今日の日経を題材に法律問題をコメント

2003年01月31日(金) 銀行税訴訟で、二審も東京都が敗訴

 日経(H15.1.31付)1面で、銀行税訴訟で、二審でも東京都が敗訴したと報じていた。



 一審判決では、東京都に損害賠償まで命じた。

 つまり、そのような違法な条例をつくったことが不法行為に当たるというのである。

 これは少し無茶な判決であると思う。


 さすがに、二審は、損害賠償までは認めなかった。

 そればかりか、大手銀行だけに税金を課すことについても、地方自治体の裁量の範囲内であり、違法ではないとした。


 こうなると、ほとんど東京都の勝訴である。


 ところが、二審は、東京都の課した外形標準税が、それまでの「所得」を基準とした法人事業税に比べて著しく不均衡になるという理由で、当該条例が違法であるとした。


 判決を前提にすると、銀行に課す税金をもう少し安くしていれば、条例は違法ではないということになりそうである。

 東京都としては、「なんだか変なところで負けたなあ」と思ったのではないだろうか。


 それにしても、聞くところによると、一審では弁護団もきちんとした形ではないなど、東京都の裁判対策は、どろなわ式だったようである。


 外形標準課税の条例を制定するときも、違法性のチェックを行政担当者だけで行い、弁護士などによるチェックが十分なされていなかったのではないだろうか。

 東京都のような大組織であっても、法務対策は意外と手薄なんだなあと思った。



2003年01月30日(木) 被害者続出『先物取引企業』が頼る有名『人権派弁護士』」

 日経(H15.1.30付)広告欄に週刊新潮の広告が載っており、その見出しに、「被害者続出『先物取引企業』が頼る有名『人権派弁護士』」というのがあった。

 最近、反響があるからなのか、週刊新潮は司法関係の記事が多い。


 その記事の中で、「人権派弁護士」は、その「先物取引企業」は問題がないといっているが、とんでもない。

 私が相談を受けた人は、わずか3か月の間に4000万円をつぎ込ませられている。


 しかも、そのうち、「先物取引企業」が手数料として2000万円を取っているのである。


 とすると、2000万円の投資額で、2000万円以上の利益を上げなければならないことになる。

 それは不可能なことである。


 この人は、60歳前後の一人暮らしの女性であり、公務員生活で長年貯めた貯金をすべて使い果たさせられた。

 そのような人に対し、利益を上げることが不可能な取引に引き込むこと自体が問題であるし、それによって「先物取引企業」は2000万円もの利益を得ているのである。

 そのような企業の代理人になることを非難することはできないにしても、「問題がない」と言い切るのはいかがなものかと思う。



2003年01月29日(水) 占有屋排除のため、短期賃借権制度を廃止

 日経(H15.1.29付)1面に、不動産の流動化を図るために、民法に規定がある短期賃貸借を廃止すると報じていた。


 本来であれば、抵当権が設定された後に借りた場合には、抵当権が実行されて競売になれば、住むことはできないのが原則である。

 しかし、借りるほうとしては、いちいち登記簿謄本をとって抵当権がついているかどうかなんて確認しないし(ほとんど抵当権はついているが)、ましてや、その建物が競売になる恐れがあるかどうかまで考えない。

 借りた期間は住むことができると考えるのが普通だろう。


 そこで、抵当権者と賃借権者の利益の調和として、3年以内の短期賃貸借に限って、抵当権が実行されて競売になっても、契約満了までは借り続けることができることにした。

 これが短期賃貸借制度である。

 このように理念はすばらしかったのだが、実際は、占有屋に悪用されることになってしまった。


 すばらしい理念と、それを悪用する人たち。

 いつの時代にもあることである。



2003年01月28日(火) 東京地裁で、ゴルフ会員権ローンの支払いを免除する判決

 日経(H15.1.28付)・社会面に、会員権を買ったゴルフ場が破綻した場合に、ローンの支払いを免除する判決がなされたと報じていた。


記 事によると、ゴルフ場開発が破綻したため、会員権を買った人は、ローンの支払い義務だけが残ったようであり、それについて、借主に支払い義務があるかどうかが問題になったものである。


 このような事案の場合、融資した金融機関側は、「ゴルフ場が開発できなかったことと、融資とは関係ない。金融機関は融資しただけである。」「ゴルフ場開発が破綻することは、金融機関は知りようがなかった。」という論理を使う。


 これに対し、判決は、「金融機関は、ゴルフ場破綻を予見できた。」として、金融機関の主張を認めなかったのである。


 これは、貸す側にも、予見義務を課し、ゴルフ場の破綻の可能性がある場合には、借り手に対し、その旨を説明する義務を課したものと思われる。

 すなわち、いわゆる貸し手責任を認めたものであり(但し、判決では、「貸し手責任」という言葉は使っていないはずであるが)、今後大いに議論される判決になると思う。



2003年01月27日(月) やみ金融業者に対し、警察が摘発に乗り出す

 日経(H15.1.27付)・社会面に、やみ金融事件の記事が載っていた。

 記事によれば、逮捕された暴力団組員が、傘下の金融業者10店−20店に経営指導していたそうである。


 最近、やみ金業者が逮捕されたという報道は多い。

 ようやく警察も動き出したという感じである。


 少し前までは、やみ金でひどい取立てを受けた人が警察に相談に行っても、「借りたんだから、返さないといけないんじゃないの。」という態度で、まったく当てにならなかった。


 しかし、やみ金業者の中には、勝手に口座に振り込んできたうえで、会社に電話してきて、「貸したから、払え。」というところまである。

 こうなると、「借りたんだから、返さないといけない。」とはいえない。


 どうして、やみ金業者が、口座や会社の電話を知っているかといえば、以前、やみ金から借りたことがある人は、そのデータを他の業者に流されるからである。



 実は、やみ金に借りる人は、以前、破産をしたことがあるとか、借入れが多すぎるとかという理由で、通常の消費者金融では貸してくれない人たちである。


 そのような状態なのに、やみ金から借りるのだから、借りるほうにも問題があるのは確かである。


 以前、やみ金から借りたというので、その債務整理を受任したところ、私の事務所から出たその足で、やみ金業者に金を借りに行ったという人がいた。


 借りては弁護士に依頼し、また借りては弁護士に依頼してと、弁護士事務所を転々とする人もいる。


 そういった人たちは確かに問題であるが、かといって、その人たちを攻めても仕方ない。

 それ以上に悪質なのが、やみ金業者だからである。

 間違っても、これぐらいであれば返せると思って、借りないほうがいい。

 借金があっという間に膨らみ、どうにもならなくなってしまう。



2003年01月24日(金) ネット証券取引では、不正取引の防止が重要課題である

 日経(H15.1.24付)・4面で、「ネット証券 信用取引に傾斜」という見出しの記事があり、その脇に、「不正取引の防止策課題に」というサブ記事みたいなものがあった。

 その記事では、ネットでの証券取引は、他人名義での売買や、株価操作の温床になりやすく、そういった不正取引に厳正に対処する必要があると指摘していた。


 他人名義を使ってネット取引するのは、不正取引の確信犯であろう。

 そういった確信犯だけでなく、ネット証券取引では、証券会社の営業担当者を通さないため、普通の人でも非常に軽い気持ちで株価操作をしてしまいがちである。


 ネット証券会社は、そのような安易な気持ちで不公正取引にあたる行為をしている人たちに対し、それが犯罪にあたるということを十分周知させる必要があるだろう。

 ネット証券取引が不正の温床と思われ、ネット証券取引は怖いという印象を与えれば、結局は一般投資家が証券投資から遠ざかるようになり、証券会社だけでなく、経済全体にとっても不幸なことだからである。



2003年01月23日(木) サービス残業させている会社はご注意

 日経(H15.1.23付)・社説で、「許せぬサービス残業の横行」という見出しで、サービス残業の実態と述べたうえで、使用者側は是正に動くべきであると提言していた。

 
 サービス残業について、弁護団を組んで、残業手当の支払いを求める裁判はいくつか起こされている。


 先日は、消費者金融の武富士が1億6000万円の残業代を請求する裁判を起こされている。

 武富士は高収益で有名であるが、その収益の源泉がサービス残業であるとすれば、ひどい話である。



 以前には、居酒屋全国チェーン会社がサービス残業を請求する裁判を起こされて、数億円を支払っている。



 裁判を起こされている会社を見ると、転職が多いところのように思われる。

 その会社の従業員であるうちは裁判を起こすことは躊躇われるからであろう。


 ということで、過剰にサービス残業させている会社で、しかも従業員の転職が多いところは、注意したほうがいいのではないだろうか。
 



2003年01月22日(水) ゴルフ場の再生に中間法人を活用?

 日経(H15.1.22付)・11面に、ゴルフ場再生のために、中間法人を活用させるという記事が載っていた。

 中間法人とは、同窓会や親睦会など、従来は法人格が認められなかった団体に法人格を与えるものである。

 それらの団体は、これまで法人格がなかったため、その団体に資産があっても、その団体の代表者の名義するしかなかった。

 それが、そのような資産について、その団体名義にすることができるようになった(代表者の名義だと、代表者に債務がある場合、本来団体の財産であるのに、それを差し押さえられる可能性があった)。



 記事によれば、この中間法人制度を活用して、ゴルフ会員が中間法人を設立して、会員主導の再建を図ろうというもののようである。


 しかし、記事からは、中間法人を活用するメリットがよく分からない。



 記事には、「クラブ組織を中間法人にすれば、預託金やゴルフ場の土地建物などに抵当権を設定できる」と書いている。

 しかし、抵当権を設定できる資産は、不動産など法律で限定されており、預託金に抵当権を設定することはできない。



 あるいは、預託金返還請求権の担保として、土地建物に抵当権を設定できるということを、間違って書いたのかも知れない。

 そうだとしても、本来であれば預託金返還請求権は個人の権利であるから、中間法人が抵当権を設定するためには、事前に各会員から預託金返還請求権の譲渡を受けておくなどの手当が必要となろう。


 また記事では、「会員は、ゴルフ場経営者の債権者からこれらの資産(預託金やゴルフ場の土地建物)を突然差し押さえられたりする不安がなくなる。」と書いている。

 しかし、預託金は、ゴルフ場の建築資金としてすでに使っており、預金としてはないのだから、差し押さえようがない。

 また、ゴルフ場の土地建物は、ゴルフ場経営会社の名義になっていれば、突然差し押さえられる可能性は常にある。


 ということで、記事は間違っているのではないかと思う。


 その点はともかく、会員の中間法人を設立しても、ゴルフ場再生のために活用できる余地は少ないのではないだろうか。

 というのは、ゴルフ場再生の鍵は、ゴルフ場経営によって収益を上げることに尽きるからである。


 そして、現在、収益をあげられていないゴルフ場において、今後、収益を上げることは極めて難しいのではないかと思う。


 というのは、ゴルフ場では、収益が上がらないといって、企業のリストラのように、土地を切り売りすることはできない。

 また、メーカーのように海外に移転して製造価格を下げるということもできないからである。


結 局、その土地で収益をあげるしかない。


 ところが、長引く不況のため、遠隔地や、料金の高いゴルフ場は敬遠されており、収益をあげる見通しは立たないのだろうか。



 したがって、中間法人を設立してそれでゴルフ場の再生を図るといっても限界がある。


 とすると、ゴルフ会員権なんか買わないのが一番いいという結論になりそうである。



2003年01月21日(火) 週刊朝日の記事で、110万円の賠償命令

 日経(H15.1.21付)社会面に、週刊朝日の記事で名誉を傷つけられたとして、「鍵の救急車」が訴えていた事件で、朝日新聞に対し、110万円の損害賠償を認める判決がなされたと報じていた。

 他の新聞によれば、週刊朝日の記事では「鍵の救急車」という具体的会社名は書いていなかったそうである。


 最近、裁判所は、名誉毀損の成立を認める傾向にあるようである。

 以前、私が、週刊誌の記事で名誉を毀損されたという相談を受けたとき、その週刊誌では、相談者の氏名までは書いていなかった。

 そのため、裁判しても勝つのは難しいのではないかと答えたことがある。


 しかし、いまの裁判の傾向からすると、現時点で裁判していれば勝っていたかもしれない。


 ただ、今回の判決のように賠償額が110万円というのでは、裁判の労力、弁護士費用などを考えると、訴える側の負担は大きく、裁判を起こすことは躊躇せざるを得ないだろう。



2003年01月20日(月) 特許、著作権が信託業務の対象になる

 日経(H15.1.20付)1面トップに、特許、著作権が信託業務の対象として解禁されると報じていた。

 これまで信託法が対象としていたのは土地など限られた財産であった。

 それを法改正によって、特許、著作権といった知的財産権を信託の対象とすることができ、これによってこれらの権利を有効活用し、資金調達のための手段が多様になるということである。


 信託法、信託業法は大正11年に制定された古い法律で、弁護士でもなじみが少ない。


 使い勝手もよくない。

 それは、信託業務が、信託銀行など特定の会社しか行えず、かつ、信託業務の対象が、土地など限られていることが原因であろう。


 しかし、法改正によって使い勝手をよくすれば、古い法律が生き返り、資金調達の有力な手段になるのではないだろうか。



 もっとも、新聞は、特許、著作権の信託を解禁することにより「使われていない特許などの利用促進にもつながる」と書いていたが、それは言い過ぎではないか。


 見込みがあると思うから、出資者は資金を出すのであって、使われもしない特許をいくら持っていても資金調達はできないだろう。


 最も重要なことは、業績があがる特許を開発することであることはいうまでもないことである。



2003年01月17日(金) 住基データを盗まれた事件で、盗まれた会社に町が損害賠償請求を検討

 日経(H15.1.17付)社会面に、住民基本台帳データを盗まれた事件で、盗まれたコンピューター処理会社に対し、岩代町が損害賠償請求を検討していると報じていた。

記事によれば、契約書に損害賠償の項目があることから、職員の休日出勤などにかかった費用について、損害賠償請求するとのことである。


 しかし、契約書に損害賠償の項目がなくても、町は、コンピューター会社に、損害賠償請求はできる。

 契約書に書いていればそれが優先されるが、書いてない場合は、請求ができないのではなく、民法が適用されるからである。

 その意味で、「契約書に損壊賠償の項目があるから」という書き方は、その項目がなければ請求できないとも読めるから、やや不正確である。


 その点ともかく、問題は損害額の算定である。


 本件では、住民基本台帳データが盗まれたが、悪用されたわけではない。

 そうすると、記事にあるように、職員の休日出勤にかかった費用などが損害になるのだろうが、それはあまり大した額にならないだろう。


 したがって、かりにコンピューター会社が請求を拒否した場合は、裁判することになるが、弁護士費用のほうが高くついてしまうだろう。


 もっとも、それほど高額の請求額にならないだろうから、コンピューター会社は支払うと思うが・・。



 ところで、かりに住民基本台帳データを悪用された場合であったとしても、その損害額の算定は難しい。


 コンピューターに関連する問題や、知的所有権に関する問題については、損害額の算定が難しい場合があり、訴訟するときも、請求額をいくらにするかで頭を悩ませることが多い。





2003年01月16日(木) 「超大物弁護士」が悪質な訴訟ビジネス?

日経(H15.1.16付)広告欄に週刊新潮の広告が載っており、その見出しに、「ゴルフ場を泣かせる『超大物弁護士』の悪質な訴訟ビジネス」というのがあった。

「あの弁護士かな。」と思って買ってみたら、やはり「あの弁護士」だった。


週刊新潮の記事によると、その「超大物弁護士」は、ゴルフ場会社の顧問弁護士をしていながら、自分の息子や仲間にゴルフ会員権を買わせて、預託金返還請求訴訟を起こしているということである。


 この記事が本当だとすれば問題である。

 会社の顧問弁護士をしながら、その会社を訴えていることになるのだから。



 ちなみに、その「超大物弁護士」のいい評判はあまり聞かない。

 私も一度、交渉事件で相手方になったことがあるが、何だか偉そうな感じで、誠実さが感じられなかった。


 弁護士に重要な資質の一つとして、「誠実さ」があると思う。


 少なくとも、誠実な弁護士であれば、週刊誌にこのようなことは書かれないだろう。



2003年01月15日(水) 年金は、財産分与の対象になる?

 日経(H15.1.15付)・1面に、厚生年金が夫婦折半することが可能になるという記事が載っていた。


 現在、厚生年金は、加入者本人しか受け取れないため、通常は、夫が受け取ることになる。

 したがって、離婚した場合は、妻は年金をもらえない。


 以前、妻の側から離婚の相談を受けたとき、「離婚すると奥さんには年金は支給されませんよ。」というと、「それじゃ、離婚しません。いまのままで我慢します。」と答えた。

 このような事態は、夫婦いずれにとっても不幸なことである。

 
 この方は、離婚を諦めたが、諦めずに離婚をし、夫に対し年金受給分を財産分与として請求するということはよくなされる。


 裁判所の基準は明確ではないが、年金の支給が確定している場合は財産分与の対象となるが、未確定な部分は、死亡などの不確定な要素があるから対象とならないとするのが一般的である。


 これは、離婚する当事者にとっては分かりにくい基準であろう。


 したがって、最初から、サラリーマンの妻も年金を支払い、その代わり個別の受給権を明確にしたほうが分かりやすいと思う。
 



2003年01月14日(火) 東京拘置所が新築され、近代的に。

 日経(H15.1.14付)社会面トップに、東京拘置所の新築の記事が載っていた。

 新しい建物では、収容者は建物の外に出ることがなくなり、そのため、高い塀も撤去されるそうである。


 記事では、弁護士のコメントとして、無機質であるとの批判も紹介していた。


 確かに、長期裁判となっている被告人や、死刑囚の場合は、拘置所にいる期間は長いから問題かも知れない。

 死刑囚は、死刑にされることが刑の執行であり、それまでは未決囚の扱いになるから、刑務所ではなく拘置所にいるのである。


 しかし、一般的には拘置所に勾留される期間は、裁判から刑務所に行くまでの間であり、通常は数か月であろう。

 したがって、建物内だけの生活とはいえ、運動場もあることだし、そのことによるストレスは少ないのではないかと思う。

 塀のない拘置所という意味では画期的であるし、それほど批判することでもないのではないだろうか。



 それにしても、拘置所の面会所に行くと、いろんな人がいる。

 まず、やくざ屋さんが目に付く。

 外人も多い。

 それから、女性で子どもを連れている姿もある。

 子どもは無邪気に遊んでいるが、どんな大人になるのだろうかと思うと、少し気になってしまう。



2003年01月10日(金) 防犯対策としては、ITに頼るべきではない

 日経(H15.1.10付)35面に、「IT住宅で外出安心」という見出しで、家に侵入すると侵入者をカメラで撮影し、携帯電話に知らせることができる住宅の記事が載っていた。


 一見便利そうだが、防犯という意味では、効果は薄いと思う。


 大事なことは、侵入させないことである。

そして、そのためには犯罪者の心理を考えるべきである。


 盗む方は、その家でなければならない必然性はない。

 ターゲットはいっぱいあるのだから、少しでも面倒だと思えば、そこには侵入しないのである。


 以前、ピッキング窃盗の刑事事件を担当したことがあるが、窃盗犯は、すべてある大手メーカの鍵のみを狙っていた。

 現在、ピッキング窃盗は沈静化しているが、今後も、窃盗犯が狙うとすると大手メーカの鍵を狙うだろう。その方が効率がいいからである。

 とすると、鍵は、マイナーなメーカにしておくべきだろう。


 また、そのときの窃盗犯は、セコムのステッカーのあるところは避けたと言っていた。

 そうすると、セキュリティー会社でも、マイナーな会社は避けるべきということになる。

 有名でないセキュリティー会社のステッカーを貼っていても、抑止効果はないからである。

 
 要するに、防犯対策としては、ITに頼るのではなく、窃盗犯に、「面倒だな」と思わせる工夫が大事ということになる。 



2003年01月09日(木) あおぞら銀行が顧客情報を漏洩−民法に漏洩禁止規定があるか−

 日経(H15.1.9付)1面に、あおぞら銀行が、サーベラスに顧客情報を不正に漏らしたと報じていた。

その記事の中で、「民法に基づけば、銀行は顧客情報の秘密を保持しなければならない。」と書いていた。


しかし、民法には銀行の秘密保持義務を定めた規定はない。

そもそも、民法はもっとも基本的な民事法規であるから、その中に、銀行という一定の業種を規制する規定があるはずがない。


今回のように、銀行が、顧客のプライバシーを漏洩した場合には、信義則上、銀行に秘密保持義務があるとして、債務不履行責任(民法415条)を問うか、プライバシー侵害であるとして、不法行為責任(民法709条)を問うことになろう。

 その意味では、民法上の責任が問題になることは間違いないが、「民法に基づけば」という表現は誤りであろう。



2003年01月08日(水) コニカとミノルタが合併

 日経(H15.1.8付)1面に、コニカとミノルタが経営統合し、その際、アメリカ型企業統治形態である委員会等設置会社とすると報じていた。


 先日、日本では委員会等設置による企業統治は根付かないだろうと書いたが、その第一号が出たわけである(正式に「第一号」かどうかは知らないが。)。


統合にあたり、従来のやり方を一新するという意味では、従来の監査役制度を廃止し、委員会等設置方式に採用する効果はあるのだろう。

 しかし、委員会等設置会社では、社外取締役に大きな権限を与えることになるのだから、他の企業がその方式を積極的に採用するとは思えない。

 コニカとミノルタの統合会社も、いずれ元の監査役方式に戻るのではないだろうか。



2003年01月07日(火) サザビーと、サザビーズが訴訟で和解

 日経(H15.1.7付)14面に、飲食店などを手がけるサザビーと、オークションで有名なサザビーズとが、名称使用について和解が成立したと報じていた。


 これは、世界的オークション会社であるサザビーズが、サザビーに対し、名称使用禁止の訴えを起こしたことによるものである。

 記事によれば、両者の事業内容が異なることについて一般的に周知されていることから、サザビーが、引き続き名称を使用できることになったようである。


 その報道どおりとすれば、サザビーの勝訴的和解である。


 確かに、いまやサザビーは、スターバックスの大株主であるなど、どういう会社であるかは一般的に周知されている。


 しかし、ずいぶん以前であるが、私は、サザビーが家具などを扱っているとき、「あれ、オークションで有名なサザビーズって、こんな事業もやっているのか。」と思ったことがある。

 つまり、その当時は、両者の事業内容が異なることについて一般的に周知されていたとはいえなかったのである。


 ところが、サザビーズは、迅速に訴訟提起することをせずに放置していた。


 その間に、サザビーは、キハチ、アニエスb、スターバックスなどを要する大会社に成長してしまった。

 そして、サザビーズは、サザビーという名称使用を認めざるを得なくなったのである。


 つまり、とくに知的所有権について顕著なのだが、自分の権利を守るのに熱心でないと被る不利益は大きいのである。



2003年01月06日(月) アメリカ型企業統治を採用する企業は、現時点ではゼロ

 日経(H15.1.6付)1面トップに、商法改正で可能になったアメリカ型企業統治について、大企業の6割が採用に否定的であり、今後も監査役制度を維持すると報じていた。


 これまで取締役の監査制度としては、監査役があった。

 しかし、今後は、大企業では、監査役制度を廃止し、社外取締役が過半数を占める委員会が、取締役の報酬や、取締役の候補を決めることができるようになった。


 ところが、記事によると、現時点で、監査役制度を廃止して、委員会を設置する予定の会社はないのだそうである。



 この委員会設置制度は、委員会の権限が極めて強いことが特色である。

 委員会の決定を、取締役会が覆すことができないからである。

 そうすると、企業としては(というよりも、社長としては)、その制度の採用には躊躇するだろう。


 他方、この委員会設置制度が、狙いどおり監査機能を果たすことができるかという疑問がある。

 というのは、社外取締役といっても、縁故者や会社の取引先であってもよく、社外取締役の独立性の確保の上で、抜け穴があるからである。


 このようないろいろな理由から、委員会設置制度は、結局採用されることなく、理念だけで終わるような気がする。



2003年01月03日(金) 法律相談の拡充と、第一東京弁護士会

 日経(H15.1.3付)11面に、司法改革実行元年という特集記事が載っていた。

 その中で、司法改革の一環として、司法へのアクセスを改善するため、法律相談を拡充し、弁護士を身近にするとあった。


 私も、それは大賛成である。


 法律相談をより一層拡充し、希望すればいつでも弁護士を紹介できるようになれば、「法律で困っても、弁護士をどこで頼んでいいのか分からない。」という状況を少しでも改善できるようと思う。


 ところが、現在、東京霞ヶ関の弁護士会会館で受け付けている法律相談は、2つに分かれている。

 最初の受付は一つなのだが、その後、東京弁護士会と第二東京弁護士会が行っている法律相談と、第一東京弁護士会が行っている法律相談に自動的に振り分けられるのである。


 これは、相談する人にとっては非常にわかりにくいことである。

 「どっちがいいのだろう。」とまで思ってしまう。


 このように二つに分かれてのは、東京には、弁護士会が3つあるからである。

 もっとも、私は、弁護士会が3つあること自体は悪いこととは思わない。

 いくつかの弁護士会が競い合って、市民によりよいサービスをしたりすることはいいことだと思う。


 ただ、法律相談まで独自に運営する必要はないであろう。3会合同で運営して、相談者の窓口としては1本化すべきである。


 こういった考えは、ごく常識的な考え方であり、圧倒的多数の意見だと思っていた。


 実際、東京弁護士会と第二東京弁護士会は、すでに合同で法律相談を運営しており、第一東京弁護士会に対しても、合同での法律相談を持ちかけている。


 ところが、第一東京弁護士会は合同での運営に反対している。

 第一東京弁護士会の法律相談委員会の8人の委員のうち、3会合同運営に賛成なのはたった1人なのだそうである。


 これには、びっくりした。


 窓口が2つあることのメリットは相談者にはまったくない。

 いったい、どちらに向いて仕事をしているのだろうかと思う。


 ちなみに、私は、その第一東京弁護士会に所属している。


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