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2002年07月15日(月) トーチソングトリロジー

今日は思いつきで1本。いつかは取り上げたいと思っていた作品でした。

トーチソングトリロジー Torch Song Trilogy
1988年アメリカ ポール・ボガート監督


この映画の脚本と主演を兼ねたハーベイ・フィアスタインは、
(変な言い方ですが、演技じゃなくて)本物のゲイだそうです。
『ミセス・ダウト』で、ロビン・ウィリアムズに特殊メイクを施す役でしたが、
そういわれてみると、ああいうゲイ色の薄い役でも、
ちょっとオネエっぽい感じはしました。

アーノルド(成人役H.フィアスタイン)は、幼い頃から
母親(アン・バンクロフト)の目を盗んで化粧をするような少年でした。
今はナイトクラブで働く、いわゆるドラッグクイーンです。
ある日、「同好の士」が集まる店で知り合った小学校教師に、
何か特別なものを感じますが、
彼はいわゆるバイ・セクシャルで、社会的な体裁を考えたのか、
女性と結婚してしまいました。

が、心から愛し合える相手を真摯に求める彼の前には、
その数年後、うぶなアラン(マシュー・ブロデリック)があらわれます。
もともと自分がゲイだと思っていたわけではないアランも、
アーノルドの真心に触れるうちに、次第に彼を愛するようになり、
2人はいつしか“結婚”し、養子をとって育てようとしますが、
幸せの絶頂の中で、やるせないような悲劇に見舞われ……

ゲイ・ムービーと呼ばれる分野が確実にあり、
またそれを愛好する人も多数います(できのいい作品が多いし)。
そして、「いい映画だったなあ」と感じた作品は、大抵の場合、
男女の恋愛と何が違うんだろうという思いが残ります。
ごっついアーノルドが、若くてかわいらしいアランを本当にいとおしみ、
アランもアーノルドを純粋に愛し、妬けてしまうほどでした。

いわゆるゲイの人々が差別されるのに、「非生産性」などという
もっともらしい言葉がしばしば持ち出されます。
でも、暴言承知でいえば、
2ちゃんねる用語で言うところのDQNな男女が一緒になって、
バカで周囲に迷惑かけるしか能のない子供を産み育てるくらいなら、
子供にこだわらず、自分らしく生きている好ましいカップルや、
養子という選択肢を柔軟に受け入れるアーノルドのような人々の
存在の方が、よほど貴重という気がします。

ところで、アーノルドは結局、ティーンの少年を養子として迎え入れます。
この子が軽い問題を起こしたりしますが、
身柄を引き取りにいくアーノルドの、愛と怒りに満ちた姿は、
おとんとおかんの両方の役を立派に体現しています。
また、息子のすべてを認めることができない母の苦悩ぶりを、
A.バンクロフト(myアイドルおばさま)が好演していました。
人が人を愛することと育てることの純粋な意味を考えさせられます。


ユリノキマリ |MAILHomePage