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2001年12月30日(日) クレヨンしんちゃん/嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲

まさに年の瀬、という感じですが、いかがお過ごしですか?

とりあえず、21世紀最初の年に見られてよかった…という意味で、
本日はこちらの映画を。

クレヨンしんちゃん
/嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲

2001年日本 原恵一監督


あのミュージシャンの財津和夫さんも、
「映画シリーズのファンで、毎回見ています」と言い、
野原家の長女ひまわり初登場の回にはテーマ曲も提供したという、
なかなか渋いところで人気の「クレヨンしんちゃん」劇場版の中でも、
「最高傑作」として、しばらく語り種になる1本だと思います。

春我部(春日部に非ず)に「20世紀博」なる常設見本市ができてから、
しんちゃんの周囲の大人たちは、どこが様子が変でした。
レトロに浸り、童心にかえって楽しむのはいいけれど、
気持ちの切り換えはできず、仕事もせずにフラフラ遊び、
それこそ「大人げない」態度で自分勝手を通します。

その挙げ句、困惑する子供たちを置いて、
空荷のトラックの荷台に満載されていく姿は、
まるで「ハーメルンの笛吹男」に登場する子供たちのよう。
どこかに、それもあの「20世紀博」に深くかかわったところで
「笛を吹いている」人物がいるようです。
大人たちをすっかりさらってしまうと、今度は子供狩りが始まります。
しんちゃん初め春我部防衛軍は、知恵と勇気で追手を逃れ、
20世紀博会場に乗り込んでいくのですが…

笛吹男の正体は?そしてその意図するところは?
90分、目が離せません。

20世紀博には多くの親子連れが来ますが、
おおむね子供たちは退屈し、
大人たちは子供そっちのけで楽しんでいました。
ひょっとして、この映画を劇場で見た親子連れが、
そのまま投影されているのではないか、と思ってしまうほど、
今までになく苦くて大人向きの筋立てでしたが、
考えてみれば、「早く大人になりたいなー」と
思いながら過ごせる子供時代のすばらしさというのは、
テレビ放映の「しんちゃん」の中でも、
これまでしばしば取り上げられてきたモチーフでした。
テレビアニメのファンだったら、あのエピソード、あの小話、
ああ、この映画の前哨戦だったのかな?と、
思い当たるものも結構あると思われます。

つい先日、「失業率5.5%に」という小さな新聞記事を見ました。
デフレ、デフレ・スパイラルといった言葉も人口に膾炙し、
虚無的なギャグ(嫌いじゃないけど)だけが栄える2001年、
こんな21世紀に誰がした!と叫びたいこともしばしばですが、
幸いなことに、21世紀は始まったばかりです。
見通しは全く明るいとは言えませんが、
ユメもチボーもない(古いなあ)と嘆く前に、
この映画のために「90分の暇」をつくることをお勧めします。


ユリノキマリ |MAILHomePage