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2003年05月09日(金) 至福のとき

5月9日はアイスクリームの日です。
1869年、横浜・馬車道通りで
「あいすくりん」が売り出されたことに因むとか。

夏のように気温がじりじりと上がったかと思ったら、
雨がちらついて、気温も低く、なんて日もちらほらあって、
アイスクリームが本当においしく感じる季節は
もう少し先かもしれませんが、
この映画の中のアイスクリームが
格別おいしそうだと思ったのは
私だけではありますまい。

至福のとき Happy Times
2000年中国 チャン・イーモウ監督


盲目の少女と、失業中でうらぶれている中年男というと、
チャップリンの『街の灯』あたりも思い起こされますが、
もう少しシビアで、
それでいてもっとあったかい(と個人的には思う)
そんな作品でした。

仕事も×、女性にももてない中年男チャオは、
本当はスリムな女性が好きなのに、
見合いで知り合った太った中年女に
「太った女性は温かそうで好きだ」
とおべっかを使い、結婚話をまとめかけます。
しかし、結婚には5万元は必要だと言われ、
とにかく、友人・知人をあてにして金策しますが、
ふだんから寸借の多いチャオは、
その返済すらままならない状態でした。

廃車になったマイクロバスをラブホテルに改装して
貸すという商売も、
その地区の緑化事業にひっかかって撤去され、
ただでさえ御難続きだというのに、
結婚相手の女性には盲目の継子ウー・インがいて、
彼女の就職の世話をしてほしいと言われてしまいます。

自分のことをまず何とかしろよ!と突っ込む間もなく、
マッサージが得意だというウー・インのため、
閉鎖された工場を、
さもホテルのマッサージ室であるかのように装い、
知人たちに「客」に成り済ましてもらって
ウー・インに仕事をさせ、チップを稼がせるチャオでしたが、
そもそもがカラッケツですから、すぐにお金は底を尽きます。

ウー・インには、自分を捨てた実父がいますが、
目を治し、その父を探すのが夢でした。
彼女がヤケを起こして去ってしまわないようにと
チャオたちは、お金がなくなった後も、
紙幣大に切った紙をウー・インに渡すことで取り繕い、
彼女をそばに置いて見守ろうとするのですが……。

こんなにベタな展開も珍しいというほどにベタな、
何とも泥臭い人情喜劇ではあるのですが、
しゃらくさく先を読みながらも、泣かされてしまいました。
人間の真の善意というものを、特に意識しなくても
ふかぁくふかぁく考えさせられてしまうと思います。

『初恋のきた道』チャン・ツィーイー
掟破りなほどに魅力的に撮ったチャン・イーモウは、
この映画では、ドン・ジエという美少女を
見せつけてくれました。
彼女の「小生意気な薄幸の美少女」ぶりは最高です。

ドン・ジエ扮するウー・インは、
ハーゲンダッツのアイスクリームを食べようとしたとき、
継母に取り上げられてしまいますが、
チップがたくさんもらえた日(まだ本物のお金)
嬉しそうに「私がごちそうするわ」と
チャオにもアイスクリームを振る舞おうとします。
アイスクリーム、本当は好物だったんですね。
好物と言えるほど、食べたことがあるかどうかわかりませんが…。

ちなみに、作中登場するハーゲンダッツのショップでは、
一番小さいサイズ(85グラム)が25元で、
日本円に換算すると、約350円見当とのこと。
チャオがバラ1本が2元と聞いて「高い」と言うシーンがありましたが、
日本人の感覚だと、
ハーゲンダッツの最小サイズとバラ1本がほぼ一緒か、
あるいはバラが少し高いくらいでしょうか。
所得水準の違いを考えると
なおさら高価であることがわかります。


ユリノキマリ |MAILHomePage