今日の日経を題材に法律問題をコメント

2010年08月31日(火) 「年金担保融資の廃止は問題」なのか?

 日経(H22.8.31)29面の「経済教室」で、年金担保融資の廃止は問題であると論じていた。


 論文では、「年金担保融資は、年金で生活する高齢者などに小口資金を低利で貸し付けるものである」と説明している。

 その上で、「利用者数は約34万人。医療費や冠婚葬祭費として活用する人が多く、利用者の98%は完済している。税金の投入もないのであるから廃止する必要はない」としていた。


 しかし、「小口資金」といっても250万円まで借りられるのであるから(全員というわけではないが)、「小口資金」融資とはいえないだろう。


 また、98%の完済率は、支給される年金から差し引かれて返済するのであるから、完済率が高いのは当然である。


 資金使途としては、「医療費や冠婚葬祭費として活用する人が多い」としているが、本当だろうか。


 少なくとも私が知っている限りでは、200万円くらい借りて生活費として使い、それを年金で返済し、完済するとまた借入して年金で返済することの繰り返しであり、何のための年金か分からない状態であった。


 年金担保融資は、年金制度の趣旨に反すると思うし、小口資金の需要を無視できないとしても、貸し付けの上限は50万円程度とすべきであろう。



2010年08月30日(月) 法律家は「へ理屈」を考える?

 日経(H22.8.30)16面のリーガル3分間ゼミというコラムで、禁煙の社内で喫煙していた社員を、会社側が懲戒処分できるかという問題を扱っていた。


 通常は、その程度では懲戒処分できない。


 ただ、最近は敷地内禁煙のビルも結構あり、その場合には喫煙者はわざわざ敷地の外までタバコを吸いに行くので、10分以上オフィスに帰って来ないこともあるようだ。


 そのような場合、会社が何らかの処分を考えるとしても、禁煙、喫煙の問題を正面から取り上げると、「個人の嗜好を会社が奪っていいのか」という議論になりかねない。


 それが正当な反論だとは思わないが、議論が錯綜することが懸念される。


 そこで、会社としては、喫煙の問題を直接指摘するのではなく、職務専念義務という確立した概念を使って、10分以上も勝手に休息を取るのは職務専念義務違反であるとすることになるだろう。


 つまり、喫煙という問題を正面から取り上げるのではなく、別の面から、当該行為を問題視するのである。


 これで思い出すのは、子どものいる家庭で、妻が宗教行為に熱心で、昼も夜も宗教活動をしているため、夫から離婚請求がなされた事例である。


 宗教行為は憲法上の権利であるから、宗教活動をしたことをもって離婚原因とすることはできない。


 そこで、宗教活動をした結果、家事、育児ができていないという点を捉えて離婚原因とするのである。実際、そのような判例は多い。


 修習生のときこのような判例の考え方を知り、「法律家は、へ理屈を考えるなあ」と思ったものである。(「へ理屈」ではないのだが、そのときはそう思った)。



2010年08月27日(金) 名誉棄損の訴訟が増えている気がする

 日経(H22.8.27)社会面で、光市母子殺害事件の被告の元少年を実名表記した本をめぐる発言で名誉を傷付けられたとして、著者らが元少年と主任弁護人らに計1100万円の損害賠償を求めた訴訟が開かれ、少年側は争う姿勢を見せたという記事が載っていた。


 この訴訟は、元少年の実名を表記したルポルタージュ本を出した著者に対し、元少年の弁護人が、「取材の方法や出版の仕方など、取材者の倫理観が欠落している」と述べたことについて、著者らが名誉棄損であるとして訴えたものである。


 このルポルタージュ本を巡っては、元少年ら側から出版差し止めの訴訟が提起されている。


 さらに、毎日新聞が社説で、少年の実名表記の著書を「当事者に知らせることなく出版しようとした行為は不意打ち的だ」などと論じたことに対し、ルポルタージュ本の著者らが、「社説で名誉を傷つけられた」として訴訟提起をしている。


 個々の訴訟についてはそれぞれ言い分があるだろうし、裁判を受ける権利は憲法で保障された権利であるから、訴訟したことについて安易な批判はできない。


 ただ、名誉棄損に関する訴訟は増えたなあとは思う。



2010年08月26日(木) 握手券が『有価証券』?

 日経(H22.8.26)社会面で、アイドルグループAKB48のメンバーとの「握手券」を偽造したことに対し、東京地裁は、有価証券偽造・同交付罪の成立を認め、懲役1年6月、執行猶予3年の判決を言い渡したという記事が載っていた。


 「握手券が『有価証券』といえるのか?」と奇異に感じるかもしれない。


 実際、弁護側は「握手券に財産的価値はなく、有価証券に当たらない」として無罪を主張していた。


 刑法の有価証券偽造罪の規定をみると「公債証書、官府の証券、会社の株券その他の有価証券」と規定しており、「その他の有価証券」が何かは条文上明らかではない。


 ただ、判例は、「有価証券とは財産権を表彰した証券であって、証券上表示された権利の行使または処分のために、その証券の占有を必要とするものをいう」と定義している。


 握手券はインターネット上のオークションでも売買されており、財産的価値はあるといえるから、握手券には財産権が表彰されているといえる。


 また、握手券がなければ権利を行使することができない。


 そうすると、前記の判例の定義に従えば、握手券は有価証券ということになる。


 結局、握手券を有価証券とした東京地裁の判断は、これまでの判例に従った穏当な結論ということになる。



2010年08月25日(水) 時効を理由に医師の請求を棄却

 日経(H22.8.25)社会面で、2001年、心臓手術を受けた女性が死亡した事故で、業務上過失致死罪に問われたが無罪が確定した医師が、誤った内容の報告書で名誉を傷つけられたとして、東京女子医大大学に損害賠償などを求めた訴訟の判決で、東京地裁は時効などを理由に医師の請求を棄却したという記事が載っていた。


 民事における不法行為の時効は「損害および加害者を知ったときから3年」であるから、刑事裁判をしている間に時効が完成してしまったということのようである。


 しかし、医師としては、刑事裁判の被告人の身である。それゆえ、自分が無罪であるとして争うのが精いっぱいであり、民事訴訟を提起する余裕はなかっただろう。


 形式的に言えば時効は完成しているのだろうが、時効のみを理由に請求が棄却されたのであれば、医師としては納得できないだろうと思う。



2010年08月24日(火) 名刑事は取調べ室で窓を背に座る?

 日経(H22.8.24)スポーツ面の「スポートピア」というコラムで、三原監督が球場で選手と話すときは必ず太陽を背にしたということを書いていた。


 選手が監督を見るとき、まぶしい思いで振り仰がせるためだそうである。


 それはいいにしても、その後で「余談だが、名刑事が被疑者を白状させるときも、取り調べ室では窓を背に座る」と書いていた。


 「余談」でこのような間違いをしてはいけない。


 取調官が窓を背にすると、ドア側には被疑者が座ることになり、被疑者が逃亡しやすくなる。


 それゆえ、取調官が窓側に座ることはない。


 このコラムの筆者は、迷信のたぐいをそのまま書いてしまったのだろう。


 ネット日経ではこのコラムは白紙になっていたから、訂正するのかもしれない。



2010年08月23日(月) 社会復帰を支援する国立更生保護施設

 日経(H22.8.23)社会面で、刑務所からの仮出所者に住居を用意し、就職など社会復帰を支援する国立更生保護施設「北九州自立更生促進センター」についての記事が載っていた。


 仮出所者らを受け入れる施設は民間に約100施設あるが、国立の更生保護施設は北九州と福島にあるのみである。


 仮出所して再び犯罪を行った被告人の弁護を何度もしたことがあるが、その人たちも出所当初は、「今度こそまじめに働いて更生しよう」という意欲は強い。


 ところが、本人の思いに反して、就職口はなかなか見つからない。


 そのうち手持ち資金は底を尽き、あせり始め、最後には再び犯罪に手を染めるというパターンが多い。


 それゆえ、再犯防止には就職のあっせんが重要であることは誰しも認めるところであり、国も前記のとおり国立更生保護施設を造るなど努力している。


 ただ、犯罪歴のない人でさえ就職が困難な時代であり、効果的な対策というのはないのが現状である。



2010年08月20日(金) ヘリ墜落事故、司法修習生の体験航海中

 日経(H22.8.20)社会面で、瀬戸内海で海上保安庁のヘリコプターが墜落した事故は、司法修習生の体験航海に合わせたデモンストレーション飛行の合間に起きたと報じていた。


 これまで発表しなかったのは、研修主催者側の検察庁に気を使ったためのようである。


 私が司法修習生のときも巡視艇の体験航海があり、巡視艇からヘリが発進する様子も見学させてくれた。(司法修習生は全国に実務修習に行くが、そのすべてではなく、管区保安本部のある修習地だけだと思う。)


 経験というものは直ちに役に立っていないように見えても、何らかの形で血となり肉となるものである。


 それゆえ巡視艇の体験航海がまったくの無駄とは思わない。


 ただ、それに要する費用を考えると、巡視艇の体験航海は世間の理解を得られないのではないか。


 事故現場と、司法修習生が乗っていた巡視艇とはかなり離れており、巡視艇からヘリは見えない距離なので、デモ飛行のために低空飛行し、それが墜落の原因となったとは考えられない。


 そうはいっても、そろそろ体験航海は廃止すべきではないかと思う。



2010年08月19日(木) 飲酒運転とひき逃げで弁護士を逮捕

 日経(H22.8.19)夕刊で、酒を飲んで車を運転中に衝突事故を起こして逃げたとして、弁護士が逮捕されたと報じていた。


 この弁護士は車を乗り捨てて逃げたそうであるが、そうするとすぐに足が付くことは誰でも想像できる。


 また、弁護士であれば、逃げると罪状は重くなり、罰金刑では済まず、正式の裁判になることは分かっていたはずである。


 そうは言っても気が動転すると、そのような冷静な判断はできないのだろう。


 「弁護士資格を失うのが怖くなって逃げた」とのことであるが、逃げたばっかりに弁護士資格を失うことになるとは皮肉というしかない。



2010年08月18日(水) ブレーキ痕から速度を推定する数式について

 日経(H22.8.19)夕刊で、軽乗用車で歩行者をはねて死なせたとして、自動車運転過失致死罪に問われた事件で、津地裁は運転者に無罪を言い渡したと報じていた。


 裁判では、被告の走行スピードが問題になったが、裁判所は「車両のブレーキ痕から直ちに(時速60キロの制限速度を超え)約80キロ出ていたとは断定できない」と判断した。


 ある数式を使って、ブレーキ痕から自動車の速度を推定することはよくあり、司法研修所でも教わった。


 しかし、ABSではタイヤがロックされないから、その数式がそのまま妥当しないと言われている。


 また、その数式には摩擦係数を使うが、その数字はそれほど厳密ではない。


 すちなわ、ブレーキ痕から速度を推定する数式は便利であるが、それを盲信することは危険であり、注意が必要であると思う。


 冒頭の記事の裁判でも、その数式だけに頼らず、総合的に証拠を判断したのであろう。



2010年08月17日(火) 親の虐待と民法改正

 日経(H22.8.17)夕刊で、親の虐待問題を取り上げていたが、その中で、法務省が「親権」の制限に向けた民法の改正を検討していると書いていた。


 具体的には、一定期間、親権を停止したり、親権の一部を構成する「監護権」を停止することなどを家庭裁判所の裁定で認める制度を考えているようである。


 そのような親権の制限についての整備は必要である。


 ただ、そもそも民法の表現にも問題があるように思う。


 民法818条は「子は父母の親権に服する」としているが、「服する」という表現からは、監護・教育を「子どもの権利」と見るという意識は窺われない。


 そのような規定の仕方が親の虐待の原因になっているわけではないにしても、全体として子どもの権利性を意識した民法改正をすべきであろうと思う。



2010年08月16日(月) ビザの簡略化で不法滞在者は増加?

 日経(H22.8.16)14面コラム「傍聴席」で、中国市場戦略研究所代表者が、中国人観光客を呼び込むため、ビザ申請手続きの簡略化を訴えていた。


 ビザ発給の簡略化に対しては、不法滞在者が増加の懸念が指摘される。


 確かに、何年か前であればその懸念は当たっていたと思う。


 かつて東京地裁の刑事法廷には、毎日のように中国人による犯罪が裁かれていた。


 それだけ日本は稼げる国と思われていたから、外国からきて犯罪を行う者も多かったのである。


 しかし、中国人による犯罪は減っている。


 歌舞伎町で働いている中国人の人に聞くと、「悪い連中は中国に帰ってしまった」と言っていた。


 中国が急速に豊かになっており、もはや法律に反してまで日本に滞在しようと思う中国人が減っているのであろう。


 不法滞在者の懸念は急速に減ってきており、それよりも中国人観光客をいかに呼ぶかを優先すべき時代になっていると思う。



2010年08月12日(木) 15歳未満の脳死臓器移植の体制が不十分

 日経(H22.8.12)社会面で、15歳未満の脳死臓器移植の体制が十分整備できていないという記事が載っていた。


 臓器移植法が改正されて15歳未満からの臓器移植も可能になったが、虐待を受けた小児からの臓器移植を防止するための対策が必要とされている。

 
 その防止体制の整備が不十分なことが大きな原因である。


 しかし、虐待をした大人が、臓器移植の提供を申し出るのだろうか。


 もちろん、かかる対策は必要でないという意味ではない。


 ただ、角を矯めて牛を殺すことになってはいけないと思うのだが。


 従前、15歳未満の脳死臓器移植が認められていなかったため、アメリカで臓器移植手術を受ける運動に少しだけ協力したことがあるが、臓器移植を待っている子どもたちは大勢いる。


 拙速になってはいけないが、体制不備のために臓器移植の機会を失うことはより問題であろうと思う。

 8月13日から15日までお休みします。



2010年08月11日(水) 浜田幸一容疑者を背任容疑で逮捕

 日経(H22.8.11)社会面で、元衆院議員・浜田幸一容疑者が2億円の背任容疑で逮捕されたと報じていた。


 記事によれば、逮捕容疑の具体的内容は次のとおりである。

 産廃処理会社から2億円の融資を受ける際、担保として株券を差し入れた。

 他人名義の株券を自分の名義に変更するとして一時返還を受けた。

 その株券を売却して、売却益約2億2千万円を得、産廃処理会社に同額の損害を与えた。


 これだけ読むと詐欺罪が成立するようにも思える。


 ただ、詐欺罪は、株券の返還を受ける時点で騙す意図が必要であるから、その立証が難しいと考えたのだろう。


 詐欺罪の成立は難しいとしても、浜田容疑者は、一時預かった株券を勝手に処分したのであるから、横領罪が成立するようにも思える。


 背任と横領との区別は難しく、学説上も争いがある。


 ただ、実務上は、横領と背任の両方が問題になった場合、先に横領罪の成否を検討し、横領罪が成立する場合には、背任罪の成否はとくに検討せず、横領罪で起訴するのが普通である。


 そして、記事を読む限りでは浜田容疑者には横領罪が成立するように思えるのに、なぜ背任容疑で逮捕したのだろうか。



2010年08月10日(火) 高収入の誇大広告で業務停止命令

 日経(H22.8.10)夕刊、軽ワゴン車を購入し会費を払えば、運送業務をあっせんし、高収入が得られるとする誇大広告を出したとして、「東京商事」に6カ月間の業務停止を命じたと報じていた。


 このような運送あっせん業に関するトラブルは多い。


 中には、加入するときに会社を設立させて、会社名義で契約させることによって、特定商取引法の適用を免れるという悪質な業者もいる。


 リストラされた人、退職した人などは、「高収入の謳い文句に安易に飛びつかないように、慎重に検討した方がよいと思う。



2010年08月09日(月) 不同意堕胎で、医師に執行猶予の判決

 今日は新聞休刊日。日経ネットニュース(H22.8.9)で、交際相手に子宮収縮剤などを投与して流産させたとして、不同意堕胎罪に問われた事件で、東京地裁は、医師である被告に懲役3年、執行猶予5年)を言い渡したと報じていた。


 検察官の求刑は懲役5年であり、実刑を求めるものだった。


 医師が専門知識を生かしてそのような犯罪を行ったという意味では悪質であり、実刑になってもおかしくない事件である。


 執行猶予になったのは、被告人が医師免許を返上すると言ったことが大きかったのではないだろうか。


 もちろん、このようなとき、裁判で言うだけで、執行猶予になってみれば約束を守らないことは多い。


 ただ、この被告人は有名になってしまったから、実際、医師を続けることは難しいと思う。


 裁判所は、そのような社会的制裁も考慮したのだろう。



2010年08月06日(金) 逮捕手続きが違法として、釈放

 日経(H22.8.6)社会面で、殺人容疑で逮捕された男性について、奈良地裁は「逮捕手続きが違法」として、勾留請求を却下する決定をしたと報じていた。


 警察は、この男性を7日間ホテルに宿泊させ、捜査員が外出しないよう部屋の外で監視していたそうである。


 7日間は長いが、このようなこと自体はレアケースではない。


 以前担当した事件では、やはりホテルに宿泊させられ、外で捜査員が監視していたので、その容疑者はホテルの窓から逃げたということがあった。


 そんなところから逃げる方もどうかと思うが、言いかえれば、実質的には監禁状態であったといえる。


 ただ、一応は容疑者の同意を得ているという形を取っているので、その後の逮捕が違法とまではならないことが多い。


 その意味で、奈良地裁が「逮捕手続きが違法」と判断したのは珍しいことだと思う。



2010年08月05日(木) 「死亡した人が不法侵入?」

 日経(H22.8.5)夕刊で、家庭裁判所で失踪宣告を受け、死亡したとみなされていた男性が、盗み目的で花店に侵入したとして、警視庁に現行犯逮捕されていたという記事が載っていた。


 「死亡した人が不法侵入?」という興味で記事になったのだろう。


 ただ、民法の規定上はあり得ることである。


 失踪宣告というのは、生死不明などの者の法律関係を便宜上確定させるための制度にすぎないからである。


 それゆえ、失踪宣告を受けた者が住居不法侵入をしても不思議ではない。


 最近話題になっている高齢者の居住不明問題では、行政担当者の話として、「所在不明の家族に失踪宣告の申し立てを勧める」と書いていた。


 しかし、わざわざ失踪宣告手続きをするのは、失踪した人が死亡したとみなすことによって、その人の財産を相続するなどの積極的目的があるからである。


 高齢者が所在不明でも家族に失踪宣告手続きをするメリットがない場合には、失踪宣告の申し立てを促すことは難しいであろう。



2010年08月04日(水) コンピューターウィルスの作成に器物損害罪?

 日経(H22.8.4)夕刊で、パソコン内のファイルを勝手に書き換えるコンピューターウイルスを作った会社員を警視庁は器物損壊容疑で逮捕したと報じていた。

 このウィルスに感染すると、ハードディスクが使えなくなるそうで、その点をとらえて器物損壊罪を適用したようである。

 そうはいっても、コンピューターウィルスの作成に対し、器物損害罪を適用というのは違和感がある。

 このウィルスに感染すると常にハードディスクが使用不能になるのか、ウィルス作成者は器物損壊の認識まであったのか、など起訴までのハードルはいろいろあるように思われる。



2010年08月03日(火) 最高裁の上告棄却決定に対する異議申し立て

 日経(H22.8.3)社会面で、民主党の後藤衆院議員陣営の出納責任者で、公選法違反に問われた会社員の弁護人が、最高裁の上告棄却決定に対し異議申し立てをしない方針を明らかにしたという記事が載っていた。


 日本の刑事司法は三審制であるから、最高裁が上告棄却の決定をすれば、さらなる審理は受けられない。


 ただ、上告審の判決であってもまったく誤りがないとはいえないので、再審査の機会を与えるために異議申し立てが認められている。


 これを「訂正の判決」というが、ほとんど認められていない。


 先の記事でも、異議を申し立ててもそれが認められないことを自覚し、「異議申し立てはしない」としたのであろう。



2010年08月02日(月) 昼休みに電話番を命じられた

 日経(H22.8.2)16面のコラム「リーガル3分間ゼミ」で、昼休みに電話番を命じられたという事例を取り扱っていた。


 小さい会社では、ありがちな事例である。


 法律事務所でも、弁護士1人、事務員1人の事務所では、明示的に電話番を命じなくても、何となく事務員は昼はお弁当にし、電話が鳴ったら出ているところは少なくないと思う。


 もっとも、たまたま電話を取っただけでは、「労働」とはいえないだろう。

 
 しかし、明示的に電話番を命じれば、従業員を拘束しているから「労働」となる。


 例えば、昼食の際に自席で食べざるを得ない場合とか、従業員が1人しかいない場合には、拘束されている度合いが強く、「労働」とされる可能性が高い。


 経営者としては従業員の好意に甘えずに、昼は留守番電話にするなどして、きちんと休息を与えたほうがよいだろう。


 < 過去  INDEX  未来 >


ご意見等はこちらに
土居総合法律事務所のホームページ


My追加
-->