Deckard's Movie Diary
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2002年08月15日(木)  マル秘色情メス市場

 田中登監督作品『マル秘色情メス市場』。74年の日活ロマンポルノです。74年と言えばトイレットペーパー争奪戦やノストラダムスの大予言、日本沈没と、一足早い世紀末臭さが漂っていました。この映画はその時代の記録として、かなり貴重な映画かもしれません。「ウチぃ、ナンや、さからいたいネン・・・」と娼婦トメの独白で始まるトップシーンから、ドヨ〜ンとあの頃にタイム・スリップ。灰色にくすんだ西成近辺の町並みを舞台に、独り立ちしようとしながら虚無的(懐かしい言葉だ!)な諦めの気持ちと、絶望感が渦巻くこの映画はロマンポルノという映画の枠を遥かに越えてしまっています。指名手配写真の男に思い(父親への?)を寄せながらゴム人形と化したヒロインの生き様に、なりふり構わず発展し、臭い物にはフタをしまくってきた日本人の疲れた姿がだぶります。60年代後半から70年代初頭に大きく歪んだこの国の膿は、オイルショックの焦燥感の中に吐き出され、この後、小奇麗な平和ボケ日本国が歩き出すワケです。当時19歳、この映画を観た時は自分とは全くクロスしない世界に圧倒されたものでした。この映画の為だけに生まれてきたような芹明香、母親役の花柳幻舟の怪演、唯一ロマンポルノの匂いを撒き散らせている女王・宮下順子、当時「ビックリハウス」編集部員・萩原朔美等、出演陣も実に胡散臭く魅力的。フィルムセンターにて観てきました。独断推定年齢50歳以上。男性占有率95%。平日昼間の3時からでしたが満員でした。


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