今日の日経を題材に法律問題をコメント

2006年02月28日(火) 30分程度の法律相談では限度がある

 日経(H18.2.28)37面で、弁護士会で行っている法律相談の記事が載っていた。


 私も、弁護士会で法律相談を行うことはある。


 しかし、30分程度の法律相談では、一般的な法律知識のアドバイス程度しかできないことが多い。


 具体的に紛争になっているケースでは、相談者の言い分だけで、他に十分な資料がないことが普通であり、的確な判断はなかなかできない。


 そのため、断定的な言い方をせず、腰の引けたアドバイスになりがちである。


 やはり、継続的に相談できる弁護士が身近にいることが望ましいと思う。(「敷居を高くしているのは弁護士だろう」と言われそうであるが)



2006年02月27日(月) ミスした社員に対し会社が損害賠償請求

 日経(H18.2.27)19面で、社員のミスで会社に損害を与えた場合に、その社員が責任を負うかというコラムが載っていた。


 ミスした社員が責任を負うかどうかは、社員の過失の程度と、その事故に関する会社側の責任の程度によって決まる。

 したがって、どの程度社員が責任を負うかは一般化できない。


 ただ、感覚的には、社員の責任は25%程度かなあという印象がある。


 もっとも、社員の失敗でいちいち損害賠償請求をすると社員が萎縮してしまうと考えるせいか、多くの企業では、社員がミスしても損害賠償請求はしない。

 中には、社長が「若いころの失敗談」として、会社に大損害を与えたことを得々と語ることさえある。


 それゆえ、社員に対して損害賠償請求しているケースでは、その社員の普段の業務態度が非常に悪く、「今後こそ許せない」として訴えることが多いようである。



2006年02月24日(金) ネット競売が犯罪の動機付けになっている

 日経(H18.2.24)社会面に、「サイバー犯罪急増」という記事が載っていた。


 記事によれば、とくにネット競売詐欺事件が急増しているようである。


 先日、ネット競売に関する相談を受けた。

 そのとき、ネット競売によって、犯罪の機会が飛躍的に増大しているという印象を受けた。


 例えば、詐欺罪では、かつては騙される対象はほとんどは身近な人であった。
 
 しかし、ネット詐欺となると、まったく見ず知らずの人が騙す対象となる。


 また、窃盗罪でも、盗んだものをどう処分するかは犯罪者にとって重要な問題であったが、ネットオークションを利用すれば、簡単に売却できる。


 ネット競売の存在は、それ自体が悪いというわけではないが、犯罪の動機付けになっているようである。



2006年02月23日(木) 却下承知の保釈請求の意味

 日経(H18.2.23)1面トップで、堀江ライブドア前社長らを再逮捕と報じていた。


 堀江前社長の弁護人は、2月16日ころに保釈請求していたのだが、2月17日、保釈請求は却下されている。


 再逮捕が予定されていたのだから、保釈請求が却下されるのはやむを得ないことであり、弁護人も却下されることは百も承知だったと思う。


 では、なぜ保釈請求したかというと、現時点で弁護人としてやれることはその程度しかないからである。


 弁護人としてはつらいところである。



2006年02月22日(水) ライブドア事件で、被害者弁護団結成

 日経H18.2.22)社会面に、ライブドアの株価が下落し損害を受けた個人株主らの被害を救済するため、弁護士約40人が「ライブドア株主被害弁護団」を結成したと報じていた。

 被害者を募って、早ければ9月にも同社などを相手取り損害賠償請求訴訟を起こす方針とのことである。


 9月というのは、少し遅すぎる気もする。


 ただ、刑事事件での証拠を損害賠償請求訴訟で使うことを予定しているために、それくらいの時期になるだろう。



2006年02月21日(火) オウム事件の松本被告に、訴訟能力ありとの鑑定

 日経(H18.2.21)社会面トップで、オウム事件の松本被告に訴訟能力ありとの鑑定がなされ、東京高裁に提出されたと報じていた。


 その記事の中で、弁護団は、訴訟能力を認める鑑定が出た場合には弁護人を辞任する可能性を示唆していると書いていた。


 しかし、辞任というのは無責任ではないかと思う。


 辞任すると国選弁護人が就くしかないだろうが、そう簡単になり手がいるとは思えない。

 また、選任されても、膨大な記録を読み、公判に備えるために相当な時間を要するだろう。


 それゆえ、裁判の遅延は避けられない。


 そもそも、被告人と意思疎通できなければ控訴趣意書は書けないのだろうか。


 もちろん、控訴趣意書作成のために、被告人の意思を確認することは重要である。


 しかし、被告人が接見しても一言も発しない状態であれば、自らの判断で控訴趣意書を作成するしかない。


 弁護人は、被告人の単なる代理人ではなく、「被告人の意思に係わりなく、独立して訴訟行為をすることができる」とされている。

 それゆえ、被告人が一言も発しない状態においては、自らの判断で控訴趣意書を作成することは許されるだろう。


 むしろ、控訴趣意書を作成しないことによって控訴棄却となることの方が、弁護人の義務に反することになるのではないかと思う。



2006年02月20日(月) 国政調査権は「伝家の宝刀」であってはいけない

 日経(H18.2.20)2面に、ライブドアの堀江被告が、武部自民党幹事長の二男にメールで3000万円の振込みを指示したとされている問題の続報をしていた。


 この問題では、民主党が、武部幹事長の二男の口座の入金記録を、国政調査権を行使して調べるよと迫っている。

 これに対し、自民党の片山参議院幹事長が「国政調査権は伝家の宝刀であり、安易な国政調査権の発動は権威にかかわる」と述べたそうである。


 「伝家の宝刀」はなかなか抜かない。

 しかし、国政調査権は国会に認められた基本的な権能であり、自ら制限すべきものではない。


 「伝家の宝刀」という表現は、国会の役割の認識が不足しているのではないか。


 ところで、堀江被告が3000万円の振込みを指示したというメールの真偽であるが、内容は自然であり、しかも具体的である。

 したがって、本当のようにも思える。


 しかし、堀江被告が、まったく別の案件で誰かに振込みを指示したメールがあり、その名前だけを武部幹事長の二男に改変したとしても、メールの内容に不自然さはないだろう。


 したがって、問題になっているメールの内容だけで判断することは難しい。



2006年02月16日(木) 公判で偽証

 日経(H18.2.16)社会面に、東京地検は、公判で虚偽証言した男を偽証罪で起訴したと報じていた。


 この男に対し、被告人弁護士が証人尋問し、そこで偽証されたわけである。


 弁護士は知らなかったと思うが、何となく気まずい思いをしているだろうなあと同情してしまう。



2006年02月15日(水) 公判前整理手続き

 日経(H18.2.15)社会面に、横浜の高校生の列に乗用車が突っ込み死傷した事故の初公判が開かれたという記事が載っていた。

 その中で、審理迅速化のために公判前整理手続きを適用したと報じていた。


 3年後に裁判員制度が始まるが、裁判員に余計に負担を掛けないためには審理の迅速化が必要である。

 そのため、公判前に争点を絞ることによって審理の迅速化をはかることにしたものである。


 しかし、公判前整理手続き及びその後の審理は、集中的に行われるため、組織で動いている検察官と異なり、個人営業の弁護士に負担になることは間違いない。


 そうはいっても、全体の利益のためにやむを得ないというべきか。
(但し、運用において、公判前整理手続きをしたために被告人の不利益になるということは避けるべきであろう)



2006年02月14日(火) 違約金条項は定めておくべき

 日経(H18.2.14)4面に、住友信託銀行と旧UFJとの訴訟について、解説記事として、「M&A契約の不備が露呈された」と書いていた。


 しかし、契約というのは双方の合意で締結されるものであるから、一方の都合よく契約内容を定められるわけではない。

 その意味では、必ずしも「不備」と責めることはできない面もある。


 ただ、M&A契約において、合意が破棄された場合の違約金だけは定めておくべきだろう。


 というのは、M&A交渉の合意が破棄された場合、少なくともM&Aが成立すると信頼して費消した費用(信頼利益といわれている)は賠償請求できるはずであるが、その算定は難しい。

 そのため、損害額がいくらになるかについて争いになる可能性が高いからである。

 すなわち、予め違約金を定めておくことによて、紛争の予防を図るわけである。


 また、他に有利な合併相手が現れてM&A交渉を破棄したいと思ったとき、いくら違約金を支払えばよいのかが分かれば、判断の基準となり得るというメリットもあるからである。




2006年02月13日(月) 「何ら主張、立証していない」として、住友信託銀行の請求を棄却

 今日は新聞休刊日であるが、日経ネットニュース(H18.2.13)で、住友信託銀行が旧UFJ側に1000億円の損害賠償を求めた事件の判決を報じていた。

 それによると、住友信託銀行の請求を棄却したとのことである。


 確かに、合併契約を締結していないのだから、住友信託銀行が主張する『統合が実現されていれば得られた利益』まで請求できないのは当然と思う。


 ただ、朝日ネットによると、東京地裁は、独占交渉義務違反を認めつつ、独占交渉義務違反と相当な因果関係が認められる損害について住信側は何ら主張、立証していないとして、請求を棄却したそうである。


 このような大きな事件で、「何ら主張、立証していない」という理由で敗訴ということになると、弁護団は弁護過誤を問われかねないのではないか。



2006年02月10日(金) 横浜事件で、横浜地裁は免訴判決を言い渡す

 日経(H18.2.10)1面に、横浜事件で、横浜地裁は免訴判決を言い渡したと報じていた。


 判決理由は、「治安維持法の廃止や大赦により公訴権が消滅しており、有罪無罪の裁判をすることは許されない」ということである。


 確かに、最高裁判例には、免訴事由がある時には、犯罪事実の認否を判断せずに免訴を言い渡すべきとしたものがある。


 しかし、法が予定している免訴というのは、裁判の進行中に大赦があった場合などを想定しているのであって、犯罪事実がすでに認定している場合までは予定していないのではないか。


 そして、横浜事件では、すでに犯罪事実があったことが認定しているのであり、法が予定している免訴判決を言い渡す場面ではないといえるのではないだろうか。


 そもそも、再審制度というのは、確定判決に対し、事実認定の不当を救済するためのものである。


 そうであるのに、事実認定の不当性を判断せずに、そこから逃げて免訴判決を言い渡すことは、再審制度の趣旨に反することになるのではないだろうか。



2006年02月09日(木) グレーゾーンをなくすべきである

 日経(H18.2.9)4面に、金融庁が、利息制限法所定の金利を上回る金利を取るための要件として、超過金利分の返済が遅れても残額の一括返済を求めないことを契約書に明記させることにしたと報じていた。


 これは、期限の利益喪失約款による支払いは任意の支払いとはいえないという最高裁判決を受けたものである。


 しかし、このように最高裁まで争われる原因は、利息制限法で認める利息と、貸金法で認める利息とにグレーゾーンがあるからである。

 
 金融庁は、最高裁判決のたびに手直しを繰り返すよりも、このようなグレーゾーンをなくす処置を講じるべきであろう。



2006年02月08日(水) 買戻特約の契約は、売買としては無効

 日経H18.2.8)社会面に、売却した不動産を一定期間内に買い戻せる特約をめぐり、最高裁が、不動産を借金の担保にした融資であり、売買契約は無効との初判断を示したと報じていた。


 売買契約といっても、契約の実態をみると、それは違法な高金利の貸し金である。


 したがって、最高裁の判断は当然であると思う。


 しかるに、1、2審は、売買契約は有効と判断していたことが不可解である。



2006年02月07日(火) 内部統制システムの整備

 日経(H18.2.7)1面で、今年5月施行予定の会社法の法務省令の内容を報じていた。


 記事では買収防止策に開示義務を課した点を大きく取り上げていた。


 ただ、実務的には、すべての大会社に、不正防止の内部統制システムの整備が義務付けられ、株主に開示することが決められたことについての関心が大きいようである。


 内部統制システムの整備ということは、会社にとっては大変な負担であろう。


 ただ、法令で決まったから、やむを得ずやるという考えではなく、内部統制システムの整備を、経営戦略の一環として積極的に位置づけた方がよいと思う。



2006年02月06日(月) 「ライブドア株で損をした人、損害賠償請求をしましょう」という呼びかけ

 日経(H18.2.6)16面で、ライブドア事件に関連して、国内法律事務所が、「ライブドア株で損をした人、損害賠償請求をしましょう」と呼びかけているという記事が載っていた。


 しかも、この事件に関する弁護士費用のメニューとして、着手金5万円という以外に、着手金ゼロというのもある。


 周知の通り、アメリカでは集団訴訟が多い。

 その理由は、クラスアクションという集団訴訟制度が認められていること大きいが、それだけでなく、着手金ゼロで訴訟する弁護士が多いからでもあるといわれている。


 不特定多数の人に、着手金ゼロで訴訟を呼びかける法律事務所の出現をみると、日本もいよいよアメリカのような訴訟社会が近づいてきたなあと思う(その法律事務所を非難しているわけではない−念のため−)。



2006年02月03日(金) 証券取引等監視委員会は厳しい監視の目を

 日経(H18.2.3)1面の「ネットと文明」というコラムで、次のようなことを書いていた。

 証券取引で、株価を上げる目的で大量の虚偽の買い注文(「見せ玉」という)をするデイトレーダーに、「お客様の取引はインサイダー取引にあたる恐れがある」と警告を受けることが増えている。

 それでも、デイトレーダーたちは、「新興市場ではよくあること」「自分も被害に遭ったことがあると」と意に介さない。


 しかし、こういった「見せ玉」は相場操縦が目的であり、それは明らかに証券取引法違反である。


 実際、先日も、証券会社が客の「見せ玉」を放置していたとして処分を受けている。


 このような「見せ玉」をテクニックの一つと考え、騙し騙されるような世界には、一般の人たちは安心して近づけない。


 高齢の人が、証券取引による投資を避け、安全確実な郵便局にお金を預けようとするのは当然である。


 一般の人が安心して取引ができるよう、証券取引等監視委は厳しく監視の目を光らせるべきであると思う。



2006年02月02日(木) インサイダー取引で2件目の課徴金勧告

 日経(H18.2.2)4面に、証券取引等監視委が、インサイダー取引の課徴金制度導入後、2件目となる課徴金支払いを勧告したと報じていた。


 違反者は、民事再生申請前に株式を約207万円で売却し、その後、株価は35%下落したそうである。

 したがって、インサイダー取引により、72万4500円の損害を免れたことになる。


 これに対し、課徴金は72万円とのことである。


 そうすると、ばれて元々ということになりかねない。


 課徴金制度は行政上の措置であり、罰金ではないため、課徴金の額は、不当な経済的利得を基準とするとされている。


 そのため、上記のように、インサイダー取引がばれても損が生じないかのような事態が生じてしまう。


 それゆえ、課徴金制度を実効性あるものとするためには、インサイダー取引を見逃さず、迅速に処理することが必要であると思う。



2006年02月01日(水) インクカートリッジの詰替品で、知財高裁がキャノンに逆転勝訴判決

 日経(H18.2.1)1面で、インクカートリッジの詰替え品について、知財高裁は、キャノンに逆転勝訴判決を言い渡したと報じていた。

 そして、2面の社説では、「知財優先したキャノン判決」「国際競争が激しい分野での知的財産保護の重要性を確認したもの」という評価していた。


 日経としては、「知財戦略と司法」という観点から判決を分析したいのであろう。


 しかし、この判決で重要なのはそのことではないと思う。


 従来の訴訟が、再生利用が「修理」であれば特許侵害とならないということを前提に、「修理」か否かが争点になっていた。


 これに対し、この判決は、そのドグマから脱却し、特許侵害に当たる場合を類型化したところに意義があると思う。


 それゆえ、再生利用できる場合とできない場合とについて一定の指針を与えたという意味でこの判決を評価したい。


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