白木蓮の咲く庭で...久純ゆきの

 

 

(創作メモ) - 2008年08月17日(日)

屋上に登って、空を見上げた。
真夜中でも灯りの絶やされない王城の方角は避ける。

それでは正しい方向からが少し外れてしまうのだが、
灯りの向こうの空に目を凝らすのは味気ない。
そして何より、落ち着かない。

闇の空をただ茫洋と見つめる事ほど、
今の彼女にとって心鎮めることはなかった。
東の空。
しばらくすると、間も無く南の方から一筋、淡く星が横切っていった。
一年に一度の、流星の時期。

遠い異国の言い伝えでは、
流星は死者が残された者たちに、言葉を伝えて寄越す時の架け橋だという。

「……ねえ、教えて?」

夜の静寂の中に小さな呟き声が溶けてゆく。
彼女はただただ、空を見上げる。


あなたは、幸せでしたか?

あなたの心を占めるものの中に、幸福はありましたか?

他の誰でもない、

「ノイさん自身の……」


言葉を紡いだ途端、視界が熱く滲んだ。
溢れる雫を押し留められない代わりに、
嗚咽だけは息を詰めて堪える。

もし、もし万が一答えを返してくれたとして、
それを聞き逃してしまったら困るから。

自分で自分の肩を強く抱きしめて震える胸の動きを止めようと
蹲った少女の影は
その夜久しく、その場から動くことが無かった。


*****

(ペルセウス座流星群に寄せて)


...



 

 

 

 

INDEX
past  will

Mail Home