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2001年10月16日(火) ブリキの太鼓

1927年の10月16日、ドイツの作家ギュンター・グラスが生まれました。
1999年のノーベル文学賞受賞も記憶に新しいところですが、
本日は、この人の代表作ともいえる作品の映画化を御紹介しましょう。

ブリキの太鼓 Die Blechtrommel
1979年ドイツ=フランス
フォルカー・シュレンドルフ監督


とにかく…ひたすら「気持ち悪い」映画です。
グラス世界の精神性や、描かれた時代背景も正確に理解せずに
こう言い切ってしまうのも葛藤があるのですが、
本当なので仕方ありません。
なので、まず原作を読んでから見るべきという向きもあるようですが、
こういう作品だからこそ、まず映画を見た方が、
原作を読んだときの理解が早いような…とか言っている私は、
原作未読の状態ですし、この先読むかどうかもわかりません。

このMLでも何度か触れたことがありますが、哀しいことに、
ドイツ第三帝国、例のチョビひげの小柄な男、その男の所業…は、
数々の文学・映画の傑作も「産んで」しまいました。
この作品も、そんな1本です。

不思議な出生をしたものの、美しく成長したアグネスは、
親ナチ派ドイツ人のマツェラートと結婚し、
1924年、ダンツィヒ自由市(現在のグダニスク)でオスカルを出産し、
3歳の誕生日にブリキの太鼓をプレゼントしようと考えます。

オスカルは、その誕生日当日、3歳児の目と頭で、
母アグネスが、いとこの男性と浮気をしていることを悟り、
大人社会の嫌らしさ、汚らわしさに嫌気がさして、
みずから成長を拒否してしまいます。

体の成長を3歳児でとめたまま、頭の中身だけ育っていくオスカルは、
世のナチス台頭に代表される数奇な運命に翻弄され、
ブリキの太鼓を演奏しながら奇声を発してガラスを割るなどの超能力もあって、
世間からは決して好意的に見られることなく生きてゆきますが、
徹底的に透徹した目線で世の中を見据え、
最後にはある決断をするのでした…。

作中、オスカル少年はナレーションも担当します。
その中で、何度も「かわいそうなママ」と表現されるアグネスが、
いとことの情事の末、望まぬ妊娠をして、
ひどいつわりの最中、生のニシンをむさぼり食うシーンがありました。
あれなんかもう、「うげーっ」でしたねえ。
(何かを象徴するシーンなのかもしれませんが、
そんなこと考えさせるゆとりもないグロさ)
と同時に、ヨーロッパ人ってやっぱりニシン食べるんだなあと
妙に納得もしました。

こうしたシーンとか、妙に有名なオスカル少年の奇声とか、
そういうシーンばかりクローズアップされると、
やはりキワモノぶりが際立つのですが、
それだけの映画でなかったなあということは、
見た後何年かして思い返すと、何となくわかってくるかと思います。

たしか、当時の「日本アカデミー賞」の最優秀外国映画賞も、
この作品が受賞したかと思うのですが、
授賞式をテレビで見ていたら、やっぱりそういうシーンばっかりを
ダイジェストで流すものですから、
子供心に「きしょい映画だなー」と思った覚えがあります。
(もちろん、当時は↑こんな言葉はなかったけど)
が、成人してから改めて見たら、
気持ち悪いからこそ伝わるものがあるんだと、
そういう方向に考えられるくらいにはなりました。

あんまりありがたくない?日本アカデミー賞はともかく、
'79年カンヌ映画祭グランプリ、'80年アカデミー外国語映画賞と、
いわば映画賞のビッグ2を獲得しました。
どの辺がどのように評価されたのかは、わからないでもないのですが、
それがこの映画にとって、
素直に栄冠といっていいものかどうかはわかりません。
個人的には、「名作」と言う前に、“ある種の”とつけたい作品です。
たまにはこういうのもどうでしょう?


ユリノキマリ |MAILHomePage