新宿や池袋などの繁華街で、会合の場所として大変いい役割を果たしてくれていた談話室「滝沢」が閉店してから、そこを格好の場所として使っていた私たちは、代わる場所探しに苦労している。 喫茶店の一角を陣取って、安いお金で、長時間連句を楽しもうというのだから、店にとっては、営業の足しにはならないが、「滝沢」は、そんな人たちにも、こころよく、応じてくれる、ホスピタリティの溢れた空間だった。 月に一度の10数人の会合のために、店では、「予約席」の札を置いて、場所をとっておいてくれた。 従業員も、とても感じがよく、さりげないサービス精神を心得ていて、真面目な女性達が中心のグループにとっては、お茶とサンドイッチくらいの支出で、使えることを、有り難いと思っていたのである。 4月から、別の場所を探すことになり、たまたまインターネットで、お茶の水すずらん通りに、「F」という店を見つけ、下見を兼ねて、3月終わりに行ってみた。 出版社の地下にあるその喫茶店は、周りが、本屋や、大学が近いこともあり、私たちの目的には、雰囲気が合っているように思えた。 しかし、どうも店にとっては、あまり、歓迎する客ではなかったようである。 その店は、昼食時に、サービスメニューとして、1000円前後のランチ、あとは、飲み物やケーキ、ソフトドリンク程度の物を用意してあり、夕方になると、バーに模様替えして、仕事帰りのサラリーマン達の、酒場に変身するらしかった。 私たちは、昼前の11時に集まり、ランチメニューを頼み、午後3時頃にもう一度、飲み物か何か摂って、5時前には、退散すると言うことで、利用させて貰うことになった。 3月に初めて行き、4月も利用させて貰い、そして、今日もそこに集まった。 ところが、会合が終わり、「来月も・・・」という申し出に対し、やんわりと断られてしまったのである。 「他のお客さんから、苦情があって・・」とか、「場所が狭いので、長時間塞がれるとちょっと・・」などと言っていたが、要するに、歓迎しないと言うことであろう。 それ程混んでもいないし、迷惑になるようなこともないのにと思ったが、黙って受けることにした。 代わりの店は、すぐに見つけ、来月は、そこに集まることになっている。 そこが、果たして、そんなおおらかなところかどうかは、わからないが・・。 「F」という店は、本屋の地下と言うことをうたい、文化的な雰囲気を売り物にしているので、ちょっと期待していた。 しかし、昔と違い、あまりお金を使わず、長い時間、居座る客は、困るのである。 それだけ、世知辛くなったと言うことであろう。 学生時代、珈琲一杯で、勉強部屋代わりに長時間いても、イヤな顔をしなかった新宿の「風月堂」や、先頃の「滝沢」。 もう、そんな店は、望めそうにない。
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