今日の日経を題材に法律問題をコメント

2013年04月30日(火) 高速バスツアー事故から1年 公判日も決まらず

 日経(H25.4.23)社会面で、乗客7人が死亡、38人が重軽傷を負った関越自動車道の高速ツアーバス事故から29日で1年が過ぎたという記事が載っていた。


 この事件の運転手の刑事裁判は未だ始まっていない。


 現在、公判前整理手続きをしているとのことであるが、事案自体はそれほど複雑とは思われない。


 1年も経過しながら公判日さえも決まっていないというのは、憲法で定める「迅速な裁判を受ける権利の保障」という趣旨からして問題であろうと思う。



2013年04月26日(金)

 日経(H25.4.26)社会面で、朝鮮総連中央本部の競売を巡り、資金調達が難航している落札者の最福寺の池口恵観法主が、なお購入を目指す姿勢を示したという記事が載っていた。


 競売代金全額を納付できなければ、差し入れた保証金5億円は没収になる。


 大変な損失であり、株式会社であれば株主代表訴訟を起こされるような事態である。


 それゆえ、資金集めに東奔西走しなければないないはずであるが、池口法主は「仏様が『待て』と言ってのかも知れない」と言って、焦る様子がまったくないところが不思議である。



2013年04月24日(水) 偽証教唆で逮捕された弁護士の勾留決定を取消

 日経(H25.4.24)夕刊で、岐阜地裁が、偽証教唆の疑いで逮捕された坂井田吉史弁護士の準抗告を認め、勾留決定を取り消したという記事が載っていた。


 最初の10日間勾留の時点で勾留決定を取り消すということは比較的珍しい。


 そもそも、被疑事実が偽証教唆ということ自体、証拠の弱さを感じさせる(通常は、共謀共同正犯とするだろう。)


 だいたい、弁護人が証人に偽証させて、それで被告人が無罪になったとしても、弁護人が得することは何もない。つまり、偽証教唆の動機がない。


 捜査機関は、偽証した証人の証言をうのみにし、他に十分な証拠がないまま弁護士を逮捕したのではないだろうか。



2013年04月23日(火) 田代検事に「不起訴不当」

 日経(H25.4.23)社会面に、小沢一郎代表が強制起訴された事件で虚偽捜査報告書を作成した疑いで、田代政弘・元東京地検特捜部検事が検察審査会から「不起訴不当」の議決を受けたことについて、元検事を告発した市民団体は、「真相を再度究明してほしい」と訴えたという記事が載っていた。


 しかし、いくら真相を究明する必要があると言っても、証拠がない限り起訴はできない。


 ただ、田代検事が事実と異なる捜査報告書を作成した背景には、検察庁が描いた捜査の構図に縛られたことがあるのではないか。


 そのような検察庁の体質について、検察庁自らが十分究明しないまま幕引きを図ったことに問題の根本があるのだろうと思う。



2013年04月22日(月) 養育費を支払っているのは20%

 日経(H25.4.22)夕刊で、離婚母子家庭で、父親から養育費を受けているのは約20%と低迷しているという記事が載っていた。


 離婚しても子どもとの縁が切れるわけではないから、自分の子どもに養育費を支払うことは親として当然である。


 その点からすると、養育費を受けているのが20%というのは割合として低い。


 ただ、養育費を支払うほどの収入がなかったり、転職して収入が減ったりしたりして、支払えないことは多い。


 中には、当初は養育費を支払っていたが、意識的に支払わなくなるケースもある。


 女性側が再婚した場合である。


 女性が再婚しても、父親からすれば自分の子どもであることに変わりはないのであるから、法律上は養育費を支払う義務はある。


 このようなケースでは家庭裁判所に養育費減額の調停を申し立てるのが本来の筋である。


 しかし、再婚の事実を知ったときから、いきなり支払いをストップすることは多いようである。



2013年04月19日(金) インターネットによる選挙運動 法改正が遅すぎる

 日経(H25.4.19)夕刊で、インターネットによる選挙運動を解禁する改正公職選挙法が参院本会議で、全会一致で可決、成立したと報じていた。


 これにより、夏の参院選からウェブサイトや、ツイッター、フェイスブックなどを使った選挙運動が全面解禁されることになる。


 しかし、インターネットによる選挙運動の解禁が問題になってからすでに15年以上経っている。


 インターネットの世界は、犬にとっての1年が人間の7年に相当することになぞらえて、ドッグイヤーと言われることがある。


 それでいけば100年分が経過したことになる。


 インターネットによる選挙運動が解禁になったことは喜ばしいが、法改正がとにかく遅すぎる。



2013年04月18日(木) 釣りゲームでグリーが敗訴

 日経(H25.4.18)社会面で、携帯電話向け釣りゲームを模倣されたとして、グリーがDeNAを訴えた事件で、最高裁は、グリーの上告を退ける決定をしたと報じていた。


知的財産高裁では、DeNAによる著作権侵害を認めていなかったから、法律審である最高裁で判断が覆る可能性は低く、予想された結論ではある。


 ただ、知的財産高裁では、「両ゲームは全体から受ける印象が異なる」と判断しているが、一審では「模倣である」というグリーの訴えを認めている。


 すなわち、一審では「全体から受ける印象は同じ」と考えたのだろう。


 裁判というのは裁判官によって結論が異なることはあるが、この種の事件は、とくに裁判官の主観に左右される面が多い気がする。


 それだけに、担当する弁護士としても苦労するところである。



2013年04月17日(水) 水俣病訴訟で最高裁判決

 日経(H25.4.17)1面で、水俣病の認定を求めた訴訟で、最高裁は、女性を水俣病患者と認め、遺族の勝訴が確定したと報じていた。


 また同時に、大阪府豊中市の女性(水俣市出身)の遺族が患者認定などを求めた訴訟の上告審判決もあり、水俣病と認めなかった2審判決を破棄し、審理を大阪高裁に差し戻した。


 大阪高裁は「裁判所の判断は県の判断が不合理かどうかという観点で行われるべき」とし原告側に敗訴を言い渡していた。


 そこで、裁判所が、認定についての行政の裁量をどこまで認めることができるのかが問題になっていた。


 この点最高裁は、認定は水俣病のり患の有無という客観的事実を確認する行為であるから、行政の判断の裁量に委ねられるべきものではないとした。


 法律論から淡々と論じているだけで、当然の判断という考えからか、補足意見も付けられていない。


 しかし、それだけにかえって説得的という印象を受けた。



2013年04月16日(火) グーグルの検索予測機能に差し止め命令

 日経(H25.4.16)社会面で、「グーグル」で自分の名前を入力すると、犯罪を連想させる単語が自動表示されるとして、男性がプライバシー侵害などを理由に米グーグルに表示差し止め等を求めた訴訟で、東京地裁は、同社に表示差し止めと30万円の損害賠償を命じたと報じていた。

 
 自分の名前を入れると、その横に犯罪を連想する単語が表示されるとしたら、その人にとってはたまらないと思う。


 しかし、検索予測機能の有用性も否定できないだろう。


 今後、控訴審で争われるのだろうが、裁判所が最終的にどのような判断をするのか注目される。



2013年04月12日(金) 定数不均衡訴訟は弁護士なしでもできる

 日経(H25.4.12)社会面で、新潟市の男性が「一票の格差」があった衆議院選新潟1区の選挙無効を求めた訴訟で、東京高裁は違憲と判断したという記事が載っていた。


 この事件では、男性は弁護士を立てない「本人訴訟」であった。


 定数不均衡訴訟は争点は明確であるから、サンプルを作っておけば、弁護士なしでも訴訟提起は可能であろう。


 全国の有権者が一斉に選挙無効の訴訟を提起をすれば、インパクトがあると思う。(裁判所は悲鳴を挙げるだろうけど)



2013年04月11日(木) 「自分の時間がない」が盗撮の動機になるのか

 日経(H25.4.11)社会面で、電車内で女性の下着を盗撮した大阪地裁の華井俊樹判事補に対し、国会の裁判官弾劾裁判所は罷免の判決を言い渡したと報じていた。


 動機について、華井判事補は「自分の時間がほとんどなく、欲求を抑えられなくなった」と説明したそうである。


 しかし、「自分の時間がない」ことと盗撮することとは何の関係もないことである。


 もちろん、華井判事補は、うそをついているわけではないと思う。


 おそらく自分でも動機を説明できないのだろう。


 このような行為(社会的地位のある人の盗撮や万引き)について、「悪についての強烈な快感」と説明する見解がある。


 しかし、快感であることの自覚があれば、それを自制することも可能ではないだろうか。


 多分、盗撮している瞬間は、いいとか悪いとかの感覚はなく、真っ白なんだろうと思う。


 「真っ白」なのだから、自分の行為を抑制することなど出来るはずがない。


 ただ、これもあくまでも推論に過ぎない。


 結局、裁判制度の中では、この種の犯罪について本当の動機というのは解明できないのだろうと思う。



2013年04月10日(水) 取調べ受忍義務について

 日経(H25.4.10)社会面で、パソコンの遠隔操作事件の片山被告を再逮捕する方針と報じていた。


 記事によれば、片山被告は、すでに3件について起訴されているが、無罪を主張して、取り調べを拒否しているとのことである。


 取調べについては、取調べ受任義務を認めるか否かで学説上の争いがあり、学説では取調べ受任義務を否定する見解が多数である。


 しかし、実務は取調べ受任義務があるとして運用されている。


 そのため、被疑者が取調べを拒否しても、強制的に取調べ室に連れて行かれるのが普通である。


 それゆえ、片山被告の取調べの拒否を捜査機関が容認しているのはめずらしいことのように思う。


 ただ、この事件で捜査機関は、すでに誤認逮捕をしているので、取調べに慎重になっているのかもしれない。



2013年04月09日(火) 経産省前のテント撤去訴訟

 日経(H25.4.9)社会面で、脱原発を訴え、経済産業省の敷地にテントを設置している市民団体メンバーに対し、国が立ち退きを求める訴訟を東京地裁に起こしたという記事が載っていた。


 他人の敷地に勝手にテントを張って占有しているのだから、法律上は建造物不法侵入であり、強制排除も可能だったのだろうう。


 しかし、経産省は、警察力は頼まず、民事事件とした。


 他方、市民団体メンバーは、原発の問題性を指摘して、撤退を拒否しているようである。


 その考え方の当否については別にして、訴訟の結末についていうならば、敷地を占有している人たちが勝つ可能性は100%ないだろうと思う。



2013年04月08日(月) 田中最高裁長官の発言

 日経(H25.4.8)社会面で、1957年に起きた砂川事件の上告審で裁判長を務めた田中耕太郎最高裁長官が、面会した駐日米公使に「(最高裁の)評議では実質的な全員一致を生み出し、世論を揺さぶりかねない少数意見を回避するやり方で評議が進むことを願っている」と語っていたことが明らかになったと書いていた。


 「砂川事件」で、東京地裁は米軍駐留を違憲としており(伊達判決)、当時、最高裁としてどのような判断をするかが注目されていた。


 このような判決の方向を示唆するような発言を外国の公使にするということは司法の独立に明らかに反する。


 ただ、田中最高裁長官は、駐日米大使にも「伊達判決は全くの誤りだ」などと判決の見通しを示唆したことが明らかになっているから、いまさら驚きはないのかもしれない。



2013年04月04日(木) 相撲協会は控訴を断念

 日経(H25.4.4)社会面で、日本相撲協会は、八百長問題で解雇した元幕内・蒼国来関の解雇処分を無効とした東京地裁の判決について、控訴しないことを決めたと報じていた。


 判決を覆すだけの証拠が乏しいと判断したためである。


 以前のブログ(H23.4.15)で、「八百長の証拠としては、他の力士の供述であろうが、八百長をした相撲の特定、それぞれの供述の突き合わせなどはきちんとされているのだろうか。裁判で解雇無効が認められるかもしれない。」と書いたが、そのとおりになってしまった。


 宗像危機管理委員長は記者会見で「こんなに薄い証拠で処分していいのか、という内容。」だったそうである。


 しかも、調査した特別調査委員会7人のうち4人が弁護士というのだから情けないことである。



2013年04月03日(水) いじめを認定し、同級生と母親に賠償命令

 日経(H25.4.3)夕刊で、名古屋市立中学校の元男子生徒が、いじめが原因で精神的苦痛を受け、うつ状態になったとして、当時の男子同級生と母親に計220万円の損害賠償を求めた訴訟で、名古屋地裁は、いじめを認定して2人に33万円の支払いを命じたという記事が載っていた。


 当初、訴えた側は、学校に相談したが、相手の同級生側が協議に応じなかったため、名古屋簡裁に調停を申し立てたが、調停にも出頭しなかったとのことである。


 そうなると残された手段は訴訟しかないことになる。


 ただ、このような訴訟では、いじめを受けたことの立証、あるいは、いじめによってうつ状態になったということの立証が容易でないことが多い。


 それゆえ、控訴となった場合に、原審が維持されるかどうかは分からず、いじめられた側の苦労は今後も続くかもしれない。


 そのような事態になる前に、学校はもう少しきちんと対処できなかったのだろうか。



2013年04月02日(火) 面会交流を履行しない場合の間接強制の要件

 日経(H25.4.2)社会面で、別居した子どもとの面会を認めた調停や審判がなされたが、子を引き取った親がそれに従わない場合、金銭の支払いを命じる「間接強制」の対象とできるかが争われた事件で、最高裁は、面会方法などが具体的に取り決められている場合は可能とする初判断を示したと報じていた。


 離婚調停の際に、親権者側(大抵は妻である)が、相手方(大抵は夫である)に子供と面会させると約束しながら、それを履行しないことはしばしばあり、問題になっていた。


 最高裁は、面会交流の日時、各回の面会時間、引き渡し方法が具体的に決められていた場合には、間接強制が可能とした。

 
 ただ、面会条件について具体的に決めることは多くない。


 面会させる側が、面会条件を具体的に決めることを嫌がるからである。


 そのため、最高裁でも、3件のうち1件が認められたにすぎない。(ちなみに、2件は審判、1件は調停で面会交流を決めていた。)


 ただ、間接強制できる要件が明らかになったことから、今後は、調停や審判では、その要件を充たすような決め方になっていくと思われる。


 その意味では、今回の最高裁の判断は紛争解決に資するものと評価できる。



2013年04月01日(月) 自販機による無断撮影

 日経(H25.4.1)法務面で、カメラで撮影した顔の映像から性別や年齢を推測して商品を提案する販売促進策の法的問題点について論じていた。


 例えば、自動販売機の前に立つと、小型カメラが購入客を撮影し、性別や年齢を推測して、最適な商品を提案するというものが設置されている。


 画像は保存せず、属性情報だけを残しているという理由で、撮影している旨の注意書きはないそうである。


 しかし、肖像権とは「みだりにその容貌、姿態を撮影されない権利」とされているから、画像を保存していなくても権利侵害はあり得ることになる。


 やはりトラブルを避けるためには、画像を保存していなくても、撮影していることを周知すべきであろう。


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