今日の日経を題材に法律問題をコメント

2015年08月31日(月) セカンドオピニオン 悪い影響があると思う医師10%

日経(H27.8.31)社会面で、主治医とは別の医師に診療内容や診断結果の意見を求める「セカンドオピニオン」について、医師を対象に意識調査を実施した結果を報じていた。


見出しでは、「セカンドオピニオン要望 医師8割『不快感ない』」として、その点に着目した記事であった。


 しかし、アンケートでは、「セカンドオピニオンを求めたい」と告げられた場合、その患者との信頼関係に悪い影響があると答えているのが、10.6%もいることに注目すべきである。


 10人に1人の医師が不快に感じると思うと、「セカンドオピニオンを求めたい」とは言いにくいのではないだろうか。


 翻って、弁護士の場合はどうだろうか。


 統計がないのでわからないが、不快に思う弁護士は医師より多いかも知れない。


 行っている業務に自信があれば、「セカンドオピニオンを求めたい」と言われても、不快に思うことはないはずなのだが。



2015年08月28日(金) 振り込め詐欺で未成年者が増加

 日経(H27.8.28)社会面で、振り込め詐欺などの特殊詐欺で摘発した未成年者が183人に上り、統計を取り始めた2012年以降で最多を更新したと報じていた。


 実際、振り込め詐欺などで未成年者が増えている実感がある。


 とくに、際立った非行歴がないのに、遊び仲間から小遣いが稼げると誘われて、安易に参加しているケースが目につく。


 根本的対策は難しいが、高校教育で、犯罪は割が合わないことを教えるということも考えるべきではないだろうか。



2015年08月26日(水) アイフルが、銀行から返済猶予された融資を前倒しで完済

 日経(H27.8.26)経済面で、消費者金融のアイフルが、銀行から返済を猶予されていた融資を前倒しで完済したという記事が載っていた。


 アイフルは過払い金の返還負担が重荷となって経営が悪化。昨年6月に銀行団から527億円の借り入れの返済を5年間猶予されていたが、それを前倒しで完済したというものである。


 おそらく過払い金請求が減ったことが一因であろう。


 弁護士会の過払い請求問題のメーリングリストも、一時は活発に議論がなされていたが、いまではほとんど投稿がない状態である。


 2010年にグレーゾーンがなくなったため、それ以降は過払いが生じなくなっており、また、過払い金の時効は10年である。


 そのため、過払い金請求はほとんど終息したといえるかも知れない



2015年08月24日(月)

 日経(H27.8.24)夕刊で、神奈川県葉山町の県道で、海水浴帰りの歩行者の列に車が突っ込み、3人が死傷したひき逃げ事件で、会社員の男性が警察署に出頭したという記事が載っていた。


 ただ、その男性は、呼気から基準値を超えるアルコールが検出され、「自宅に帰ってからビールを飲んだ」と話しているとのことである。


 これまでは、飲酒運転の発覚を免れるために、事故後に飲酒をするケースがしばしばあった。


 そこで、アルコールや薬物の影響で起こした死傷事故の後に、アルコール等の影響の有無や程度が発覚することを免れる行為を処罰する「過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪」が新設され、平成26年5月20日から施行されている。


 この場合には12年以下の懲役となり、しかも通常はひき逃げ罪も成立するので、最高で18年の懲役刑に処せられることになる。


 本件では、「アルコールの影響で死傷事故を起こした」ことの立証が必要であるが、同乗者が2人いたようなので、立証は比較的容易であろうと思われる。



2015年08月21日(金) 東電幹部の強制起訴で、検察官役を務める弁護士を指定

 日経(H27.8.21)夕刊で、東電福島第1原発の事故をめぐり、検察審査会が元東電幹部3人の強制起訴を決めたことを受け、東京地裁は、検察官役を務める弁護士3人を指定したという記事が載っていた。


 いずれも刑事事件のベテランである。


 しかし、検察官が起訴できなかった事件を有罪立証することはほとんど無理であり、大変な苦労するのではないだろうか。


 強制起訴の制度は早く見直した方がよいと思う。



2015年08月20日(木) 武藤議員が離党届

 日経(H27.8.20)政治面で、自民党の武藤貴也衆院議員が、知人に未公開株の購入を持ちかけ、出資金の一部を返済していないとの週刊誌報道を受け、党本部に離党届を提出したと報じていた。


 週刊誌報道によれば、武藤議員は「値上がりが確実な新規公開株を国会議員枠で買える」などと持ちかけたが、株は購入されず、出資金の一部は戻っていないとのことである。


 これが事実だとすると、国会議員の地位を悪用するという極めて悪質な詐欺であり、実刑になってもおかしくない事案である。


 自民党を離党しただけでは済まないのではないだろうか。



2015年08月18日(火) 大会組織委員会が提訴したことを強く非難

 日経(H27.8.18)社会面で、ベルギーの劇場ロゴのデザイナー側が著作権を侵害されたなどとして、東京五輪の公式エンブレムの使用差し止めを求めて提訴した問題で、大会組織委員会は、「書面によるわれわれの詳細な説明に耳を傾けようとせず、提訴するという道を選んだ」「このような劇場側の態度は、公共団体の振る舞いとしては受け入れがたい」と強く非難したと報じていた。


 しかし、「デザイナー側が提訴した」というのであるから、「このような劇場側の態度は、公共団体の振る舞いとしては受け入れがたい」という非難は的外れのように思われる。


 大会組織委員会は、「デザイナー側の権利を一切侵していないとする立場に変わりはない」と主張しているのであるから、淡々と訴訟に応じればよい。


 訴訟する権利は誰にもあるのだから、訴訟提起したことをもって非難するのは、公的団体の振る舞いとしては不適切ではあろう。


 大会組織委員会が、「どっからでもかかって来い」という態度でないのは、何か後ろめたいところがあるからなのかと疑ってしまう。



2015年08月17日(月) 酔ってタクシーの運転手を殴り、タクシー代を踏み倒した場合の罪

 今日は休刊日なので、昨日の日経(H27.8.16)社会面で、タクシー運転手から現金を奪って殴ったとして、暴走族グループ「関東連合」の元メンバーを現行犯逮捕されたという記事が載っていた。
 

 関東連合の元メンバーだったので新聞記事になったのであろうが、似たような事件はしばしば起きている。


 よくあるパターンは、酔っていて、タクシーを降りるときに運転手を殴って金を払わないまま下車するというものである。


 タクシー代程度の現金は所持していることも多いから、酔っていたせいというしかない。


 しかし、たとえ運転手のケガが軽くても、強盗致傷罪という、裁判員裁判の対象となるほどの重大な犯罪となる。


 ケガが軽ければ、示談できて起訴猶予処分となることがほとんどであるが、示談金が数十万円はいるし、示談成立まで勾留はされるので、注意した方がよい。



2015年08月14日(金) 東芝の社外取締役に企業トップ経営者などを起用

 日経(H27.8.14)1面トップで、東芝社外取締役に、企業トップ経営者や元最高裁判事などを起用、という記事が載っていた。


 これまで東芝は委員会制度を取り入れていたが、監査委員会や指名委員会は形骸化していたことが明らかになっていた。


 そのため、企業トップ経営者などを社外取締役に起用して、しっかりした重石になることを期待したのであろう。


 それ自体が悪いわけではない。


 ただ、なぜ社外取締役が形骸化していたのかの原因を十分解明しない限り、高名な人を社外取締役に起用するだけでは問題は解決しない。



2015年08月12日(水) 少年の母親が死体の遺棄を手伝う

 日経(H27.8.12)社会面で、2009年に行方不明になった男性の遺体が新幹線高架下から見つかった事件で、殺人容疑で逮捕した元少年の母親が遺体を運び、埋める作業の一部を手伝った疑いがあることが分かったという記事が載っていた。


 ただ、死体遺棄罪の公訴時効(3年)が成立してようである。


 死体遺棄罪は、「死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する。」とされている。


 この規定の死体遺棄以外の犯罪類型からも分かる通り、死体遺棄罪は死者を敬う感情を保護法益としている。


 そのため法定刑も懲役3年以下と比較的軽くなっている。


 しかし、死体遺棄は実際には別の犯罪が絡んでいることが多い。


 それゆえ、法定刑をもう少し引き上げることが検討されていいかもしれない。(法定刑を懲役5年以下に引き上げると、時効は5年になる。)


 なお、母親の行為は証拠隠滅罪にもあたるが、やはり公訴時効は3年なので、時効が成立していることになる。



2015年08月11日(火) 警察官がDV被害者の施設を漏らす

 日経(H27.8.11)夕刊で、大阪府警の警察官が、DVの被害者を保護している施設の所在地を加害者に漏らしたため活動ができなくなったとして、施設を運営するNPO法人代表が、府に施設の移転先確保や慰謝料などを求める調停を大阪簡裁に申し立てたという記事が載っていた。

 
 加害者が警察署に訪れた際、応対した署員が施設の住所などが記載した書類を机の上に置いたまま部屋を離れ、その間に加害者が書類を見たようである。


 DVの被害者は非常にナーバスになっており、それに寄り添う気持ちが大事である。


 加害者を前にして、書類を放置したまま席を離れられるのは、そのような寄り添う気持ちがないからなのだろう。


 DVに関わる関係者は心すべき問題といえる。



2015年08月10日(月) 徴兵制は憲法18条に違反するのか

 日経(H27.8.10)政治面で、安全保障関連法案の参議院での審議の様子を報じていたが、その中だ、安倍首相が「徴兵制は憲法18条が禁止する『意に反する苦役』に該当する。明確な憲法違反で、全くありえない」と答弁したと書いていた。


 一般的には、徴兵制は憲法18条に違反すると解釈されている。


 しかし、憲法18条は、「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪による処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。」と規定しているだけで、徴兵制については直接には述べていない。


 そもそも、憲法18条はアメリカ合衆国憲法修正13条1節に由来しており、そこでは「奴隷及び本人の意に反する労役は、犯罪に対する刑罰として、当事者が適法に宣告を受けた場合を除くほか、合衆国あるいはその管轄に属するいずれの地にも存在してはならない。」と規定している。


 そして、アメリカではその憲法の下で徴兵制が採用されたことがあり、しかも、最高裁も徴兵制を合憲と判断している。


 このことは、その条文の文言からは、必ずしも徴兵制の禁止までは読み取れないということを意味している。


 日本においても、防衛の義務を国民全体の義務と考えた場合には、防衛のためであれば、徴兵制は「意に反する苦役」には該当せず、憲法18条に反しないと解釈することは不可能ではない。


 もちろん、徴兵制には国民のほとんどが反対であろうし、その必要性もないと思うが。



2015年08月06日(木) スカイマーク ANAが支援する再生計画案が可決

 日経(H27.8.6)1面トップで、民事再生手続き中のスカイマークの債権者集会で、ANAが支援する再生計画案が可決され、同案に対抗していた米デルタ航空による支援案は否決されたと報じていた。


 再生案が可決されるためには、議決権総額の2分の1以上と、投票した債権者の頭数の過半数の賛成が必要である。


 ANA主導のスカイマーク案は、議決権額で60.25%、頭数では8割弱の支持を獲得したということだから、圧勝である。


 東京地方裁判所では、集会と書面による投票が併用されており、書面投票である程度投票の結果が見えていたのだろう。
 裁判所は、即日認可決定を出している。



2015年08月05日(水) 離婚の平均審理は5.9か月?

 日経(H27.8.5)社会面で、離婚調停など裁判所での手続きが長期化しているという記事が載っていた。


 記事によれば、2014年の平均審理期間は5.9か月で、10年間で1.2カ月延びている。


 かつては父親が親権を争うことは比較的少なかったが、最近は増えているし、面会交流を主張することも多い。


 そのようなことが原因となって長期化しているものと思われる。


 平均審理期間は5.9か月となっているが、それは争いがなく1,2回で終わるものを含めた平均に過ぎない。


 弁護士が就くような、互いの主張が鋭く対立するような事件では、1年以上かかるというのが実感である。


 それゆえ、依頼者には、解決まで少なくとも1年はかかると思ってくださいと言っている。



2015年08月04日(火) ビットコインに対する規制

 日経(H27.8.4)社説で、仮想通貨ビットコインの取引所「マウントゴックス」で大量のコインや預かり金がなくなった事件に関し、仮想通貨の取引が健全に発展していくための環境整備を急ぐべきと論じていた。


 この問題では、「悪いのは『マウントゴックス』であり、ビットコインではない」という論調もある。


 しかし、ビットコインの取引の安全性や透明性に問題があり、他の取引所でも同様の事態が起こり得ることが明らかになった以上、規制は必要であろう。


 米欧では、仮想通貨を資金洗浄規制の対象としたうえで関連法令を手直しするという形でルールづくりが進んであるようであり、日本でも同じ方向で監督がなされていくだろう。


 それだけに止まらず、仮想通貨は国家の通貨発行権限を脅かす存在になり得ることから、規制は徐々に強まっていくのではないだろうか。



2015年08月03日(月) 犯罪の手口はどれも単純である

 日経(H27.8.3)社会面で、仮想通貨ビットコインが大量に消失したとされる事件で、ビットコインの取引運営会社マウントゴックスにおいて、取引システムに接続できるのは、社長のマルク・カルプレス容疑者だけであったと報じていた。


 マウント社やカルプレス容疑者らのパソコンを解析したところ、現金の入金記録がないのに、カルプレス容疑者の口座残高が急激に増えており、残高の変更にはCEOのアクセス権限が使われた形跡が見つかったとのことである。


 マウント社は、昨年2月、「ハッカー攻撃を受けた」として取引を停止していたが、それは虚偽だったことになる。


 「仮想通貨」「ビットコイン」「ハッカー」などと聞くと、捜査には高度なテクノロジーが必要な印象であるが、代表者がシステムを改ざんするという極めて単純な手口であった。


 もっとも、犯罪というのは、その手口は単純なものがほとんどである。


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