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2004年06月04日(金) 深紅の愛 DEEP CRIMSON

深紅の愛 DEEP CRIMSON
Profundo Carmesi
Deep Crimson

1996年スペイン/フランス/メキシコ
アルトゥーロ・リプステイン監督

ディープ・クリムゾン 深紅の愛(ビデオ化時タイトル)

情熱的という美しい言葉で片付けるには余りにも罪深い、
そんな「ある愛の物語」でした。

1940年代にアメリカで実際に起きた事件を題材に、
舞台をメキシコに置きかえて映画化したものですが、
題材となった事件は、
1969年、『ハネムーン・キラーズ』のタイトルで一度映画化され、
日本では、30年のブランクの後、2000年6月公開に至ったとか。
そして、本日御紹介する『深紅の愛』の方も、
その半年後に公開されました。

看護婦コラル(レヒナ・オロスコ)は、
2人の子供を抱えて生活に追われ、
太った冴えないルックスをしていて、
シャルル・ボワイエのような男性との恋に憧れていました。
一方、女性の孤独につけ込み、
セコく金銭を失敬するニコラス(ダニエル・ヒメネス・カチョ)は、
“自称ボワイエ似”は伊達ではなく、確かになかなかの男前ですが、
いつも偏頭痛に悩まされ、精神的に追いつめられて頭がはげ、
かつらが必需品という生活をしていました。
そんな2人が、雑誌の恋人募集コーナーで知り合います。

手紙をくれたコラルを訪ねたニコラスは、
彼女と肉体関係を持った後、財布から金を抜き取って逃げますが、
コラルの方は、何をどう勘違いしたか、
そんなニコラスの家に、子供たちを連れて転がり込み、
子供たちの父親になってほしいと頼みます。
が、邪険にされたコラルは、
自分が子連れなのが障害になっていると思い込み、
嫌がる子供たちを孤児院に置き去りにします。

ニコラスの不在中に家探しして、
彼の“商売”や、彼の亡き妻にまつわる秘密を握ったコラルは、
2人で組んで、女性たちから金品を巻き上げてようと提案します。
コラルはニコラスの妹に成りすまし、
女性たちの値踏みをしながら、
ニコラスが自分以外の女性と肉体関係を持たないよう
監視の目を光らせますが、
ちょっとした間の悪さと、コラルの嫉妬により、
女性たちを殺していくのでした。

もう後戻りもできない、
さりとて明るい未来とも縁のなさそうな2人の生きるさまは、
虫ケラ同然、というよりも、
比べたら虫ケラが気の毒というほどに、まさに最低なものです。

末期患者相手に看護婦をしていたコラルは、
体の不自由な老人に無理やり乳房を触らせようとするなど、
とにかく「飢えて」いました。
そんなとき、大好きな俳優にちょっと似た、
優しくて紳士的に見える男に出会い、入れあげるのは、
当然といえば当然ですが、
子供を捨てた挙句、男と危険な運命共同体になろうという決意は
やはり唐突に思えます。
また、ニコラス視点になれば、
単なる金づると思っていたら、貧乏なコブつきで、
長くつき合う女ではないと判断したのに、
弱みを握られ、一緒に過ごさざるを得なくなる、
なんて災難だ……に見えなくもないのですが、
舌先三寸で「女性を喜ばせる」ことしか能がないと思っていた自分が、
初めて無条件で愛してくれる女性にめぐりあえた、という喜びもまた
嘘ではなかったのです。
どうしようもない2人の間には、確実に魂の呼び合いがありました。

2人の想像を絶するような行為の数々は、
実話がベースになっているということを割り引いても、
ここはこれしかないだろうと思わせるに足る、
実に力強い説得力がありました。
といっても、あくまで映画は映画。
現実世界の倫理観や文法で語ってはいけない、
そういう性質の「説得力」です。
すべての人にお勧めすることはできませんが、
確実に需要があるというタイプの映画だと思います。


ユリノキマリ |MAILHomePage