Monologue

2002年11月14日(木) クラピカの『目覚まし時計』日記

「おい!起きろよクラピカ、もう朝だぜ」

レオリオの声が、私の耳元で囁く。

響きの良い低音に、私の意識は微かに覚醒し掛けたが、
開こうとした瞼は予想以上に重く、手強く抵抗する。

「ほら!早く起きねぇと遅刻しちまうぜ!」

畳み掛ける様に言うレオリオの言葉に、
わざと背を向ける様に掛け布団を被り直しながら寝返りを打ち、

「すまない、レオリオ・・・・・・もう・・・あと・・・5分だけ・・・・・・」

まるでうわ言の様に呟きながら、再び安らかな睡眠に堕ちて行きそうな私に向かって、

「どうせまた昨夜、遅くまで起きてたんだろ?」

“ったく、しょうがねぇなぁ・・・・・・”と呆れた様なレオリオの口調に、
私の全身は“カッ!”と熱く憤る。

「何だと!?」

“ガバッ!!”と思い切り良くベッドに上半身を起こすと、
怒りに任せるまま私は彼に罵声を浴びせた。

「昨夜、ちっとも私を眠らせてくれなかったのはお前の方では無いか!!
しかも、あ、あんな恥ずかしい格好までさせ・・・て・・・・・・」

ふと我に返ると、
私の視線の先では、
先日『通信販売』で購入した『目覚まし時計』が、
窓から入る早朝の淡い陽光を受けて銀色に輝いていた。

「おはよう、クラピカ、素敵な朝ね」

“クスクスクス・・・”と、
小鳥の囀りの様な声の方に視線を移すと、センリツが私の部屋のドアの傍に立っていた。

彼女の言葉で、私はようやく自分が置かれている正しい状況を認識する。

此処は『ノストラード家』の私に与えられた個室、
さっきのレオリオの声は枕元の『目覚まし時計』が発した、
私を起こす為に予め録音された音声・・・・・・

「低血圧なあなたが、そんなにしっかり起きられるだなんて、
その『目覚まし時計』の効果は抜群だわねv」

口元に手を当てて可笑しそうに微笑い続けるセンリツの言葉に、
私は、ハッとしながら『目覚まし時計』の方を振り返る。

「早く階下に降りてらっしゃい、今日も早速仕事よ♪」

軽やかに踵を返して私の部屋から出て行くセンリツの声を背中で聴きながら、
私は銀色に輝く『目覚まし時計』に、そっ・・・と指先を触れる。


・・・・・・確かに『目覚まし』効果は抜群かもしれないが、
今後この『時計』の使用には一考が必要かもしれない、と私は重い溜息を吐いた。


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