a Day in Our Life


2002年06月27日(木) スリーピング・ビューティー。(サクツカ+ニノアイ)

 
 「おはようございまー…あれっ」

 ガチャリと軽い金属音を立てて中へ入ってきた櫻井は、部屋の中を一瞥して小首を傾げた。
 「俺、3番目?」
 結構早めに出てきたんだけどなあ、と呟く櫻井を尻目にたまたま早く着いちゃったんだよ、と小型ゲーム機から目を離した二宮が笑った。その言葉を受けながらゆっくりと部屋の中に歩み出て、肩にかけていた鞄を下ろして机に置く。片耳だけかかったままのヘッドフォンを外して鞄の中に仕舞った。そうして椅子を引き、二宮の向かい側に腰をかける。
 「で?ソレもたまたま早く来ちゃったクチ?」
 それ、と目線だけで指し示されたその先。机に突っ伏して眠る相葉の姿。
 「ああ、彼は俺と一緒だったんですけどね」
 「泊まりだったんだ?」
 「そう」
 心持ち斜めを向いた格好の相葉の顔半分が、櫻井の座った場所から伺い見える。目を閉じて小さな寝息をたてるだけの相葉は、普段の騒がしい雰囲気が影を潜めて、それがかえってひどく年相応に見えた。
 「でも、むしろこの人かなり寝てたんですよ。俺はほぼ完徹でゲームやっちゃったんだけど、延々寝てた」
 あんだけ寝てまだ寝るかなあ?と苦笑いを浮べる二宮に、完徹したのにまだゲームやってるおまえも似たり寄ったりじゃん、と笑った。それもそうだけど、と二宮がまた笑う。
 二宮と相葉は付き合いが長いこともあって、昔ほどじゃないにしろ、互いの家を行き来する機会が多いようだった。櫻井はどちらの家にも泊まりに行ったことがなかったし、そう頻繁に家に誰かを呼ぶ習慣もなかったので(そこまで親密な関係の誰かがいなかったからという言い方も出来る)、誰かがいる部屋で一人寝たりゲームをしたりする感覚がよく分からないと思う。そういうのも時間や経験の積み重ねなのかな、とそこまで考えて、ふとそんなことをつい最近考えたのを思い出した。ごくごく身近な人の、近頃の行動を思い出す。
 「相葉ちゃんて、いつもそうなの?」
 「?なにが」
 そう小さくもない話し声にもまるで目を覚ます気配のない相葉の寝顔に、もう一度目を向けた。その寝顔に重なる、別の誰かの安らかな表情。
 「おまえの家に泊まりに来て、さっさと寝ちゃうわけ?」
 確かに相葉はよく眠る印象ではあった。寝起きもそれほどよくはない。そういえばハワイでもひとり、いつまでもぼんやりした顔をしてたっけ。自分より先に起こされたくせに、最後まで眠そうだった相葉の様子を思い出した。
 「ああまあ、割とね」
 それがどうかした?とでも言うように二宮が櫻井を見遣る。その視線がなんとなく居心地悪くて、いや、よくそんな話してるしさ、と必要以上に普通を装って言い訳をした。そうすることで余計不自然になっているのは自覚済みだった。二宮はそういうところに聡いから、そんなのはすっかり看破されているのだけれど。
 「…いや、目の前で寝られるのはどうなのかな、と思ってさ」
 諦めたように心持ち早口に、櫻井が呟く。その呟きを受けて、塚本くん?と簡潔に二宮が問うた。
 「…ん、まあね」
 いくらかバツが悪そうに、更に早口になって櫻井が答える。
 「なーんか最近、気がついたら寝ててさ。そんなに俺といてつまんないのかと不安になったりならなかったりするわけよ」
 こと恋愛に関して(そうじゃなくても傾向的に)小心になる自分を櫻井は自覚していた。傷つくのは怖いし、それが好きな人なら尚更。ありのままを晒すと同時に、そうすることをひどく恐れる自分もいる。好きな人をただ好きで、それだけなのにふと、怖いと思うときがある。まるで自分が自分でなくなっていくような。普段の櫻井翔は、いくらなんでもそんな小さな――些細なと言ってもいいかも知れないことで考えすぎるほどに考えたりはしない筈だった。その些細な事柄を気に留めて、それでも正すことは出来なくて、結局諦めたように内側に丸め込んでしまう。やや気にしやすい傾向はあったけれど、それでも。こんなにも気にしてしまうのは、それが誰でもない誰かだから。
 二宮は黙って櫻井を見たままで、櫻井はやっぱり落ち着かなくて、軽く身じろぎをした。誤魔化すようにふと思っただけなんだけど、と口の中でもごもごと不明瞭に呟く。
 「俺は、違うと思うけどなあ」
 しばらくの間を置いて、ゆっくりと二宮が口を開いた。波が引くのをじっと待つように、自分から出してしまったこの話題を早く終らせてしまいたいと思っていた櫻井は、反射的にえっ?と言葉を返す。そうじゃないと思うよ。噛んで含めるみたいにことさらゆっくりと、もう一度二宮は言った。
 「俺はむしろ、信用されてるんだと思うけどね」
 言った二宮の目線が一瞬だけ相葉の方を向いて、思わず櫻井もその視線を追い掛ける。依然目を覚ますでもなく、相葉は静かに眠ったままだった。
 「好きな人の側だから、安心して眠れるんだよ」
 無言の告白みたいなもんだよ。愛されてるなあって俺なんかは思うけどね。
 照れもなくそう言われて、言われた櫻井の方が恥ずかしい気持ちになった。おまえそれはなに、のろけてるの?からかうみたいに言うと、まあ、そうとも言うけど、と柔らかく笑われた。だから相葉ちゃんが俺といるとき寝すぎるくらいによく眠るのを、俺はむしろ嬉しいと思うけどね。
 「それにほら、好きな人の寝顔って見てて癒されるでしょ」
 だから翔くんも素直に癒されてみたら。二宮の提案に櫻井は曖昧に頷いた。
 「発想の転換かあ…」
 ぽつりと呟く。
 「ニノはデリケートそうに見えて、案外超ポジティブなんだなあ」
 「んん?どうだろそれは、相葉さんのことだからかもよ」
 普段あまり多くを語らない二宮が、こと相葉に関する話題にだけ、正直であるのを潔いと思った。好きだと思う気持ちを偽らない。ストレートは松本の専売特許であるのに、普段似ても似つかないふたりが少しだけ重なる。それは相葉もきっとそうだし、あまり想像つかないけど大野もいざとなるとそうかも知れない。自分だけだ。自分だけ、保身や体裁を考えて、縮こまる傾向がある。臆病なのかな、と櫻井は思った。
 「おまえらには敵わない気がするよ」
 わざと複数形にして言った言葉を、二宮は、そう?と言って流した。
 ニノに恋愛をレクチャーして貰う日が来るとは夢にも思わなかった。自嘲気味に櫻井は笑う。
 「だって俺の方が、片思い歴も両思い歴も長いもん。先輩だからね」
 俺が何年このひとを好きだと思ってるの。二宮も笑う。
 「う〜ん…もう食べれないよ〜…」
 そこに絶妙なタイミングで相葉の寝言ともつかない呟きが聞こえて。
 「…なんの夢?」
 「さあ…フルコースでも食べてるんじゃない?」
 思わず顔を見合わせたふたりは、改めてもう一度笑った。





■■■1ヶ月前のワードが発掘されました。

書きかけたはいいものの、ちょっと打っちゃー止まり、でぜんぜん書けなかったニノと翔くんのお話です。なにをそんなに行き詰まってたのか、よく分からないんですけど、放置されていた続きを打ちながら、やっぱりまた行き詰まったりして。あたしも嵐にはまって以降、少しは各キャラのイメージもそこそこ固まりつつはあるんですが、恋愛観になるとまた、むつかしいですね。翔くんは堅実派であるので、恋愛に対してもスタイルを気にしたり、少しの保身もありそうかなというイメージがありまして。振られる前に振ったりしそうなイメージ(笑)。反対に二宮さんは、まあそれは私が対・相葉ちゃんを想定してしまうからなんでしょうが、潔い恋愛をしそうかなと…にのあいの二宮さんはとてもストレートで男らしいと思っております。相葉ちゃん相手に照れてもしょうがないしね(笑)。むしろ相葉ちゃんを照れさせる勢いで。だって二宮さんの相葉ちゃんを見る目って、それだけで言葉がいらない気がしますよ。表情豊かなあの目線が私は本当に好きで。そういうことを表現したかったんですけどね。だからこのお話のカテゴリはサクツカではなくにのあいなんだと思います。微妙だなあ…。

あ。ちなみに題材は当時のタカシメールに最近寝るのが趣味、みたいなことを書いてあったので。
タカシメール、いつでもどこでもネタにしてしまってごめんなさい(笑)。

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