だれかの日記


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2008年12月09日(火)    

らぶぷろぐらむ (改行以外、原文まま)






 ショーウィンドウで、素敵な人形を見付けた。値札がなく、壊れたように、同じ曲を何度も繰り返す人形。しかし、とてもきれいな声だった。毎年クリスマスになると、この人形が店頭に飾られる。この店の名物の一つだ。いつもは特に気にも止めず、素通りするのだが、ふと、無表情で歌っていた人形が、こちらに向かって笑いかけた(気がした)。それとほぼ同時に僕がとった行動とは…


「パパ、あれ買って」


 パパは、『あれとは…?』と不思議そうにこちらを見て、僕の指先にある方に目をやった。その後、にっこり笑って、店の中に入っていくパパの姿を小走りに追い掛け、にこやかに笑うパパを見上げた。
 店員に用件を告げると、目をまん丸くして、かなり驚いたようにこちらを睨み付けたが、たくさんの紙の束を出すと、満面な笑顔を見せた。

 僕には、パパと店員さんの会話の内容はあまりわからなかったが、あの人形を手に入れられたことだけはわかった。その証拠に、今まで無心に歌っていた人形に歌を止めさせ、ショーウィンドウから取り出し、僕らの目の前に連れてきた。人形も一瞬驚いた顔を見せたが、またいつもの無表情に戻った。

 無言で僕を見つめる人形に、笑いかける。

「僕が君を買ったんだ。今日から君は僕のものだよ」

反応のない人形に、僕はもう一度笑いかけた。 

 不思議な空気を持っていて、その歌声一つで人々を魅了してきた人形は、僕にとっての最高のクリスマスプレゼントとなった。今まで貰ったモノの中でも、多分、最高の贈り物。






今日から君は僕のもの。
 僕だけの…お人形さんだよ……。




 22世紀後半、地球。世界にロボットと呼ばれるものが出回り、人間と区別できない位の精巧なものが増えた。基本的にはオーダーメイドだが、無駄な機能(個性がないものなど)しかないものは市販されているものも多い。

 人間とロボットの見比べかたは、背中の製造元と個体の名前が書かれていることを見るか、どうしても脱がせられない場合は手の甲の製造主マークを見るか、だ。

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