかしくないの」
「可愛いはおかしいけど好きなんやったら納得できる」

 最悪だけど同意。

「どうして」

 聞くかそれを。

「おまえより強いから。おまえより自信あるから。おまえより無神経やから」

 おまえも言うかそれを。全部同意するけど。

「俺、自信なんかないよ」
「えっ」

 忍足くんが僕を見た。僕は両手で口を押さえて2マイルほど地面にめり込みたい気持ちで目を逸らした。(だって食い付くのそこかよって思うじゃない。確かに反則ではないんだ、でもあまりに卑怯な気がする、スポーツマンシップとは一体なんなのだ)千石くんはずっと忍足くんを見ていた。ずっとずっと見ていた。

「どうやって自信持てっていうの。振られるならともかく、好きな子に告白して信じても貰えないんだよ」

 この日、千石くんが敵陣に沈めた球は数知れないが、最も深く芝を抉ったのはこの『好きな子』という言葉の響きであった。

 忍足はかすかに首を傾げた。口を半開きにしたまま、ほんの少しだけ眉間に力を込めて、瞬いた。このもっさりした髪型の一八〇センチ弱のスーパーハスキーヴォイスの丸メガネと『好きな子』という甘美なトーン。女の子はわからないけど世界中の男がそれらの繋がりを理解しないだろう。千石くんは例の気弱なビニール・ダックの瞳で遠慮がちに笑った。ごまかすような微笑みだった。それでごまかされたのが結局ごまかすべき感情の存在の不明瞭さであったとしても確かにその笑顔は僕らの胸を打った。

 そして忍足くんは目を伏せて、呆れをため息で飾った。

「ほんでも、俺はやっぱり跡部やと思うわ、おまえの好きなんは」

 僕は無意味に雑誌を睨むのをやめた。表紙を指で掬ってそっと閉じた。あまりいい気分じゃない、僕は、世界中の男の大多数の側で居たかった。でも少し違ってしまった。千石くんのことがわかる。今ならこの人の(そう「この人」だ)真摯なきもちが、ここに見えるようにわかる。僕は雑誌を元通り丸めて右手に持ち椅子から立ち上がった。

「依怙地でおくゆかしい所。見た目も純和風」

 咳でもしようものなら肺から砂が溢れ出ただろう。これは千石くんの意見で、僕の主観では有り得ない。しかしとにかく僕はそう言って、テーブルの上の缶ジュースを一つ頂いた。忍足くんは伏魔殿の主でも見るような目つきで僕を見上げた。千石くんは僕に目もくれずテーブルに肘をついた。

「ね。俺じゃなくて不二くんを信じてみてよ」

 あるいは彼こそが最もスポーツマンシップを重んじた。勝つことだ。勝ちゃいいのだ。跡部とか手塚とかその辺のがつがつした連中が女神に祝福されているように、彼もまた成すべきことを成して勝利に努めた。報われるかどうかには興味がないので僕は今度こそ部屋へ戻ることにする。そう、運命が彼に味方して、僕をこのテーブルに着かせた。僕がここに居たのは千石くんのためだが、彼のためを思ったのは僕でなく女神様だった。忍足くんが負けたのは僕に質問したあの瞬間だ。

 忍足くんは僕に何も聞くべきではなかった。僕と千石くんの間には大した深遠な繋がりなどない。ただ僕が彼の前で、ちょっと昔、オレンジでなくグリーンアップルを飲んだというそれだけの関係なのだ。


(了)

2005年04月24日(日)


〜行こうぜ全国!!〜


◆新宿 【区間乗車時間/累計乗車時間】[区間運賃/累計運賃]

│京王線(急行) 15分[190円/190円]

◆つつじが丘【15分/15分】

│京王線(急行) 5分/調布乗り換え(特急) 10分[190円/380円]

◆聖蹟桜ヶ丘【15分/30分】

│京王線(準特急) 22分/明大前乗り換え・京王井の頭線(普通) 7分[310円/690円]

◆駒場東大前【29分/59分】

│京王井の頭線(普通) 3分[120円/810円]
│下北沢乗り換え・小田急小田原線→ 江ノ島線(急行) 54分[520円/1330円]

◆藤沢【57分/1時間56分】

│小田急小田原線→ 江ノ島線(快速急行) 57分[570円/1900円]

◆新宿【57分/2時間53分】




 ■多摩川河川敷の野外炊飯スポットは「小田急線和泉多摩川駅」、
 「京王線分倍河原駅よりバス『郷土の森行き』終点」がメジャーらしい。
 バーベキューシーズンに突入したため絶賛大混雑中が予想されます。

2005年04月23日(土)

消ししてへこんだ。あーもう‥‥一から書き直しましたよ‥‥

まあ、何を書いていたってこれですけどね。


■仁王と柳生のいちご100%■ デスバトルオブ恋愛・ザ・ダイジェスト:第一回

1.
柳生は時々顔を腫らして学校へ来る。
親父さんがやるらしい。高校へ入ってもテニスを続けている問題で親子関係は一触即発らしい。
仁王はそれをジャッカルに聞いた。柳生がジャッカルにだけ言った気持ちはなんとなくわかった。
自分達はそれほど仲良くない。悪くもないが、お互いに積極的に関わろうとすることはまずない。

しかしその日、仁王は気付いてしまった。
柳生が眼鏡にひびを入れたまま登校してきた朝。

腫れていたのは右の頬だった。

いつもか? 否、今日はじめて『気付いた』ということはこれまでは違ったということだ。
仁王が自分を凝視しているのを見つけた柳生が声を掛けてきた。
「仁王くん? どうされましたか」
仁王はツカツカと柳生の正面へ歩み寄り、右手を振り上げた。そして一旦下ろし、今度は右手を裏拳に(真田がやるように)構えた。
「?」
それから最後に、はじめと同じ平手打ちの構えを、今度は左手でとった。
「‥‥参りましたね」
柳生はひび入りの眼鏡を外して胸ポケットに仕舞った。そうして右の頬を撫でた。
「うちで唯一のサウスポーが、よりによって貴方だなんて」
左、右、右。右利きが普通に殴れば左の頬になる。いつも左を腫らしてきた。柳生の父親は右利きだ。
右の頬を殴るのは仁王と同じ左利きの奴だ。

「殴る男が好きなんですよ」

柳生はあっさり告白した。聞いてもいないのにぺらぺら喋り出した。ああこいつ、なんじゃ、聞いてほしかったんか。
知っていたわけではない、でも言われてみればそんな気もした。柳生は男が好きなのだ。
殴るところが好きってのではありませんが、じゃあ別れるかという気にもならないと言うんでしょうかね。痛いのは好きじゃないし、腹も立ちますけど、結局それはそれというか、どうでもいいと思ってるんですよ多分。そういう力に訴えるような部分も含めて、相手の性格だと思っている私がいけないというのもわかっています。やめなければいけないと思っているんです。でも殴るのをやめさせたいかとか、そりゃやめてくれたらそれに越したことはありませんが、敢えて別れるほど別れたいかと言われるとね。難しいですよ。云々。
いつもの無表情でひとしきりぺらぺら喋ったと思うと、「ちょっとすっきりしました。では仁王くん、放課後またコートで。アデュー」と言って柳生は去った。

仁王は不意に、ああこいつか、と思った。
自分達はそれほど仲良くない。自分の核心に触れるようなことを打ち明けあったりはしない。でもそれは、誰に対してもそうで、お互いに対しても同じというだけのことなのだった。
相手がどうこうではなく自分が、例えば恋愛や様々なことについて『あまり大っぴらに口にすべきでない』某かを抱えているという(それは柳生の場合は性指向の問題で、仁王は単に女癖がよくないというような問題だったが)自覚と自重のためだ。
そうか、俺に一番似ているのはこいつか。
仁王がようやくそう思い至ったのは知り合って四年目のことだった。


2.
幸村がまた振られた。
それで飽きもせず丸井(彼女持ち)やジャッカル(彼女持ち)に絡んだり真田(現在フリー)に絡んだりしていた、ある放課後のことだった。
「俺の何がいけないんだ?」
「幸村、おまえ自分がもし女だったら自分とつきあうと?」
「そりゃつきあうよ」仁王の問いに幸村は即答した。「仁王は俺より真田とつきあった方がましだとでも言うのか?」
正直そうだ。仁王は慌ててにっこりと微笑んで流した。幸村は部員たちを振り返り、腕組みして高らかにぶった。
「もし自分が女子だったら俺と真田、どっちとつきあいたいかみんな言ってくれ」
えーそれ選ばなきゃならないんすか?というムードが部室を包んだ。言わなきゃよかったと仁王は思った。

しばらくして、どういうつもりか高等部の部室に入り浸っている赤也が口を開いた。
「‥‥柳せんぱい‥‥」
選択肢には入っていないが誰が考えてみても妥当な選択だった。
「こん中だったら俺はジャッカルとつきあうよ」丸井が言った。「ジャッカルもこいつらなら俺がいいだろぃ?」
「まァ真面目に答えんのも馬鹿馬鹿しいけど、俺もブン太がいいかな‥‥」
「いいんじゃないか。俺もデブとハゲに告られても嬉しくないしね」
「おまえにだけは告らねえ。まじ言わしてもらうけどこん中じゃ一番最後だぜ、最悪の状況」
おまえと赤也で究極の選択。言い切った丸井に赤也が食って掛かって、幸村は無視を決め込んだ。そして次の獲物を物色する目付きをした。
その時、何か書き仕事をしていた柳生がノック式ボールペンの芯をかちりと仕舞った。仁王はハッとした。

女子だったらじゃない。柳生にとっては誰とつきあいたいかは仮定の話ではないのだ。

心拍数が上がった。柳生には答えさせたくない、と思った。このまま順番が回っても、柳生なら上手く交わして事なきを得るだろうことはわかっている。でも何か、『それについて口にしてほしくない』という思いが仁王の中で頭を擡げた。
先日、自分が余計な突っ込みを入れたせいで全部白状させてしまったことを、悪かったと思っている部分もある。
自分だけに打ち明けてくれた秘密だから、柳生がこれからも守るつもりなら協力したいという気持ちもある。
それにその答えを聞きたくないと、何故かそう思ってもいる。
どう言えば回答権を他へ移せる。この場をごまかせる。

「私は真田くんとが望ましいですね」


(以下次号!)

メモとか取っていなかったのでところどころ抜け落ちたり話してたことと違ってるかもしれない。
とにかく仁王がデスノートのごとくコマの半分をネームで埋め尽くしてポーカーフェイスで
「柳生がゲイであることを隠す」というミッションに挑んで最後はラブ落ちという話です。

お知らせー。この日記のトップから過去の版権創作ログ倉庫にリンクを繋げました。
あっちこっちに散らばったファイルをこつこつと収集して手持ちのものは多分完全収録したよ。
あとはもうサイコちゃんの本のゲスト原くらいしかないと思う。
ずーっとスクロールしてバナーが二つ並んでるので右の方。お暇な時にご覧下さい。

2005年04月21日(木)

■酸素ルーム■ みんな忘れていくくせに無責任だ

 あつあつのスコーンが食べたい。ブン太は寒い日の吐息のような声で言った。外気に冷やされて凝結し今にも滴り落ちそうな、そのひかりが見えるような声だった。蓮二は冷えた指先をすり合わせた。ここはとても寒いと不意に思った。事実指先は凍えていた。消極的な冷蔵庫の中のような、四角く密封された部室の空気は蓮二のためには柔らかさを失いすぎていた。

 呼吸がしにくい。鼻風邪をひいた時みたいだ。魚がするように口を開いて喘ぎたいのを堪えているのはブン太がいるせいだ。あるいはここに誰がいようとも自分はそれをできないし、誰もいなければそれをしたいと願うこと自体がないのだと蓮二は知っている。知りすぎて身動きが取れなかった。いつもそうであるように。

 息苦しいのだということを知らせたかった。音を立てて空気を吸い込み肺を軋ませて、俺はやっとやっと呼吸しているのだと知って欲しい。そうすれば楽になる。楽になる意味を蓮二はほぼ正確に理解している。つまりこの部屋全体の息苦しさは質量として保存されるので、それを誰が感じるかというそれだけのことだ。ブン太がいる。残りわずかな空気を分け合っていると思えれば楽になる。オレンジピールのさ、スコーンにクロテッドクリームをたっぷりつけた奴が食べたい。ホットミルクと。気温的には今日がそれほど寒いということはないはずだった。ただ昨日が少し暖かすぎたから、もうすぐ雨が降り出すに違いない今日の曇天が耐えられないだけだ。地上から春が失われてしまったような不安に駆られるだけだ。ブン太は長袖のニットの腕を組んだままじっと、じっと首をすくめていた。運動するエネルギーのために体温を奪われることを拒むかのようだった。

 食べに行こーぜい。ブン太はこちらを見ないで言った。ほかに誰もいないのでそれが自分に向けて発せられたのだということはわかる。でもその誘いが誰に向けられているのかはわからなかったので、そうだな、と曖昧に答えてしまった。誠意がない気がして、今度みんなで行こう、とつけ加えた。言い訳がましくなってしまったことを悔いたが顔には出していないはずだった。

 魚のことを考える。あいつらはなぜ少しも楽にならないくせに喘ぐのだろう。口を開いたって数ミリの酸素も入ってこないのに。

 今だよ。声のトーンが変わったのではっとして見ると、ブン太は真っ直ぐに蓮二の方へ向かっていた。その目が蓮二の目をみたいと言ってためらわずこちらに向けられていた。これからふたりで行くんだよ、柳くん。「行くんだ」に力が籠って他から少し浮き上がっていた。「これから」でも「ふたりで」でもなくその、意志を示す言葉がブン太によってマークされたことに、蓮二は強い引力を感じた。雨の日に熱い紅茶を飲むために行く。ロータリーのティールームへブン太とふたりで。決して想像のつかない光景ではないのに、蓮二はその一番シンプルな未来に気付かなかった。ブン太が精市を待っているという無自覚の思い込み、彼の不在に縛られているのはブン太ではなく自分だということに、蓮二は気付かなかった。

 今すぐにどこへでも行けるのだ。自分とブン太のふたりだけでも、すぐにどこへでも。けれど気付いてないのは俺だけじゃないと窓の外へ顔を向ける。こんな鈍色の空の日は誰もが迎えを待っている。とっくに準備の出来ているブン太は柔らかく生欠伸をひとつした。凍えた空気が少しだけ水に戻る。


(了)

ブンちゃんお誕生日おめでとう。
柳にはブン太が必要だよ! あと幸村にも、仁王にも、もちろんジャッカルにも。
立海お兄ちゃんチーム(精市・比呂士・ブン太)リーダーです。でも派閥名は「幸村派」。
ちなみに立海弟くんチーム[姉]は雅治・蓮二・赤也です。でも派閥名は「真田派」。

2005年04月20日(水)

バーカ!バカ吹!本当にうざいんですけどあの白ラン!

今日は関東中学テニス部の恥さらし・私立山吹中学校についての理解を深めていこうと思います。
これを読めばあなたも駒場にナパーム投下したくなること請け合いです。


1.

【私たちの考える山吹生】

・笑い声がデフォルトで「ギャハハ」
・腕時計はベビーGのバッタもんのベビーC
・彼女と交換するので女の子デザイン
・放課後はコンビニの車輪止めに座ってカップ麺
・そこにチャリ二ケツの同級生が通りかかり挨拶「オー」
・行動範囲が密集しているのですぐ同校生とミートし「オー」
・フェンスには誓いの南京錠が鈴なり
・屋上は立ち入り禁止なのにいつも満員
・ミスヤンマガ選出期間はクラスごとにトト開催
・中一のテストは自分の名前を書けたら十点もらえる


【私たちの考えた山吹大学】

・就職先の一位は民間金融
・社会活動をすると単位がもらえる
・福祉関係の学科が無駄に充実している
・老人ホームの慰問などで「生きがいを見つける」学生が多数
・僕達がボランティアに行くための資金を募金してください
・系列に女子短と看護専門もありそっちの女子の方が「レベル高い」


あー‥‥私たちは多分大学生を馬鹿にしすぎですよね
違うよ!コンプレックスの裏返しだよ!恵まれない子に愛の手を!!

あんねー山吹は街なかでしょ。そんで生徒はほとんどが自宅も街なかなのね。
だから「コンビニ前でカップ麺」も田舎のヤンキーがやるとかっこ悪いんだけど自分たちはかっこ悪くないという自信を持っているんですよ。
なぜなら東京のど真ん中だから。地の利があるから。
生まれた時から田舎者に憧れられる立場にあるという選民思想が無意識下に浸透しているから。
だからあの恥ずかしい白半ラン着られるんだよ。
そんで金持ちの子でしょ。家庭の教育方針は「自分で決めさせる」でしょ。
あっでも民間金融は南の就職先だから。俺の頑張れる場所を見つけた!


【テニス部のみんな】

・南は頑張り屋だけど頑張っても成績が悪いよ(生まれ持った資質)
・まさみんだけが外部の高校に進学できるよ(一抜けで勝ち組)
・あっくんは元々が山吹のレベルではないので山吹生と話すと頭が痛くなるよ(痛切に感じるバカの壁)
・テニスをやめてからはフランス語のスクールに通っています(将来の夢はパティシエで卒業したら留学だから)
・千石のことは「将来とか考えてねーしスネ齧る気満々だから」嫌い
・千石は遊び場で大人(ちゃらい人たち)に可愛がられて構われる
・でも絶対に危険な一線を超えない危機管理能力の異常な高さ
・無難に就職するくせに口では「やっぱ青年実業家っしょ☆」
・南は立っていただけで万引きの見張りと間違われ、グループ全員が逃げたのに一人だけ捕まったトラウマがある


2.

【えっエリコの彼氏って山吹なの?!】

ルドルフでは「バカ学校じゃん最低」と言われる。彼女の地位は下がる。
立海大付属では「友達紹介してよ!」と言われる。彼女の地位は上がる。
バカ吹中学校考察、第二回は『他校との関わりの中のバカ吹』です。

聖ルドルフ学院は山吹の女子ランクリサーチでかなり高得点を叩き出している人気の学校です。
落ち着いたチョコレート色の制服が清楚だし、ミッションだし、本物のお嬢こそいませんが育ちはいい。
校内で流行っている茶色の細いヘアリボン(制服とコーデばっちりな上になんと校則にも違反しない!)を貰って手首に巻くのが山吹男子のちょっとしたステータスです。

しかしハイソ・オブ・多摩を自認するルドっ娘たちにすれば山吹なんかチラチラ見られるだけで気安い低脳どもです。
仲良くなどしたらこちらまでチャラいと思われ『所詮成金校』のレッテルを貼られてしまいます。
歴史の支えのない聖ルドルフ学院の品位と格調は今いる生徒たちの肩にかかっているのです。
十五年後、息子の幼稚園の面接で「あらお母様はあの名門聖ルドルフ学院なのね」と言われるために!

だから電車で明大前(※)から白い半袖短ランがぞろぞろ乗ってくると眉をしかめます。
大体あいつら、こっち見ながら「あのショート良くね?」「オレ左」「おまえ行けよー」とか言ってんのが丸聞こえなんだよ。

※ルドルフの最寄り駅→京王線聖蹟桜ヶ丘駅/山吹の最寄り駅→井の頭線駒場東大前


しかし立海大付属では今、山吹の指定カバンがブームです。
山吹といえばオシャレな東京っ子の代名詞。立海は神奈川でも都市部にあり、設備としての都会の条件(パルコ・タワレコ・スタバ)は十分満たされているのですが、やっぱり23区ブランドは不動のものです。
特に自宅が山または海の生徒は下北や三茶などの駅名を口にするだけで胸がキュンとしてしまいます。
鎌倉=大仏、湘南=サザン、そんなお仕着せのパブリックイメージはもうたくさん!
まあお前らだって渋谷は年中黒人がヤク売ってると思ったら大間違いだけどね!!

ちなみに指定カバンが浸透した今、立海っこの注目を集める最新の山吹グッズはまだ幸村精市くんしか履いていない山吹指定上履きだよ。
幸村くんは山吹中の千石清純くんとマブ(※専門用語で親友のこと)なので山吹の事情にかなり明るく物資の入手でも第一人者です。
千石くんは周囲の友人に「今、時代は神奈川!立海大付属最高!」と洩らしていることから幸村くん(の懇願で丸井くん)がセッティングした合コンが成功し、両者の利害は一致を見ているようです。

幸村くんは山吹に遊びにいった際、フェンスにびっしり取り付けられた南京錠(男女の名前と共に「一生一緒だヨv」等書かれている)を見て衝撃を受けました。
今まで幸村くんにとって最上級の愛情表現とは安全ピンとライターを用いて己が肉体に相手の名前を刻み込むことだったのですが、
この南京錠や、恋人と腕時計を交換する行為はもっとスマートであると感じたのです。
そのため学校祭のメインイベントにこれを盛り込んだ(イベント名『ラブ・サンクチュアリ』)のですが、
煙草の火を押し付ける従来のやり方ほどは浸透しなかったようです。


もはやバカにしたいのが山吹なのか立海なのかルドルフなのかわからないよ。いいじゃんみんなかわいくて大好きだよ。
南の彼女は聖ルドルフ生です。でも南はリボン巻いたりはしないんだ。
遊ぶ時は極力私服で、地元を避ける心遣い。彼女の立場も尊重したいし自分も冷やかされるの嫌だしね。清純は内緒にしててくれてるよ。


3.

【山吹には地元組/長距離組がある】

山吹は都内のどこからでも通い易い(通うことが苦にならない)好立地であるため東京中の頭に元気のない子たちが通っているわけですが、
その中でも本当に正真正銘ザ☆都内に住む「地元組」と、毎朝ラッシュに揉まれて長時間通学する「長距離組」の二グループに大別されます。
二者は内部進学/新期入学のような関係で、長距離定期券の所持者は主に開いて使う二つ折りの定期入れを使用するのに対して
地元組はストレートもしくは二つ折りをわざと逆に折り返して持つといった特徴が見られます。

長距離組が多く住む地区として京王線沿線が上げられます。
この辺りで私立と言えば青春学園や新設の聖ルドルフ学院などがあります。
どちらも山吹と比べると入試の難度が高い学校です。
ある小学校を例にとると、お金があって成績がそこそこなら青学かルドルフ、お金があっても成績がいまひとつなら山吹、
お金がないと問答無用で市立不動峰へとクラスメイトが散り散りになっていくのでした。

※青学・不動峰の最寄り駅→京王線柴崎もしくはつつじヶ丘


【検証・市立不動峰中学校】

・不動峰と青学は小学校の時に金持ち組と一般市民組でわかれているので不動峰は青学に対してコンプレックスを持っている(だから嫌い)
・そんな峰の進学先は不動峰北(進学校)と不動峰東(普通高校なのになぜか農業科がある)
・滑り止めは山吹高校なんだけど絶対行きたくない(貧乏人 一般市民なので滑り止めが私学)

市立不動峰北高校は学費が安く、学費が安く、学費が安い学校です。
全国の国立大や都内の山吹よりましな私大に毎年多くの学生を送り出しており進学率は99%に達します。
峰中>峰北>国立大コースはまさに親孝行の鏡と言える進路です。

市立不動峰東高校は峰北の入試が厳しい生徒のための受け皿的な役割を果たしますが、同地区の市立高校は二校しかないため、両校の平均的な学力の差は年々大きくなっていると言われています。
普通科の他に農業科を持つのが特色ですが、別に牛や馬がいるわけでもなく学校の裏の広大な畑(近隣の農家の物)での実習(という名の無料奉仕)が年に何回かあるだけの、非常に中途半端なかんじの実質普通科です。

九州時代ちょっとやんちゃをしすぎて街に住めなくなり夜逃げ同然で東京に引っ越してきた橘桔平さんは、もう決して親を泣かせないと心を入れ替え、不動峰北高校へ推薦枠で無事に進学を果たしました。
テニス部の後輩のみんなは、尊敬する橘さんと同じ高校へ進んでまた一緒にテニスをしたいので、協力しあって一生懸命おべんきょうしたのですが、春には仲良く峰東に通っていたということです。
チクショウ!なにが中高一貫教育だ!エスカレーターなんて大嫌いだ!
でも青春学園高等部の男子テニス部は持ち上がり率が低く伝統的に弱小だよ

※峰北‥‥ミネキタ/峰東‥‥ミネトン

2005年04月18日(月)

自分用めも

・やぎ
・いちご100%
・立海ルドルフ
・ゆきむらまつり
・いぬつか殺人

‥‥ゆきむらまつりがなんなのか思い出せない。
補足しておこう。
・やぎ→手紙を届ける人が変わると結果が変わるよ
・いちご100%→柳生と仁王のいちご100%
・立海ルドルフ→観月と幸村と真田とルドっこたち
・ゆきむらまつり→わからない
・いぬつか殺人→乾と手塚が殺されるはなし
あれかなー立海オールキャスト&観月の幸村お見舞い話のことかなー‥‥

最近あんまり小説の方に気持ちがいかないんですよね。ちょっと休んでます。
オタクフルストッロルであることには変わりないんだけどなにかなー。
今夜とかちょっと時間あるんで何かしたい。何がいいかなー。

2005年04月16日(土)

■花言葉はdon't touch Me■ 『山形の公立を受けます』 赤観


「いたい‥‥」

 呟く自分の声が他人のもののように聞こえて、馬鹿者がいるなとせせら笑ったが紛れもなくそいつは僕だった。左の頬っぺたは熱を持ち始めている。痛い痛い痛いこんなに熱くては腫れ上がってしまう。それに痺れて具合が悪い。

 僕は熱い頬を持つ一個の静物として崩れもせず倒れもせずただ立ち尽くした。外皮を剥がれ剥き出しになった顔の左側を掌で覆って、ぶたれた慣性に従いやや右斜め下を見ていた。何者かがその僕の手を生焼けの頬から引き離そうとする。やめてくれ痛いんだ。念じたが、腕も肩もあの打球をガットに擦る時のような力強さや意志を失っていて抵抗は起こらなかった。

 掌による被護を奪われた僕の熱い左頬に、次に触れたものは一層熱かった。これが僕の頬に火をつけたものだ。はっきりと認識して目の前の男を睨み付けた。熱した鉄より鋼より熱い掌を持ったその男は少しも悪びれず僕を見下ろしていた。

「手をあげる男なんか最低です」
「そうだな」

 返事は落ち着き払って冴えざえとしていた。赤澤はいつでも僕を真正面で捉えた。

 冷静になろう。今まであったこの男との衝突を遡りながらひとつひとつ思い出してみた。今になれば、どんなにか殴りたかったろうという場面が幾つも思い当たる。けれど実際に行動を伴ったのはこれがはじめてだ。何がこいつを動かした。怒りか、憎しみか、そうでないならどんな感情が人に力を行使させる。僕をぶった赤澤の掌は硬く、大きかった。こんな手でぶたれたらふっ飛んで顎が外れてしまうだろうなと馬鹿者が頭の中で呟いた。

「もういいだろ、観月」

 何がです。問いは声にならない。体が拒否している。わかりきったことを白々しく聞き返すなと言っている。

 赤澤の、声も視線も掌の熱も、何もかもが確かだった。僕の中の不確かなものがそれに触れてふやけていく。柔らかく解けてぐったりとしている。それはもっともっと解けたがっているのだ。やがてそして消えてしまうことを、自らが望んでいるのだ。

 僕の何もかもが赤澤に味方したがっている。勝てない。

「帰るなよ」

 今や痛みとすべての感覚を忘れていた左頬を、海辺の砂を集めるような厳かなやり方で撫でられて息が詰まった。喉の震えを唇を噛んで耐えた。

「ここに居ろ観月。お前は俺を愛してる」

 僕は目を閉じた。体の深い深いところから息を吐いた。空っぽになった肺にひたひたと満ちてくるものがある。それは諦めと似ていた。塩辛く僕の気管を焼き切った。それは、圧倒的な力の前に屈した僕の安堵だ。まぶたを閉じ言葉を閉ざしたまま僕は、小さく息継ぎして赤澤の匂いを吸い込んだ。

 とても温かい。



(了)





言い訳させて!これはだから「君は確かに僕を愛してるセイイエス」っていうネタなんですよ!
まさかそんな本気だなんて‥‥あーだから‥‥赤澤がかっこいい‥‥

2005年04月14日(木)

■赤澤くんたら読まずに食べた■ ヤギの話・赤観編

〜前回までのあらすじ〜
・白ヤギの観月くんは黒ヤギの赤澤くんにお手紙を出したけど、赤澤君はお手紙を食べちゃって
『さっきの手紙のご用事なあに?』とお返事したよ。

手紙を受け取った観月くんは恐らく破り捨てるでしょう。
「何が、『用事なあに?』だ!あの馬鹿!」
ビリビリに破かれた手紙はマッターホルンの風に乗ってお空へ高く高く舞い上がるでしょう。
そして観月くんはいつものように暖炉の前のカウチでとびっきり香りの良い紅茶を飲みながら、
読みかけの甘く切ない恋の物語を開きます。
「・・・僕の手紙なんてどうだっていいっていうんですか」
けれどもページはちっとも進みません。
昨日まではあんなに甘い夢を奏でたご本も今日はなんだか鬱陶しく感じます。
ふと横を見ると金の飾りのついたちいさなテーブルの上には
赤澤君からお返事が来たらまた出そうと思っていた薔薇の香りのするレターセットが置いてありました。
なんだか急に悲しくなって、観月くんはちょっとだけ泣きました。
(初出は六畳生活/比呂)

トントントン、赤澤くんが戸を叩きます。観月ー聞きたいことがあんだけど。
何を今更! 観月くんは赤澤くんの顔を見たくないので居ないふりをしました。
トントントン。赤澤くんは観月くんが中に居ることを知っているのか、なおも戸を叩いてこう言います。
あのなこないだくれたお手紙、すげえ旨かったんだけどあれなあに?
バーンバカ澤!そこへ直れ!お前がヤギに生まれたことがこの世の不幸の始まりだ!
怒り心頭の観月くんは戸を蹴破って出て行ってしまいました。
そして握り締めていた丸めた紙を赤澤くんめがけて叩きつけました。

「ん?」
「あっ」

大変です。あの紙は書きかけでやめてしまった赤澤くんへのお手紙。
読まれてしまったらこんな恥ずかしいことはありません。

「か、返しなさい!」

観月くんは慌てて飛びつきましたが赤澤くんが先に拾ってしまいました。
そしてなんと、それをムシャムシャ食べてしまったのです。
この馬鹿‥‥観月くんは言葉を失ってしまいました。

「旨い!これだよ。観月これまだある?」

観月くんはあっけにとられてしまいました。
お部屋には失敗したお手紙がたくさんあります(観月くんもヤギさんですから後で食べようと思っていたのです)
それを渡すと赤澤くんは大変喜んでムシャムシャ食べはじめました。
食べるのはよいのですが赤澤くんが広げて読んでしまわないか心配で観月くんはその様子をじっと見張っていました。
とうとう最後の一枚です。少し食べて、赤澤くんは変な顔をしました。
そしてお手紙をガサガサ広げました。

「あっコラやめろ!」

観月くんは真っ赤になって止めました。
けれどその便箋はまっさらで、何も書いてはいませんでした。

「ああ、そっか」

赤澤くんは急に気がついた顔になって言いました。

「観月のお手紙だからうまいのかな」

それを聞いた観月くんは得意な気持ちになって、お気に入りの万年筆を持ってくるとそのまっさらな便箋に、
ちょっと考えて、大きく「カレー」と書いたのでした。


おしまい。



観月すら気づいていませんが「カレー」とは観月にとって精一杯の「すき」という意味なんですよ。バカバカ!

そういえばこれは赤澤が「最後の一枚以外は全部観月の書いたお手紙だ」と認識して食べていたことになりますよね。
まあ、わかってたんだよ。完璧主義者の観月ちゃんだから完璧なお手紙が書けるまで何枚も何枚も書き直してたってことはルドっこなら誰でもわかることだもの。
だから読まないでくれたんだよ‥‥バカなりの優しさなんだよ‥‥
まあ観月はお手紙だとばれてないつもりですけどね。
赤澤がバカなら観月もバカです。お幸せに!

2005年04月13日(水)

グ退避ー

青学と立海について考えたらものすごい文字数を稼いでしまったよ。読みづらいので区切ってみました。

◆三強と部活

◆甘えとお守りの人間関係

◆ダブルス比較

◇付録1・草ダブルス大会【青学編】

◇付録2・草ダブルス大会【立海編】

2005年04月12日(火)

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▼プラトニック [2003年07月20日(Sun)06時44分]

ヒカルの碁が今うちにあるんで貪り読んでいます。
持ち主は売る気だったらしいが売らせねえ。
まあ、碁に関してはイスワヤでいいんですけど、
奈瀬とあの院生やめちゃった眼鏡の子はつきあえばいい
と思ってるんですけど、実はもうひとつ本命があります。

緒方九段×桑原本因坊

です。緒方九段が本因坊を「ジジイ」と罵るたび暗い悦びが
胸の奥に込み上げます。だからリバです(謎の論法)。
緒方九段は若い男の子に高い御飯を食べさせるのが趣味で
性的にはヘテロでヤクザばりに複数の情婦がいます。
そして頭の中はあの妖怪ジジイのことでいっぱいです。
絶対に自分が引退に追い込んで引き取って老後の面倒を
みてやると思っています(下剋上精神)。プラトニック!


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▼ビクトリアだよ全員集合☆ [2003年07月23日(Wed)15時31分]

やったね!ビクトリアがちゃんとリスペクトされてる!
今やすっかり「ベッカム夫人」になってしまった
元スパイス・ガールズのビクトリア。来日中の会見でも
記者の質問は夫のデイビット・ベッカム(レアル)に集中。
失礼な記者たちにちょっぴり御機嫌ななめ?!
でも大丈夫!日本の女の子たちはビクトリアが大好き!
女性ファッション誌はビクトリアをただのセレブじゃない

別格セレブ

としてそのファッションや行動のセレブっぷりに大注目☆
リッチでセクシーなビクトリア流セレブスタイルは
モチみんなのお手本だよね!

なんだよ。ビクトリアを応援したらだめかよ。
みんなもっとビッキーをリスペクトしろ。


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▼ヤンキーゴーホーム [2003年07月29日(Tue)06時43分]

グローリー・オン・ザ・キングダム!
は、神龍寺にだけいつまでも勝てず「無冠の王」と
呼ばれ続ける王城の必死さが滲み出ていていいですよね。
今年こそは王城がナンバーワンになる年なんですよ!
ただ‥‥今回に関しては負けるかもしんねーよね!
今回負けた神龍寺を倒して冬季、デビルバッツを迎え討つ
(そして負ける)
今年こそは王城がナンバーワンになる年なんですよ!
へこんだじゃねーかぼけ!



‥‥。
昔の日記をサルベージしてみました。
このころが一番面白かったような気がする。
短いし、ネタがポピュラー。タイトルもキャッチー。

あのねー私たちに関する2003年以前の記録が一切残っていないんですよね。
トモタのログも、私が持ってる比呂さんの六畳FBも2003年の1月分からなんですよ。海老に至っては全滅してるし。
知り合ってから最初の半年というある意味で一番ジューシーな期間が消失していることが残念でなりません。自分たち大好きだから。


04月02日に同じく遺品整理中に出て来た柳×乾を載せています。
もう一度言いましょうか?柳×乾です。柳が攻めで乾が受け。

これを書いた頃はまだ立海にもえもえしていなくて蓮たんの可愛らしさも充分理解していなかったのですが、
その割に今と大差ないので正直少し驚いています。いやあこの二人なら柳×乾だよ。



では最後に、伝説となった2003年のあの夏コミ後の日記を紹介します。

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▼悔恨 [2003年08月17日(Sun)07時20分]

モ星が自治を確立してから半年が過ぎようとしています。
私はあの時デラシネとしての自分の運命を受け入れたつもりでした。
しかし今、人々が安住の地を得て心穏やかに暮らす様子がたまらなく羨ましいのです。
私のパレードは続きます。デラシネの命はさまようこととともにあるのです。
インターミッション、私の今の停留地はわかりやすくいうと「テニプリ・手塚総受け」ですよね。
見ればあきらかに分かることだがこれが言いたくないばっかりに必死で迂回路を探しました。
私は、中学生くらいから潜在的に眼鏡が好きで乾に転び、乾塚を知り、手塚にはまったわけです。
手塚にはまったことにより私のスタンド・メガネポインティングは目覚めました。
また手塚とその害を被る人々という視点から私の遊びの庭は大きくテニスへ開かれました。
しかし私は、あのオールブルーの海底近くを漂っていた時のような安定した感じ、魂の穏やかさを得られずにいるのです。
あの場所は胎内、手塚は私が生まれ落ちた苦しみのために上げた最初の悲鳴でした。
いま私は、羊水の只中に浮かんでいた頃の自由を取り戻そうとしています。
立ち上がり歩く術を捜しています。
私はデラシネに生まれました。放浪は死ぬまで続くのです。
私はいつも太陽の西を目指して歩き続けます。



一周して戻って来たってか。

2005年04月06日(水)

イコさんのお宅にお邪魔してきました。
エイコさんちはすごいです。シャンデリアです。なんてったってシャンデリア。
靴箱もカラーボックスもお手製です。シックで大胆な柄の布を使ってお部屋全体に統一感。
壁のポストカードはレトロなイラストと名画ジョセフィーヌの戴冠。
そして部屋の片隅に飾られているバラ。

【おさらい】池田さんの考えた観月はじめの本当の趣味は「日曜大工」です。

エイコさんはしきりに「観月と趣味が合う」と言い張っていました。悔しい‥‥
あと観月とお揃いのブックG4も見てきました。むしろそれでテニミュを見ました。
エイコさんはW邸のみんなと違ってとてもとても静かに画面を見つめるので、
体を揺らして小声で口ずさみながら観ていた私は時々はっとこのきちがいざた
エキセントリックなエンターテインメントを楽しんでもらえているのか不安になったよ。
けれども案の定オフショットで引き返せなくなっていたのであーたいがいだな!と思った。
テニミュの真骨頂は特典映像です。
それから私と比呂さんが崇めているサークルの同人誌をクロゼットから出してくるエイコさん。
私(全ページ写メりたい)は大人げないので読んだことを比呂さんに自慢しました。
そうか!エイコさんはひまなとき後編の真田(初めて幸村に負けた後)を撮影して送ってくれたらいいと思う!あードコモか‥‥受け取れないか‥‥

【第二回中学テニス部会議議事録】
1)比呂さん発「観月ちゃんがツイストスピンの弊害を知ったのはすみれちゃんに指摘されたときである」説はすっげー正しい気がする、真実なんじゃないか。
2)『共同幻想としての幸村』から『幸村奪回』まで。赤也そして仁王、あるいはブン太。
3)白ヤギ理論の第二部(郵便屋さんによる事態の回収)を説明。第一部だけ書いて投げ出していたのを「聞いてよかった」と言ってもらったので今度続き書きたい。
4)ドリーム小説ケーススタディ「由美エイコ・私は夜神月くんに殺されたい」
5)デスノートみたいな恋愛漫画を描きたかった───『仁王と柳生のいちご100%』
6)中学テニス強豪校MAP制作(ここから翌朝)
7)立海&ルドルフ春の合同練習in多摩・関東大会で逢いましょうスペシャル
8)幸村@下北/三茶〜彼氏が山吹生だと自慢できる学校と笑われる学校がある〜

土曜の正午から日曜の午後三時まで、6時間ほどの睡眠を挟んで休む間もなく話し続けて喉ががらがらになりました。
面白いなーと思うのが立海話で、比呂さんと話すと「みんな真田がだいすき!」という流れになるし
エイコさんと話すと「みんな幸村がだいすき‥‥」という流れが自然と出来てくるんですよね。
でもそれはごく当然のことで、立海のみんなにとって幸村なしの真田も真田なしの幸村も有り得ないのです。
陰と陽、表と裏、真田を愛することは幸村を愛することで、逆もまた然り。
だから結果として同じことを言ってるんだけどポジとネガになっているのが大変興味深いんですよ。

こうして直に会って萌えをぶつけ合える戦友がいると、日記なんて書かなくてよくなっちゃうようですが、
むしろ私はこの会議の素晴らしい内容を世界に知らしめたい、記録として保管したいと思いますよ。
でも今、議事録の目次を書いてみてぶっ倒れそうになった。書記が過労で退職しちゃうよ。
もうちょっと暖かくなったら多摩川の河川敷で芋煮会を開くのが私たちの野望です。

2005年04月04日(月)

自分用めも

・やぎ
・いちご100%
・立海ルドルフ
・ゆきむらまつり
・いぬつか殺人

テニミュ二回見て一日が終った。
軽度のうつ症状。腰痛。
ゆきむらまつりから手をつけたのが敗因とおもう。
早く第二話が書きたくて気持ち悪い。一話終らない。
ゆきむら終らないと何も手につかない‥‥

サイトの桂がつまってる。桂書きたい。書いてるけどおわんない。

2005年04月03日(日)

乾塚・大和塚前提の柳×乾。柳が攻めで乾が受け。











見ない
聞かない
触らない
待たない
変わらない
流れない
繋がらない
繋げない




繋 が な い





(1)

二度と会いたくなかったと全ての瞬間おもっている。そういう相手に対してなんでもなく笑いながら「久しぶり」と言うのが好きでそうすることで嫌な顔をされるのが好き、自虐的とかじゃなくただそういう人を好きでそういう人を好きになる自分が好き。それだけ。

「よくわかんないですねえ」

「そうですか?」

「乾君は」

僕が嫌いですもんねえ。その人は鮮やかなみどり色のソーダ水を啜りながら言った。わかんないと言った割にはわかっている。つまりその人はなんでもなく笑いながら「久しぶり」と言った俺に同じように笑いかけてきたので、俺はいかにもそういう態度を取りそうなその人のことが嫌いということになるわけだ。

けれども俺は本当はその人のことが好きで、その人を好きな自分が嫌いなだけだった。俺はコーヒーを飲んで、その鮮やかなみどり色をひどく羨ましく思った。

「うん」

不自然にそう頷いてその人はグラスを押し出した。嫌だなと思った。さっき並んだ時もう俺の方が背が高いのに気がついて、なんとなく脱却したような気がした。絶望的に大人だったこの人はもういないのだと思った。でも違った。俺はもう一口コーヒーを飲んだ。

俺の頭の中ではここでこうしてこの人と向かい合っているべきなのは俺ではない。それは、手塚国光で、そして俺もこの人ではなく手塚と向かい合うべきだった。手塚が今この街にいないのをいいこと俺とこの人がとりあえずテーブルを挟んでいる。手塚なら、笑う俺にきっともの凄く嫌な顔をしただろう。そして偶然この人を見掛けても声を掛けたりしなかっただろう。

手塚のいないところで俺とこの人が向き合っている。

「出ませんか」

その人は言って伝票を手に席を立った。俺はレジに立つその人を改めて他人の目で眺めながら、みどり色に口をつけた。



(2)

日の光を浴びた途端に蓮二のことを思い出した。

フルーツパーラーを出て俺は少し困っていた。店を出てしまうと俺は彼と一緒にいる理由がない。もともとなかったのだが、ただの昼間の道端ではそれが際立ってしまう。俺は蓮二のことを考えている。

大和裕大は肩からテニスバッグを下げていた。まだテニスをやっていたのを意外だと思った。俺たちの学年で高等部へ上がりなおかつテニス部に入ったのは俺と英二の二人だけだった。あまり考えたことはなかったけど、どう考えても大和部長のせいだ。この人があんな風に俺たちの前に存在してあんな風に失踪同然にそれきり姿をくらましたこと。それが俺たちの、中学での部活のテニスをどうしようもなく唯一無二の物にした。

だから蓮二に言われるまで(あいつがインハイという単語を口にするまで)部活のテニスはもうやめる気でいた。テニスだけなら外ででもどこでも打てるしそれでいいと、思っていた、実際にはただただ大和部長の残した影のような輪郭に俺も囚われていただけだったのだ。

手塚国光は内部進学のあとたった二ヶ月でなんかよくわからん外国のなんだかに行ってしまった。ベルリンだかマンチェスターだかなんかあいつのことはよく知らん。俺を囲っていたもうひとつの影だった。蓮二がたまに、雑誌かなにか本?書物?の紙面で名前を見つけると「国光さんが〜」と呼ぶのが気持ち悪くてすごく嫌。

そんな、曾て触れたことのある手塚のヒステリックに細い首のことを、大和部長の背中を見ながらゆっくり思い出した。彼は俺を振り向かずにだらだらと喋りだらだらと歩いて、大通りから公園の遊歩道に入った。

「俺のことなんか覚えてるんですか」

自販機でレモンティーを買った彼にそう声を掛けてみた。彼は嘘臭く笑った。

「足遅かったですよね。持久走苦手で。でも六月には八位まで上がってた。なに飲みます?」

「要りません」

「水曜の五限が体育でした。あとおかあさんが卵焼き番長。筍とおかかのが美味しかったですよ」

「あと同じ学年の手塚国光が好きでした」

「そうでしたね。それでたしか三組で、クラスメイトは不二周助くん」

そうして、口をつけたレモンティーを笑いながら差し出した。

「あの子も続けてるんですね。嬉しいなあ」

言わなきゃよかった、と普通に後悔した。俺は自販機でミルクティーを買い、アルミ缶の濡れた表面で掌を冷やした。体中の熱が逃げ込んできたみたいに掌が激しく熱かった。

俺は大和部長の後ろを歩くのをやめて隣に並んだ。どこでテニスやってるんですかとか家はこの近所なんですかとか、そういう次に繋がってしまう話題以外を探そうとした。本当はどこか自分が手塚の話をしたがっているのにも気付いていたが、狡猾さと期待がそれを避けた。

近況なら蓮二のほうが俺より手塚について知っている。誰と対戦したとかどうやって勝ったとか、俺は手塚について書いてある記事をどんなに小さくても決して読まない。何を考えて「国光さんが〜」とか言いながら俺に擦り寄ってくるのかわからない蓮二の冷たい鼻の先を思い出そうとした。もしかして俺が悪いんだろうかとは極力考えずに、ぐりぐりと触る尖った顎とか薄い唇を思い出そうとした。

だめだ。上手く逃げられない。曾て触れたことのある手塚のヒステリックに抉れた顎の下の窪みに、曾て触れただろう大和部長の左手を俺は盗み見た。



(3)

「言ったでしょ蓮二。俺まだちょっとへこむの。根に持っちゃってんの軽くトラウマだし」

「勝手にな」

そうでーす。無視を決め込んだ俺の視界に蜘蛛のような蓮二の手指が割り込んできた。蓮二が俺にベッドの上を片付けさせたのはそこで俺に触るためだし、それ以上にただ自分がごろごろ寝転がってだらしなく過ごしたいためだった。

蓮二の左手の中指のかたちは少し手塚のに似ているし人んちのベッドで過剰にごろごろするところも似ていた。俺はまだ『蓮二が』『手塚に』似ているという風にしか思わない。そのうちそれが入れ代わるのかも知れないけれど今はまだそんな日が来ることを想像もできない、少なくともその程度にはまだ俺は手塚の手指や温度に支配されていた。

「読まなかろうとどうせ気にしてる」

「はっ。破竹の十三連勝なんてね、手塚はまだあと四戦は負けないよ」

「そうか。お前が言うならそうなんだろう」

「‥‥やめて。本当に嫌なんだよ」

背後でベッドが軋み、首筋に冷たいものが押し当てられた。俺は目を瞑って頭を全部そっちへ預けた。根に持ってるのは手塚が何もはっきりさせずにニュージーランドだかパプアニューギニアだかに行ってしまったからだし、軽くトラウマなのは初めての性体験だったからだ。そういうディテールは蓮二には聞かさない。

「貞治はなんでも覚えていすぎるんだ」

蓮二の俺の中に入ってくる指が手塚のとよく似た左手の中指でなくて俺は心底ほっとしている。

「なんでもじゃないよ。お前の他は手塚だけ。目標だったから」

有り得ないことだけど少し考えるのは手塚が蓮二の様にあるいは当時の俺のように、俺の中に指を突っ込んで引っ掻き回して弛ませたいと考えそうしていたら今の俺たち(俺と蓮二)は果たして在っただろうか、ということだった。

または、俺はそれを手塚に許したのだろうかということだった。

「いつになったら帰ってくる」

蓮二は言い、俺はその意味を正確に理解した。知らないよ手塚の考えてることなんて、と気付かなかったふりで話を逸らしたら追及はされない。でも蓮二の言った意味を俺は正確に理解した、蓮二もそれを理解した。話を逸らすことはただ、蓮二の言う意味を肯定することに過ぎない。

「お前こそ」

蓮二はすすり泣くように小さく息を吸って、冷たい鼻の先を俺の首筋から退かした。支えを失った俺の頭はベッドの上に落ちた。天井を仰いだ俺の視界が蓮二の白い喉に覆われて、上下逆さまの唇で俺たちはキスした。

帰りたい。はじめからこうあるのが正しかったのだというような、そういう仕方で蓮二は俺のために場所を空ける。だから蓮二のところに帰りたい。

けれど栓を抜かれたバスタブのように、俺の中には一向に新しい水が溜まっていかない。手塚が、中学のテニスが、満たしていた俺の中の空洞は今やすっかり空に成り果てているというのに。注がれども注がれども溜まらない。溜まらない。

「お前は俺に勝ったじゃないか」

蓮二は呟いた。額に貼り付いた冷たい喉の震えを感じながら、中三の夏のその試合を思い出そうとした。だけど俺は手塚に一度だって勝てなかったし、そういう相手が蓮二にもいるのだ。


(了)

2005年04月02日(土)

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