2004年12月26日(日) ハッピーホリデー対メリークリスマス

布哇通信。
ハワイ島は現在、建築ブームとHappy Holidays!やMerry Christmas!に湧きかえっているけれど、このところMerry Christmas!がなぜ悪いという新聞記事を数点目にする。
この10数年、”メリークリスマスはPCでなくPIである”とされてきたが、その揺り返しだろう。PCはここではpolitically correct(直訳:政治的に正しい 意訳:用語として人権・倫理等の面で問題ない)でPIはpolitically incorrect――「問題あり」のほうだ。
こういうacronym(アクロニム 頭字語)は、知っていると内部の者、知らないと外部の者、という奇妙な所属感を持たせてくれるというおまけつき便利表現なのであとを絶たない。そうした所属感は人生において大事なのだろうなあ。個人的には知っていると気分が良いが、知らないものが多すぎて日本内ネイティブ英語でmendocsaiである。
ちなみにお世話になっているOS(これはオフィスサプライで、最近はSがソリューション解決という意味に変ったようだ)の専門の方のお話は、ぼくのデジタル的無知を知っていて、アクロニムはまずお使いにならないので、ぼくでもよくわかる。
思えば、最初に知ったアクロニムはTVAで、ルーズベルト大統領のニューディールという政策についてほんの少し習ったときに覚えたテネシーヴァレーなんとかである。ヴァレーとは谷間のことで、北海道の峡谷で育ったぼくはずいぶん狭いところを偉い名前で頑張っていると思ったりしたようだが、巨大なダムや平原の写真を見て、谷なんかないじゃんかと覚えたて東京弁というか越境通学の諸君の川崎弁でその不条理さに教科書が遠くなった覚えがある。(これは小学校のことだから当時はvalleyなんてことばは知らない。もすこし先でレッドリバーバレーという歌を習ってそれが谷間だということがわかったから、多分、この遠くなった教科書は、数年にまたがるテキストのようです)。余談さておき。

メリークリスマスはpolitically incorrectだという。
何が問題かというと、ユダヤ教ではハヌカの祭がある時期なので、いかがなものかということ。Merry Christmas!と言われたり、そうしたカードを送られたりしたユダヤ教の人々は大変迷惑だ、というもの。キリスト教内から自主規制を始めたのか、ユダヤ教徒が先導したのか、というと、どうやらビジネス界でスタートしたようで、ショッピングモールやデパートのホーホーホーおじさんの数は変らなくても、お店の人はHappy Holidays!を心がけ気配りをしている。
これは82%がクリスチャンという米国のキリスト教サプレマシー(マット・デイモンの新作から拝借したSupremacyのこと。何のこっちゃといえば優位性・至上主義である)から来る裏返しのコンプレックスと考えられる。
優位性といえば、数日前に当地のTV(これは谷でなくテレビ)の歴史チャンネルで見たミスアメリカのドキュメンタリーでは、コンテスト直前の控え室で、候補者たちとディレクターが手を取り合って丸くなりGodに祈り最後にAmenで締めていた。
ホームステイした人など、こうした場合、どう対処しましたか? 

ただこのHappy Holidays!使用は、思いやりともとれる。ところが逆にユダヤ教の人々が思いやってクリスチャンにメリークリスマスと言ったりすることも多いという。
そこで、このGiving(贈る)という時期の象徴として、Merry Christmas!を使おうという気分がたかまっているらしい。
バンド・エイドのDo They Know It’s Christmas?は、クリスチャンサプレマシーと解釈できるけれども、エイドとしては立派なことだ。
1月から11月までの祭事はすべて枕にHappyを。12月だけはMerryでという伝統はやはり消えそうにない。
ただ、それもこれも、初めに言葉ありきで始まる書を同じよりどころとする宗教間でのコミュニケーションの乱れにすぎず、対岸のボヤ的印象だ。

布哇州には挨拶がもうひとつある。
メリカリキマカ。
これはハワイのネイティブ発音のメリークリスマスで諸島どこでもよく聞く。
/r/でなく/l/に近い「リ」なのでとても言いやすい。
サンタがレイをして手を振る人形が交差点に見られる。
先日のコンサートで一緒だったギタリストのクリスによると、オーストラリアではサンタがサーフボードに乗ってやってくるという。

クリスマスは娘の誕生日とぶつかるので、どうしても熱が入ってしまう。
彼女はクリスマスイブに親などからのプレゼントを、25日の朝にストッキングの中のサンタのプレゼントを、そして25日の昼に誕生プレゼントを空けるという2日間を過ごす。

メリカリキマカ。



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