ゆうべのことば

2017年04月05日(水) 骨の羽化

リィリィと骨が鳴る
空を探して首をもたげてみると鳴る
どうしたものかと不思議がって首を傾げてみると鳴る

ちょうど頭と体が交わるところ
ざらついた岩を乗せられて
潰され 削られ 粉々になった 砂が流れる
森の奥であぶくを吐き出し続ける秘密の湧水のように

鳥たちは木の上にいる
獣たちは草の陰にいる
虫たちだけが骨の傍らに寄り添っている

小指の爪に点在する白い斑ほどのごく微かな虫たちは
薄っすら透けた甘露のごとく色の混ざった羽を震わせ
精いっぱい足を踏ん張り互いに押し合いへし合いしながら
どうにか己の取り分を増やそうと必死になってもがいている

それは確かにひとつの生き物だった

うごめく集合体はやがて歪に膨れ上がって
自分たちの輪郭を作っていたはらわたを突き破り
真赤な砂をそこらじゅうにぶちまけて
月の光に照らされながら散り散りに飛んでいった

リィリィ リィリィ これでおさらば

一人分にも足りなくなった骨は手を振る事もできずに
ただ音もなくないている


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小石ゆうべ [MAIL]

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