Deckard's Movie Diary
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| 2004年02月09日(月) |
ションヤンの酒家 この世の外へ/クラブ進駐軍 |
牧歌的な『山の郵便配達』から一転して、フォ・ジェンチィ監督の最新作『ションヤンの酒家』は都会の片隅が舞台です。ションヤンは重慶の旧市街で屋台を切り盛りしている女主人。彼女を取り巻く環境は、何処にでも転がっているような問題ばかり、家のコト、家族のコト、男のコト、預かっている娘のコト、店のコト・・・そのエピソードは木下恵介・・・あ!どちらかと言えば松山善三かな?匂いが漂って来ます。今井正、山田洋次ほどの社会性はないと思いますが・・・で、松山作品ならば、ションヤンは若かりし高峰秀子が演じていた事でしょう(苦笑)。で、言いたかったコトは前作『山の郵便配達』では、フォ・ジェンチィ監督の真面目な部分が良い方向に作用したと思うのですが、今回はちょっと喰い足りません。もちろん正直なだけの内容ではありませんが、都会の片隅を描くにはもう少しマッチョ(線が細いとダメよ!っつー意味です。)でないと!で、全体的に演出も過剰気味で、話の展開にも何度か飽きてしまいました。期待値低めで望めばそれなりに楽しめると思いますが・・・。
『ぼくんち』が「なんじゃ、こりゃ〜!」の出来だと思っている小生にとっては敗者復活戦になる阪本順治の『この世の外へ/クラブ進駐軍』。悪くないんですけどねぇ・・・・阪本は巧くなりましたが、嘗ての勢いは完璧に無くなりました。荒削りの4WDから至れり尽くせりの高級セダンに乗り換えた様な印象です。とにかくエピソードが多いのでまとめるだけで大変だと思うのですが、どうにも小賢しくまとまっている印象です。古くは今村昌平、深作欣司、最近では『夜を賭けて』に見られたようなヴァイタリティが感じられません。だから、時代背景は古いのに何処か漂白されているようでピンと来ません。悪い映画ではないんですけどねぇ・・・(って、またそれかよ!)主演の萩原は慣れない歌を歌わされていて可哀想だとは思うのですが・・・元々地味な役者ですから、この人は。オダギリジョー、松岡俊介、そして『マイ・ネーム・イズ・ジョー』のピーター・ムーランがイイ味を出していただけに、主演にはもっとクセのある役者を据えた方が良かったんじゃないでしょうか。この映画の何よりも素晴らしいところは美術(原田満生)です。『KT』の美術はこの作品の為にあったのか!と思うくらい良く出来ています。あ、前田亜季が大人っぽくなっていたのでビックリしました。
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