Monologue

2002年08月01日(木) レオリオの『サトラレ』日記(代筆ななか)

「これから里見先生はどうなっちまうんだろうな?」

TVドラマ『サトラレ』の第5話を観終わった後、オレは溜息混じりに呟きながら、
タバコを一本咥えて火を点けた。

「彼は良い人間だから、次第に周囲の人間達の理解を得られ、
立派な臨床医になるのでは無いかと推測される。
最後には星野先生とも無事に結ばれるのでは無いか?と私は考える」

オレの隣りで紅茶を飲みながら観ていたクラピカは、彼らしい率直な意見を述べる。

「あ、やっぱお前ェもそう思う?」
フゥ…と紫煙を吐き出しながら、オレが言うと
クラピカはコクンと肯いて、空になったティー・カップを片手に立ち上がった。

「なぁ……」
オレが呼び掛けると、クラピカは手にしていたカップをテーブルの上のソーサーに置いて、
「何だ?」と振り返る。

「ドラマの中でも言ってたけどよ 『サトラレ』に愛されるのってスゲェ幸せだと思わねェ?」

先刻のドラマの内容を頭の中で反芻しながら、オレはしみじみ呟く。

「恋人がどれ程相手の事を愛しているか、とか、どれ程大切に想っているか……とか、
バッチリ全部伝わって来るんだぜ、それってスゲェ良いよな」

「ああ…浮気したり心変わりした事もすぐ伝わるから、相手は騙される心配が無く、
かつ合理的で有るとも言える」

冷静沈着なクラピカの回答に、一抹の寂しさを覚えて、オレは紫煙混じりの溜息をフゥと吐く。

「あ〜あ、オレも『サトラレ』だったら良かったのによォ……」

半ば吐き捨てる様にオレがぼやくと、

「何故、そんな事を思うのだ?」

……と、ティーポットからカップに紅茶を注ぎ淹れながらクラピカが尋ねる。

「何で、って……そりゃ、もしオレが『サトラレ』だったらよォ……」

「良いでは無いか?別に……」


“『サトラレ』などで無くても、お前はちゃんと……”


(え……?)



「……何だ?」

紅茶の入ったカップを手に戻って来たクラピカは、
ポカン……としているオレの顔を見て、訝し気に眉を顰めた。

「い、いや、別に何でも無ェよ」

慌てて言い繕うと、

「おかしな奴だな」

ぶっきらぼうにそう言いながらオレの隣りに座ると、
淹れて来た紅茶を素知らぬ顔をして啜る。

その端整な横顔から、一見何の感情も読み取れない様に見えるが……


“『サトラレ』などで無くても、お前はちゃんと……”


言葉に出さずに言ったクラピカの“声”が、聴こえたみたいな気がした。


以前は、こんな事は全く無かった。

お互いの気持ちが掴めなくて、不安な事ばかりが多かった。

だが……



「何だ?さっきから、人の顔をジロジロ見て、ニヤニヤして……」

ギロリ……と鋭い眼光を向けられて、一瞬ヒヤリとする。

「いや、何でもねェよ……」

オレは右掌をブンブンと振り乍ら、引き攣った微笑みを浮かべる。


「薄気味悪い奴だな……全く」

そう言いながら、クラピカはTV画面に視線を向ける。



“『サトラレ』などで無くても、お前はちゃんと……”



今なら、オレにも“ちゃんと”判る。

たとえコイツが『サトラレ』で無くても……


“ポーン”と云う10時の時報と共に始まったドラマを見ながら、

「お?そうだ、今日から常磐貴子チャンがヒロインなんだよな♪

イイよな……貴子チャンvvやっぱ女は鎖骨だよな?」

と、オレが呟くと、

「そうか?私は中谷美紀さんの方が知的魅力に溢れていたと思うが……」



………ちゃんと、判る筈だと思うんだが、どうだろう諸君?(^^;)


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