| 2003年09月03日(水) |
『飲むか飲まれるか』(ヒナ総受け・亮ヒナ編) |
お酒はほどほどに。 酒を飲んでものまれるな。
世間一般ではそう言われてる。 けれど、「酔ったもん勝ち」なんて言葉もあったりして。 お酒って奥が深い(爆)
飲むか、飲まれるか。
さて、この方の場合はどっち?
『パターンA・錦戸亮』
見渡す限りの屍。 響き渡るいびき。 あきらかにおかしい笑い声。
いつものことなのでいい加減慣れていたが、毎度繰り返される惨状に錦戸は「学習能力ってもんはないのか、この人達は」とあきれた。 舞台の初日も無事終了し、「始まったぜがんばろう会」なんて名目で疲れきった身体を無理やり引っ張られてやってきたのは、やはりというか予想通りというか、いわゆる居酒屋で。 この中で飲めるメンバーといえば3人しかいないはずなのに、何故居酒屋なんてセレクトされるのかまったくもって謎だが。しかし始まってみると飲める飲めないなんて関係なし。きょうび、高校生でも酒の味がわかる現実。 最初は未成年だからと遠慮していたやつらも、未成年だからと止めていた成人3人 も、気付けば入り乱れてる状態。 右を向けば、BOYSは帰されたのに真鳥と1つ違いの桐山が何故か残されて、そして何故か真っ赤な顔してテーブルと仲良くなっていたり。 その隣では今回の舞台でボケに目覚めつつある室が丸直伝のボケをし、それに同じく顔が赤い浜中が辛口ツッコミをしてたり。 そして目の前では、完璧悪いお兄さん状態になってる横山が、興味津々な内に酒を勧め、結果いつも以上にハイテンションになってる状態の内とアホやと笑ってる横山がいたりして。
アイドルの集まりていうより、大学のサークルの飲み会状態や
実際サークルの飲み会など経験したことはないけれど。世間一般によく言われるような飲み会風景にぴったり当てはまる面々を見たら、そう思わずにはいられなかった。
まあ、違う点っていえば、女の子がいないことか。
よくある、狙ってる女の子の取り合いなんてこと。野郎だらけのこの場所ではないだろうと、普通に考えれば納得するだろう。 けれど、思った瞬間にその考えはすぐに取り消された。
「亮〜!!飲んでるか!」
少しかすれた声が、錦戸のすぐ耳元で聞こえてきたからだった。
ああ、そういえば、こんな人がおったわ。
顔を赤らめながら、ニコニコと自分を見つめてくる視線を受け止めながら。深いため息をついた。 すると視線の主である村上が錦戸のため息を敏感に感じ取り「亮ちゃん!ノリ悪いで!」と言いながら空いたグラスに酒を注ぎ込む。 その後ろのほうでは、村上を取られた渋谷が膨れっツラで睨んみながら傍らの大倉に絡んでるのが見えた。 またその後ろのほうでは、思いっきり睨んでる横山と「あ〜亮ちゃんずるい!」と叫ぶ内。 それはまるで、さっき自分が思っていた「狙ってる子を一人占めしてる野郎と周りの図」そのもので。じゃあこの酔っ払いのおっちゃんがみんなのアイドルなん?それはさすがにおかしいっちゅうかありえへんアホらしと即座に打ち消した。 頭を冷やそうと目の前のコップに手を伸ばして口元に運ぶ。今まで自分が飲んでいたものと違う味が流れてきたが、さっき注いでいたから村上が手に持っている焼酎なのだろうと構わずに流しこむ。 比較的飲みやすいものだったらしく、物足りないながらも一気に飲み干した。
それをじいっと見ていた村上が、錦戸がコップをテーブルに置くの見届けると自分のコップを口元に運んだ。 ごくごくと、まるで水を飲んでるように進むコップの中身に、「一気飲みする気か?」と少し慌てながら村上の手を掴んで止めさせた。
「あんま強くないんやから、ほどほどにしたほうがええで」 忠告というよりも叱りつけるように言うと、村上は目を吊り上げて、頬をふくらませて見上げてきた。 「亮、酔うてる?」 「まあ少しは」 日本酒一本空けてるのだから、いくら下戸でも多少は酔うだろう。あまり酔ってる自覚はなかったがとりあえずそう答えると、途端に村上は悔しそうに顔を歪めた。 「今日こそは亮に勝ったろ思ったのに!」 悔しそうに叫びながらもグラスを口元に運ぶのを止めながら、錦戸を睨む。理不尽な怒りをむけられて少しムっとしながらも「勝つってなんやねん」と聞くと。 「なんでもないわ!」 言ったきり、村上は拗ねたまま黙ってしまった。拗ねた理由とか勝つとか怒りとか。なんだかさっぱりわからなかったけれど。村上の断片的な言葉を整理すると、とりあえず飲む勝負を勝手にしていたんだろうということだけはわかった。なんで、そんなことになったのかはわからないけれど。
ただ一つ言えること。 最初から勝敗が見えてる勝負だったということ。
「そんなん、勝負せんでもわかるやん」 「なんで!?」 「やって、あんま強いほうやないしょ」 「誰がや?」 「あなたが」 「なんでそんなんわかるん!?」 「なんでって…・」
真っ赤な顔見れば、誰だってわかるだろう。 あきらかに酔ってるのだから、
「酔うてへんよ!」 かたくなに酔ってることを認めようとしない村上。しかし「酔ってない」と言い張る人の九割が酔ってるというのが世のなかの常識。 それでも認めようとしない村上に「まあええけど」とため息をもらす。 「勝負したい思ってるんなら、最初からセーブしたほうがええんじゃないの」 「セーブって、量減らすってこと?」 「ちゃうねん。イキナリ強めの酒飲むんやなくて、最初はビールとかチュウハイとか。軽いもんから飲んだらええんとちゃいます?」
なんで未成年の俺がいい大人に酒の飲み方について説教しなアカンの。
思ったところで誰も気にも止めてくれないだろうし、言ったところで今更変えても手遅れな状態だろうし。 村上の飲み方を見ていてずっと思っていたが、今まであえて口には出さなかったけれど。
「で、結局なんやの?」 「え?」 「勝つ負けるってやつ。なんでそんなことになったん?」
結局黙ったままだったから答えを聞いていなかったと思いだし聞くと、
「やって・・・・」
言ったきり、言いよどんでる姿は普段の錦戸だったらイライラしてるだろうけど。 目元も頬も真っ赤にさせて、今じゃ見上げてくるようになった視線を受けたら。多少酔ってる錦戸は、いつもの『対村上』の壁を作ることを忘れて攻撃をモロに受け止めてしまった。
卑怯やわ…
思いながらもぐらりと傾く心を押さえる理性が酒のせいでなくなりつつある現状。
「ハッキリ言わんと、わからんよ」
普段からは考えられないような声で優しく呟くと、村上の肩を引き寄せた。そのままされるがままになってる村上に少し気分よくすると、笑みを浮かべた。
「やって、負けっぱなしなんやもん」 「なにが」 「いつのまにか、俺よりも大きくなって、俺よりもモテるし…なんや負けっぱなしや〜思ったら悔しい思って…やから、酒飲めるってとこが有利やし酒比べなら勝てるかと思ったんやけど…」
段々と小さくなる声を聞き取りながら、錦戸は呆れていた。 勝った負けたとか。なんでそんな風に思ったのか。
「別に、俺は村上くんに勝ってるとか思ったことないねんけど」
彼と自分では、魅せるものが違うのだから、勝負以前の問題だろうと思っているからいままでそんな風に思ったこともない。 だから、素直に気持ちを言ったのに。
「そういうとこが、ずるい!」 「はあ?」 「冷めた目でクールにしてて。かっこよすぎてずるいわ」
かっこよすぎてずるいって、どんな理屈やねん。
思ったけれど、それ以上に今の言葉に気をよくしてる自分もいて。 結構酔うてるか?やっと自覚し始めたけれども酔ってしまったものは今更戻せない。その上、自覚したら益々酔いが回ってきたような気がして。あかん…と思ったけどもどうしようもなく。
「一つだけ、俺が負けっぱなしなんがある」 「なに!?俺の何が亮に勝ってるん?!」 嬉しそうに顔を輝かせて聞いてくる村上に「「惚れた弱みで負けっぱなしや」なんて言えるわけないやん」と心のなかで呟きながら。 「さあ?」 とぼけたように呟いて笑うと、拗ねた表情を浮かべて頬をふくらませる村上を、かわいいなんて思いながら。錦戸は頬にキスを落とした。
「あかん、亮ちゃんも完璧酔ってるわ」
周りの険悪ムードに心配しながら見ていた安田が呟いた。錦戸の彼にあるまじき笑みと行動に、顔にはまったく出ていなかったが相当酔いが回っていることを表していて。「素面は俺だけか」とがっくりと肩を落としていた。
『パターンA・結果』
『飲んで飲まれて。両者引き分け』
要するに、どっちもどっち。
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