2002年01月20日(日) stagger(よろよろ歩く)

お知らせ:工事中のスケジュールページに書くべきところ。
1月28日(月)6:30〜8:30 広島市 広島平和文化センターで、遠山顕の講演があります。「語学から話学へ 英語を使った異文化コミュニケーション」という演題です。

さて、新年を元気でスタートした早々、ビーンベア のようによろけてしまうのはいかがなものか。

STAGGERは、体の不調や酔いのせいで「よろよろ・ふらふら歩く」という意味。

一見会話に役立ちそうにありません。

が、このような五感に訴えくるようなことばは、頭では拒否しても、体のほうが覚えてしまうもの。STAGGER----ほらもう覚えてしまっている。

それに、自分がよろけるだけでなく、「人をよろけさせる、ぐらつかせる」という意味もあり、この流れからか、「決まっている時間帯を揺らしその他いくつか別の時間帯をつくる」という意味合いにおいては大御所的存在。いわゆる「時差ナントカ」というシチュエーションにはこれしかないという必須語。

stagger office/work hours(就業時間をずらす)

といえば、いわゆる時差出勤をすること。

stagger start times(開始時間をずらす)

大都市の深刻な交通渋滞対策のひとつ。

STAGGERINGという形容詞もある。ふらついた、という意味もあるが、もうひとつ、ふらつかせるような、という気持ちから生まれた「圧倒的な、あっと驚くような、驚異的な」という意味があり、

The numbers are staggering.(なんと驚異的な数字が出ていますよ)

などとキリリとした印象。

地味ながら派手。a little big wordなのです。

以下、会話ではこんなふうに使われます。

A: We stagger our office hours. Some start at 9, some start at 11 and some start as early as 7.

B: How is it working?

A: Great. The results are staggering.


A:うちは就業時間をずらしているんだ。9時に始める人、11時に始める人、 7時から始めちゃう人などいろいろ。
B:うまくいっているの?
A:いってる。効果絶大なんだ。

結果が人をぐらつかせるほどのもの、つまり効果絶大という気持ちなのがThe results are staggering.です。

それに「よろよろ歩く」というSTAGGERが不用というわけでもありません。

「千鳥足で歩く」という意味で、たとえば突然ですが、英語圏のジョークの中のbar(バー)jokesの定番動詞になっている。

よくある例のひとつを紹介しましょう。

このジョークを理解したり語ろうとするときに、WALKやCOMEでは感じが出ない。 やはり、STAGGERがよい。

ジョークの美文調は実際に語ると寒いので避け、普通の人が普通に語る、あるいは聞けるよう、ごく普通に直してあります。ところどころにミススペルのようなものは、そうではなくて、酔っ払いのslur(舌足らずな言い方)を表しています。勝手に増やしてもよいです。

This man staggers into a bar and yells to the bartender, "A double whishky please, and a drink for everyone here and have one yourself!"
The bartender says, "Well, thank you sir," and pours everyone their drinks.
The guy swallows his whisky and says, "Another whishky for me, and the same again for everyone else!"
The bartender says, "Excuse me sir, but don't you think you should pay me for that last round first?"
The guy says, "I can't. I don't have any money."
The bartender gets furious and throws the guy out of the bar.
A little later the same guy staggers back in and shouts, "A double whishky for me, and a drink for all my buddies!"
The bartender rolls up his sleeves and asks, "I suppose you'll be offering me a drink too?"
The guy says, "I don’t shink sho. You get nasty when you've had a drink!"

ある男がバーに千鳥足で入って来てバーテンに大声で、「ダブルウイスキー、みんなにも一杯ずつ、それにあんたも一杯やって!」という。
「あ、そりゃどうも」といってバーテンは皆に酒を注ぐ。
男はウイスキーをグイッとやると、「ウイスキーもうひとつ、それからまたみんなに同じやつ!」。
バーテンが、「あのお客さん、さきに最初の注文の分を払っていただけませんか」。
男は、「そりゃできないよ。金がまるでないんだから」。
バーテンはかんかんになって男を外に放り出す。
しばらくして同じ男がまた千鳥足で入ってきて大声で、「ダブルウイスキー、それにオレのお友だち全員に一杯ずつ!」
バーテンはシャツの袖をまくり上げながら、「そしてこっちにももおごってくれるわけだね?」
男は、「それはないです。あんた飲むとたちが悪くなるもん!」

気に入った方は自分で語ってみる・・・。パフォーマンスがstaggeringになるかも!



2002年01月12日(土) May the horse be with you! (馬力の加護を!)

英語の別れのことばといえば何といってもGood-bye.。これは昔の、

May God be with you!

「神があなたと共にありますように!」という挨拶が、

God be with you!

に縮まり、それがさらに縮まって現在のものになっています。

では未来の挨拶はどうなっていくのでしょうか。その有名な例(?)が、傑作SFシリーズ『スターウォーズ』でよく使われ、決まり文句となった

May the force be with you!(理力があなたと共にありますように!)

さらばじゃ、死ぬなよ、生きてまた、といった大事な場面でよく飛び出すもの。

組み立ては大昔のMay God be with you!と同じです。ただ、遠い未来にGodは無いようで、そこはthe force(ザ・フォース:“理力”と訳されている)が宇宙を支配する時代のようです。

この「理力」の達人のヨーダが、主人公のスカイウォーカーに施す訓練を見ていると、どうもこれは生体エネルギーといおうか、東洋の「気」に一脈通ずるところがあるよーだ。

「気」は単純に訳せばairですが、中国語から英語になった「気功」Qigongではqi(ツィ的に読む)であり、英語的にはenergyとすることも多い。

で、「フォース」とは、「気の力」という意味の「気力」と訳すほうがよいような気がする。何しろ日本の言語文化が「気」を使った言葉でみちみちているように、未来の宇宙には「フォース」が支配しているからです。

ただ、forceには「気」とは異なるニュアンスがある。「軍隊」という意味がそれで、たとえばthe Royal Air Forceといえば「英国空軍」であり、その際、英国と気功とは無関係であります。

英国といえば、現在、同国のブレア首相が世界歴訪中。その精力的な外交目標は、英国を世界規模での"a force for good"にすることだという。「善のためのフォース」という、どこか『スターウォーズ』的でもあり、日本流にいえば「善の軍団」といったことだろうし、for goodは永遠にという意味もある。これ、forceful(力強い、説得力のある)であるや否や。

forceは「無理強いする、押し付ける」という意味の動詞でもあります。

Don't force it.

これはよく使われる表現で、たとえば、がむしゃらに何かをこじ開けようとする人に、「(壊れるかもしれないから)無理にやらないで」という気持ちで用いる。

対象が人間ならDon't force her/him.で「彼女/彼に無理にやらせないで」。

さて、このforceを「ホース」と読んでしまいがちなのが我ら日本人です。

[][]になる。これは国際的「定評」となっている。自分は違うといきり立つのは大人気ない。アジアの他の多くの国の人々もこれを共有している。

それに、Fujiと書いてフジと読むような、こういうダブル・スタンダードに我ら日本人は慣れておるのです。

この弱点(?)をじっと見つめ、びくびくして生きる事は寂しいし、[f]も[h]もしまいに言わなくなってしまうのも悲しい。

今年はたまたま午年。干支(the Chinese zodiac)の守護獣(the patron animal of the year)はウマ。そこで日々の英会話の別れの場で、[h]なら言える!と言う明るさで、言える人は言えない振りをして、Bye.のあとに、

May the horse(ホース) be with you!

「ホースがあなたと共にあるように!」とすると、ユーモアの花しばし咲く。これに対して、

It's the force, not the horse!

などと直そうとするこだわりのカタマリ、あるいは干支の知識のない人には、

Wrong! It's the Year of the Horse!

「残念! 今年はホースの年です!」とでも。

かようにhorseを駆いつつ、原典のforceも言えるようにしていく。これ禍を福に転ずる英語習得の極意。

ちなみに「馬力」の読み方だが、「バリョク、マリョク、マリキ」などがクール。

競馬好きの人に、といったシチュエーションにも応用出来ましょう。

今年一年、May the horse be with us!


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