今日の日経を題材に法律問題をコメント

2012年08月30日(木) 何が特許侵害と判断されたのかよく分からない

 日経(H24.8.30)1面「春秋」欄で、「スマートフォンをめぐる特許紛争で、米国の陪審員は『角が丸い長方形』がアップルらしさの源泉だと認め、サムスンは830億円もの賠償金を課された。」と書いていた。


 しかし、米国の陪審員は、『角が丸い長方形』が特許侵害と判断したのだろうか。


 日本の特許制度についていえば、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものを「発明」として保護するのであるから、『角が丸い長方形』が特許として保護されることはないと思われる。


 『角が丸い長方形』が保護されるとすれば、意匠制度であろう。


 米国の特許制度はよく知らないが、それほど大きくは違わないのではないか。


 もっとも、他の記事では、「陪審員は、タッチ画面の操作などが特許侵害と認定した」と報じており、それならば理解できる。


 マスコミは、今回の陪審員の判断の内容が十分整理されないまま報じているように思われるのだが。



2012年08月28日(火) 裁判官は常識的な価値観の人が多い

 日経(H24.8.28)夕刊で、職員の入れ墨の有無を調査していた大阪市は、回答を拒否した職員6人を戒告の懲戒処分にしたと発表したが、このうち少なくとも4人は処分取り消しを求める訴訟を検討していると報じていた。


 仮に訴訟提起した場合には、入れ墨調査の必要性、調査の内容、処分の程度などが審理されるのだろうが、それだけでなく、入れ墨に対する裁判官の価値観も影響すると思われる。


 この点、裁判官は本当に常識的な価値観の人が多い。(価値観が常識的というだけであり、非常識な裁判官はいるが。)


 入れ墨はファッションであると思ってる裁判官はほとんどいないのではないだろうか。


 このようなことも含めて考えると、処分取り消しは認められないのではないだろうか。



2012年08月27日(月) 書籍の電子化を進めるためには

 日経(H24.8.27)9面で、アマゾンジャパンの電子書籍端末の「キンドル」の発売が遅れていることについて、「日本語の本の品ぞろえに手間取っているのではないか」と書いていた。


 出版社は著者から権利使用の許諾を受けているが、電子書籍化の許諾まで得ていないことがネックになっているようである。


 出版社と著者とは契約書をきちんと締結していないこともあり、たとえ契約していたとしても、少し古い書籍では、電子書籍化を許諾する旨の文言は入っていない。


 そのような場合には、出版社が許諾することはできない。


 しかし、電子書籍化のニーズは強い。


 これを根本的に解決しようとするならば、「出版社は、出版物と同様な割合で著者に使用料を支払うという条件で、電子書籍化の許可をすることができる。但し、電子書籍化に不同意の意思を示したものは除く。」という内容の立法をすればよいだろう。


 丁度、グーグルが、世界各国の図書館や出版社などと提携し、スキャンした書籍を閲覧できる「Google Book Search」サービスで和解したような内容である。


 ただ、そのような法律に対する反対は強いだろうなあ。



2012年08月24日(金) 大阪地裁の裁判官が自殺

 日経(H24.8.24)ネットニュースで、大阪地裁刑事部総括判事が自殺していたと報じていた。


 弁護士についてはときどき聞くけど、裁判官の自殺は珍しいのではないかと思う。


 裁判官は、基本的には双方の言い分を聞いて判断するだけであるから、仕事上のストレスは比較的少ないと思われるからである。(「双方の言い分を聞いて判断するだけ」と言うと裁判官に怒るかもしれないが。)



2012年08月22日(水) 遺産があるのに相続人がいない場合

 日経(H24.8.22)2面で、相続人がいない人が亡くなった場合のことについて書いていた。


 相続人がいない場合には、裁判所が相続財産管理人を選任し、その管理人が、遺産のなかから借金などの債務を支払い、残った資産を国庫に入れる。


 もっとも、その場合に特別縁故者がいれば、その人に分与できる規定はある。


 しかし、私が相続財産管理人になったケースでは、相続財産が5000万円くらいあったので、「全額特別縁故者に分与してもいいのではないか」と裁判所に打診したところ、「せいぜい半分くらいが限度」と言われた。


 そのため、2500万円くらいを国庫に納付したことがある。


 遺産があるのに法定相続人がいない人は、第三者に遺贈するとか、福祉団体に寄付するかなどの遺言をしておいた方がよいであろう。



2012年08月21日(火) 政府は司法試験の合格者数の目標引き下げを検討

 日経(H24.8.21)夕刊で、政府は、司法試験や法科大学院などのあり方を抜本的に見直す「法曹養成制度関係閣僚会議」を設置し、「年間3千人程度」としてきた司法試験の合格者数の目標引き下げや、法科大学院の統廃合などを検討すると報じていた。


 合格者の目標は年間2千人程度にするようであるが、それでは現状の合格者と変わらない。


 そのため、弁護士過剰の問題は今後も解決しないだろう。


 日弁連は、新聞記者との懇談会を開くなどして、弁護士過剰問題を訴えているが、マスコミの理解はあまり得られていないようである。



2012年08月20日(月) 無断上陸は軽犯罪法違反

 日経(H24.8.20)1面で、尖閣諸島・魚釣島に上陸した地方議員ら10名について、管理する日本政府の許可のない上陸は軽犯罪法違反の可能性があるとして、沖縄県警は上陸者から事情を聴取すると報じていた。


 他人の土地に無断で入っても住居侵入罪には該当しない(家の庭のように、塀などで囲まれた土地への侵入は別であるが)。


 ただ、軽犯罪法1条32項は「入ることを禁じた場所に正当な理由がなくて入った者は拘留又は科料に処する。」としているので、無断上陸はこれに該当するということなのだろう。


 しかし、先日の香港の活動家らが尖閣諸島・魚釣島に上陸した事件では、沖縄県警は「入管法違反(無断上陸)以外の犯罪の嫌疑はなかった」としているから、そのこととの整合性はあるのだろうか。


 沖縄県警は非常に難しい状況に陥っているように思われる。



2012年08月17日(金) 「政治的配慮はしない」  本音と建前の使い分け

 日経(H24.8.17)夕刊で、香港の活動家らが尖閣諸島・魚釣島に上陸した事件で、沖縄県警は、入管難民法違反容疑で逮捕した5人を検察に送致せず、入国管理局に引き渡した理由について「他に犯罪の嫌疑はなかったため」とし、政治的配慮や圧力があったことを否定したという記事が載っていた。


 2年前に尖閣諸島付近での中国漁船衝突事件では、那覇地検は、公務執行妨害で逮捕された漁船船長を勾留満期前に釈放したが、そのときは、「国民への影響や、今後の日中関係を考慮して、船長を処分保留で釈放する」と述べている。


 これには「検察庁が政治的判断をするな」という批判が強かった。


 今回の処分に際し沖縄県警が政治的配慮を否定しているのは、それに懲りたからであろう。


 しかし、捜査にあたって政治的配慮をすることはしばしばあったはずである。


 政治家に対する捜査でもそのようなことがあったと言われている。


 ただ、建前としては「法に基づいて捜査するだけであり、政治的配慮はしない」と言ってきただけである。


 今後もそのような本音と建前の使い分けはあるのだろう。


 それは政治と付かず離れずの位置にいる警察、検察庁の生きる知恵かもしれない。



2012年08月16日(木) 科捜研の研究員が鑑定結果を捏造

 日経(H24.8.15)社会面で、和歌山県警科学捜査研究所(科捜研)の主任研究員が証拠品の鑑定結果を捏造した疑いがあるとして、虚偽公文書作成、同行使などの疑いで捜査を開始したと報じていた。


 これは検察官の証拠捏造事件と同じくらい悪質である。


 裁判官は、科捜研の鑑定結果を疑うことは絶対にしないからである。


 それだけに徹底的に事案を解明し、他にもそのような事案がなかったかを明らかにすべきであろう。



2012年08月15日(水) パロマ一酸化炭素中毒死事故の控訴審で和解

 日経(H24.8.15)夕刊で、パロマ製のガス湯沸かし器による一酸化炭素中毒死事故で、死亡した2人の遺族らが損害賠償を求めた訴訟の控訴審において、パロマが遺族に謝罪し、計1億2290万円を支払うことで和解が成立したと報じていた。


 この事件は、発覚後すでに6年以上経過しており、その間、前会長と品質管理部長が業務上過失致死罪に問われ、有罪判決を受けている。


 この事件は、事故隠しがいかに企業にダメージを与えるかを示した好例といえる。



2012年08月14日(火) 求刑を上回る判決に控訴

 日経(H24.8.14)社会面で、大阪市で姉を刺殺した事件で、大阪地裁は、被告がアスペルガー症候群であると認定した上で、求刑を4年上回る懲役20年を言い渡したが、被告はこの判決を不服として大阪高裁に控訴したと報じていた。


 一審裁判員裁判での判決では、被告を精神障害であると認定した上で、「家族が被告人との同居を明確に断り、社会の受け皿が何ら用意されていない現状では、許される限り長期間刑務所に収容することが必要」としている。


 しかし、この判決には批判が強い。


 とくにアスペルガー症候群に対する無理解に対し、障害者関係団体から強い非難がなされており、それは当然であろうと思う。


 ただ、裁判員裁判のように短期間で裁判が終わると、そこまでの理解を求めるのは難しいのかもしれないし、それが裁判員裁判の問題点であろうと思う。



2012年08月13日(月) 賠償責任を制限する約款は有効である

 日経(H24.8.13)15面で、ヤフー子会社が起こした、顧客約5600社のウェブサイトやメールなどのデータが消えた事件について書いていた。


 この事件で、顧客は、復旧に費用だけでなく、サイト閉鎖による販売機会の逸失などの損害を被っており、その費用はかなりの額になると思われる。


 しかし、ヤフー子会社の約款には、損害賠償額は、契約者が支払った総額を限度額とすると定めているる。


 サーバ貸し料金は月額1890円からなので、その程度では損害は賄えないだろう。


 ひどい規定のようであるが、コンピューターの事故は損害が青天井に広がる可能性があるため、損害額の制限には一応の合理性がある。(「一応の」というのは、本当に青天井になるのかという疑問があるからであるが)


 しかも、この責任制限条項は消費者には適用しないとしている。


 消費者契約法で過度な免責や責任制限は無効になると定めているためであり、用意周到である。


 すなわち、かかる約款を無効と主張することは難しい。


 そうすると、利用者(法人)としては、被害にあってもほとんど賠償されないことを承知で契約するしかない。



2012年08月10日(金) 顧客情報漏えい事件

 日経(H24.8.10)夕刊で、ソフトバンクの顧客情報漏えい事件で、愛知県警は、契約者3人の住所などの個人情報を探偵業者に漏らしたとして、同社代理店元社員を不正競争防止法違反容疑で逮捕したと報じていた。


 ソフトバンクの顧客情報漏洩事件はおそらく氷山の一角だろう。


 このような事件があると、各社の情報管理はより一層厳格になる。


 しかし、そうすると情報の価値がますます上がるから、情報漏えいの犯罪はいつまで経ってもなくならないだろう。



2012年08月09日(木) 裁判官次第で結論が変わる事案

 日経(H24.8.9)3面で、携帯電話向け釣りゲームの画面が酷似しているなどとして、グリーがDeNAなどに配信差し止めや損害賠償を求めた訴訟で、知財高裁は配信差し止めと約2億3000万円の支払いを命じた一審判決を取り消し、グリー側の請求を退ける判決を言い渡したと報じていた。


 問題となったのは、DeNAの「釣りゲータウン2」。


 グリーは、水中シーンだけ真横から描かれ、画面中心に同心円がある点などが、同社の「釣り★スタ」に似ているとして、提訴していた。

  
 そして、一審・東京地裁は著作権侵害を認めた。


 しかし、知財高裁は、両作品には共通部分はあるが「表現上の創作性がない」とし、その上で「具体的な表現は異なり、全体から受ける印象も異なる」として著作権侵害には当たらないと判断したものである。


 正直言って、DeNAのゲームは、グリーを真似たなあという印象は受けるが、反面、どこが著作権侵害かというとよく分からない。


 その意味で、どちらの結論もあり得るわけで、裁判官次第で結論が変わるという事案であったと思う。



2012年08月08日(水) 日本で司法取引制度の採用は難しい

 日経(H24.8.8)夕刊で、米アリゾナ州で6人が死亡した銃乱射事件で、殺人罪などで起訴された被告が有罪を認め、仮釈放の可能性のない終身禁錮刑となる司法取引が成立したという記事が載っていた。


 司法取引により、検察側は長期裁判で多額の税金を費やすことを避け、被告側は死刑を回避することができるとのことである。


 しかし、日本でこのような司法取引がなされると、被害者の遺族は絶対納得しないだろう。


 司法取引については様々な議論があるが、このような事例をみると、日本で司法取引制度を採用することは難しいかもしれない。



2012年08月07日(火) 東電が福島第一原発事故直後のテレビ会議映像を公開

 日経(H24.8.7)1面で、東京電力が福島第1原発事故直後から記録した社内テレビ会議の映像の一部を報道関係者に公開したという記事が載っていた。


 ただ、社員のプライバシー保護を理由に、一般公開はせず、また約1600か所の音声処理、画像処理を施しており、全面公開はしなかった。


 しかし、これには批判が強い。


 確かに東電には公開する法的義務まではないにせよ、事件の公益性や記録保存の必要性などと、プライバシー保護とを比較考慮するならば、少なくとも報道関係者には全面公開するのが筋だろうと思う。


 もっとも、先の記事では「公開した映像には、緊迫した状況下で、同社社員らの笑い声も記録されていた。」というようなことを書いていた。


 緊迫した状況であったとしても24時間笑うなというのは無理な話であり、そのようなつまらない記事を書くから、東電も全面公開を渋るのだろう。



2012年08月06日(月) 相続でもめることが増えている

 日経(H24.8.6)3面下の広告欄で、ダイヤモンド誌の「もめる相続」という特集記事が組まれていた。


 もめる原因は複合的であるが、最近は権利意識が強まっており、被相続人とほとんど付き合いがなくても、「権利なのだから」と言って相続放棄しないことも多く、それが一つの原因となっている。


 また、世代的にみると、団塊の世代が、親から相続を受けるケースでもめることが増えているように思われる。


 そして、その後は、団塊の世代が被相続人になっていくであろうから、相続によるトラブルは今後も増えるのではないだろうか。



2012年08月03日(金) 適法性判断だけでなく妥当性のアドバイスもすべき

 日経(H24.8.3)23面で、「企業経営とコンプライアンス」の問題を書いていた。


 その中で、ある弁護士は、「危機的状況の企業は弁護士の法律意見にしがみつくな」と指摘しているそうである。


 危機の中でわらにもすがりたい経営者は弁護士に「違法ではない」と言われれば突っ張ってしまい、かえって社会の信頼を失うからだそうである。


 しかし、「違法ではない」とアドバイスするだけで、「あとは会社が判断してくれ」と言って、経営者が突っ張るのを放置するのであれば、その弁護士にも問題があるのではないか。


 もっとも、ここは意見が分かれるところであるが、弁護士のあり方としては、適法性の判断だけでなく、妥当性のアドバイスもすべきではないかと思っている。



2012年08月01日(水) 和解金は弁護士口座に振り込んでもらう

 日経(H24.8.5)6面で、米アップルの「iPad」の中国での商標権問題で、唯冠側からアップル側への権利移転が確定したため、唯冠側の弁護団が報酬などを受け取っていないとして求めていた権利の差し押さえが困難になったという記事が載っていた。


 唯冠はアップルから6千万ドル(約47億円)を受け取ったにもかかわらず、弁護士報酬などを支払っていなかったようである。


 相手方と和解する時には、報酬を必ず確保するために、和解金は弁護士口座に振り込んでもらうのが普通なのだが。


 唯冠側の弁護団は脇が甘かったのだろうか。


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