泡とガラス玉


2004年11月28日(日)      ネガイゴト


白い鳩の夢をみるように
安堵の眠りにつけるように
願いを込めよう

君が曇らないように
僕はきっと努力するから



2004年11月27日(土)      ニチジョウ


白い飛行機がゆっくり飛んでいます


突然、2機の白い戦闘機が爆音と共に、空気を切り裂く矢のように並んで飛んでいきました



やがて静けさが戻り
遠い笑い声や、誰かのくしゃみや、落ち葉を掃く箒や、優しいエンジン音が聞こえました


僕は桃色の花びらが足元に降る藍色のベンチに座り
瞼に光を感じながら
今この瞬間に人生が終わるとしても
穏やかでいられるような気がしました



2004年11月26日(金)      アオトクロ


夢をみた。


青に。白い綿。
その少しだけ後ろに霞む形。
彼は悠然と羽ばたいた。


泣きたかった。

混雑した駅のホームから見上げるととても小さくなったように思える。
ビルとビルに区切られた水色に小さな黒。
窓の向こうで風に乗る。
何かに躓き立ち止まるといつも思い出すのは。


空と鳥。



2004年11月23日(火)      トリガー


唇に。冷えた指先に。足元に。
花がこぼれる
嬉々とする

笑う月。
道路の向こう側には
一人でいつまでも見上げる昔の私がいた
彼女は、落ちていた石を
満月に向かって思い切り投げた。

世界に裏切られる
それでも今、彼らは半分しかない
今なら勝てる
あの憎たらしい月。

私も今、その小石を拾いあげる。
隣には君がいた。



2004年11月22日(月)      トビラ


知らないところで
知らないことが起きて
知らないふりをして
心を閉ざす
気づかれないうちに
また開いて風が入る

そんな風に繰りかえし
扉はやがて草臥れて壊れてしまう



2004年11月17日(水)      スドオリ


人魂のようにひらりと舞い
てん。てん。としてその森へ消え
遠い昔と繋ぐ
また星になった一つには
次の時代を繋ぐ



2004年11月15日(月)      オトシモノ


道沿いに忘れもの。
私はそれを拾うべきか迷って立ち止まった。
雨が。水溜りが。うるさくて泣きたかったのだけど
今はそれを忘れて。迷っているところ。
指先で触れると
その忘れ物はとても懐かしい匂いがする。

涙だけが頬に暖かくて。雨が降っていることをまた思い出した。
後ろの足跡には雨水がたまっていく。



2004年11月13日(土)      ソゾロアメ


遠い、目をしていました。
透明な、声をしていました。
それは夕方のことでした。
月は青と紫の間に浮かび
白く雲が散る少し肌寒い日でした。
黒い鳥の群れが海を渡った瞬間。

彼は大きく空を見上げました。
私はその姿を見ていて
いつまでも焼きついて離れず
宇宙の時間に刻まれてしまった彼を思い出し
永遠を思うのです。

きっとその時、風が吹いていた。
雨は柔らかに降り続け、
私はそれを肌に感じながら生き続けるのかも知れない。



2004年11月10日(水)      タイセツナヒト


西の街から来た人は複雑な線路に乗って
私のいる街に来た。

無気力だった私は5月の新聞からはらりと床に落ちたチラシを手にして
あまり行きもしない隣の隣の隣の街へ電車に乗ってでかけた。
決められた白い部屋の椅子には誰も居なかった。

ドアを開ける。一人だけ言葉が変だとか。思ったりして。
お昼の食堂で手にしてた紅茶。も。年上だって驚いた顔も。
すごく心を冷たくして生きていた時期でもあったことも。

そういうことを
11月の真ん中に立って思い出し、安堵に寄りかかって眠くなったのです。



2004年11月08日(月)      ソノリユウ


ここに立っていても何も聞こえない。
どこかで彼女が彼のことを言う。
彼は彼女と交わり泡のように浮かんで、沈む。

拭いたって拭いたって
視界は濁っていく。

当たらない的
見えない心
響かない言葉

行きたくなったら行ってもいい
私は退屈だって自分でも痛いほど分かっているから



2004年11月07日(日)      ニンゲン


幸福の一点を居場所にすると
結局ぼやけたときに迷う

隣に座っている時の
空気と温度以外の情報や予測を排除して欲しい。



2004年11月04日(木)      シュクフク


青い透明な空に、淡いピンクと、白の花びらが舞散った。
それは、尽きることがなく
野原はやがて雪の色に覆われた。
私達はこんな奇跡に笑っていたけれど
それでも心は晴れないし
君は遠い目をしたままだった。

私は誰と居ても孤独だった



2004年11月03日(水)      スレチガウトキ


声と息が止まる。
瞬間、青空の黒い鳥を思い浮かべる。

そして諦めてしまう。



2004年11月02日(火)      ハナビラ


夜風に、雲が散る
僕たちは足もとの赤と黄色の夜をもてあそびながら
最初の口づけをした



2004年11月01日(月)      ハジマリ


言葉の裏を読もうとする力

自分を不幸にするだけに過ぎない

愛しいほど、増す力

信じる力を忘れないように。


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