泡とガラス玉


2005年12月31日(土)      ココデ


神様聞いてください



長い道を歩くのは一人です
誰もがたった一人
なぜならそれはその人の道だから
ここは淡いピンクやブルーの丘が広がり
背の高い丸い木が遠くの景色に見えています
私はとても小さいけれど世界中の空気を胸いっぱいに吸い込んで歩いています
夜になり星が瞬けば私は立ち止まって見上げます
そして何かを探し求めます
朝になり果物から朝露が滴る時
欠伸をしながら今日を迎えるのです
私はこんなことをあなたに伝えながらも本当はとても心細いのです
それでもあの遠くにうっすらと見える一番高い丘には
歩き終わった私が裸足をぶらつかせながら
果てまで続く長い道を見渡す
最後の席があるのでしょう?


神様聞いてください



本当はわからないのです
大人なのに子供です
誰もがそうですか
そうだとしても私は乗り越えられますか
子供のままがよかったなんて普段は言わないけれど
ですが時々とても淋しいのです
心細くて、長い道の途中で声を張り上げて泣いています
世界は果てしない
だから塞ぎきれない淋しさを感じるのです
その感じをあなたは知っていますか


その大きな手の中で
眠らせてください
ゆりかごの白い光の夢をみるでしょう
そしてきっと朝には
また歩き出せるのです


何度も繰り返し生きてゆくでしょう
だけど忘れたくないのです
それが淋しさや心細さを引き連れてきたとしても

それは私が人間だからです
矛盾していても
繰り返すのです
道理にかなう生き方など
私はしたためしがない
それがこの道の運命です



2005年12月30日(金)      タズネビト


あの人は どこへ行ってしまったのだろう
くすんだ色の服を着て
懐かしい光の匂いがしていた

今の私は
人通りの多い街を歩いていると
益々孤独になってゆく

着飾った身体と嘘の心から抜け出て
透明になった姿のまま
あの人を探せば
見つかるんだろうか


幼い頃時々感じた
長いアスファルトの路が雨で濡れていて
暗い灰色の雲から光が差し込むまぶしい日だった
一軒家の影が強く並び
まるで違う世界のようだった
吹く風は冷たく暖かかった
そしてとてもいい匂いを運んできた
草原のような
お日様のような
黄色い傘が水溜りを滑って
飛沫が舞った


今どうして
涙がでてきたのか
考えてみる


どこかにいて
全て知っている
金色の麦畑 三日月の先 夜の僅かな光
雲を貫通する光の矢 暖かい土の匂い
畑に育つ緑色の木
どこかにいるはずで
でもとてもうるさい日常には存在せず


尋ね人がいるのです
夢の中で探し続けます
一人になったとき耳をすまします



2005年12月23日(金)      メリー


真夜中にふつふつと湧き上がる悲しみの泡。
ただこうして一人でその泡の数を数えている。
君が居ないだけなのに。



2005年12月14日(水)      ヤサシサ


嬉しいが流れて流れて
風に乗って
花が
フワリ
揺れた



2005年12月10日(土)      ユートピア


海辺の村の夢を見ました
私は桟橋の上で光る小魚を見ていました
日焼けした幼馴染の少年がやってきて
隣に腰掛け
私たちは足をぶらぶらさせながら
太陽の下で笑いました

この桟橋の向こうに広がる果てしない海と空を目の前にして
世界はなんて穏やかで美しいのだろうと思ったものでした

おじいさんは釣りをしながら眠り
おばあさんは白髪交じりの黒髪をきゅっと丸め赤い服を着て元気良く歩き
三毛猫は白い塀を軽やかに歩いていました
小さな少年は深く透明な海を泳ぎ回り
少し大きな子供たちは大人と一緒に釣りに出かけてゆきます。

平和な村の生活音と波の音は
音楽のように幸せで
私たちは世界を見渡しながら聞き入りました

海の匂い、波の音、太陽の光と世界の可能性を感じながら
私は瞼を開き現実に帰りました。
ここは、とても、かわいそうな、狭い世界なのです。
目が覚めるだけで、胸がつまって溜息をつかなければいけないほどに。

だけど
こうして毎日を乗り越えられるのは
この胸の、頭の、体の、血液の、記憶の深いどこかに
輝く海が広がっているからなのです



2005年12月09日(金)      オモイデ


丸くなったその角に
コンビニと小さな赤いポストがある
青空と広い畑に挟まれた
アスファルトの道を
そのまま真っ直ぐ歩く
低いミラー、共同の畑、どんぐりの木、
遠い山並み、昔の一軒家、洗濯竿
小鳥と猫がいる庭…

この道を
一人で歩いていると
遠いエンジンの音や、生活の音が聞こえてきて
陽だまりの中で
眠たくなる

突き当りを右に曲がる
白いアパートが見えてくる。
アーチを潜ってすぐのドア。

私は、兎の小さなぬいぐるみと、風邪薬と、
駅前のスーパーで買った葡萄が入った
ビニール袋をもう一度確かめて

ベルを鳴らした


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