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2001年06月12日(火) グローリーデイズ 夢見る頃はいつでも

グローリーデイズ 夢見る頃はいつでも
Younger&Younger

1993年アメリカ・ドイツ パーシー・アドロン監督


一言で説明しにくいストーリーでしたが、
『バグダット・カフェ』のあのテイストに反応した方ならば、
見ておいて損はない作品だと思います。

ロサンゼルスで貸し倉庫業を営むジョナサン・ヤンガーは、
「営む」とは形ばかりで、実際は妻のペネロピー(ペニー)に
いっそ気持ちよいほど雑事を任せ、
自分は食う・寝る・遊ぶの結構な御身分です。
息子ウィンストン・チャーチル・ヤンガー(冗談みたいな名前)は、
イギリスに経営学を学びに留学していますが、
家の内実は全く把握せず、
甘えん坊のお坊ちゃんを絵に描いたような青年でした。
心臓が弱いペニーが発作で亡くなってしまい、
イギリスからウィンストンが戻ってきて、
共同で事業をすることになっても、
ジョナサンのお遊びバカぶりは変わりませんでした。
ウィンストンは、大学出たてで理屈しか知らないのを自覚し、
父親に仕事のノウハウを伝授してもらおうと思っているのに。
一体、ヤンガーの貸し倉庫の行く末は、どうなってしまうのでしょう。

ジョナサン役が、近作では『スペース・カウボーイ』などでも
「怖い笑顔」を披露していたドナルド・サザーランドです。
ドナルドには、父親そっくりのこわもて俳優キーファーという息子が
いますが(『三銃士』のアトス、『評決のとき』のKKK会員など)、
この映画では、まだ甘ったれお坊ちゃん顔だった
ブレンダン・フレイザーが息子ウィンストンを演じていました。
『ハムナプトラ』で、一部映画ファンの間では大ブレークしましたが、
正直申し上げて、なぜこの人が日本ではぱっとしないのか、
私にはわかりません。
ハンサムだし、いい体しているし、演技できるし、知性もあるし、
コメディーセンスもぴか一だと思います。
実はこのビデオも、ブレンダンが出るというので借りたものでした。
が、そういうつもりで借りると、
「いつになったら彼が出てくるのっ」と、
ジリジリと30分以上待つはめになります。
インド映画におけるラジニカーント並みに、
もったいつけて登場しました。
(しかも、よくよく考えると主役ではないのです。
ビデオジャケットには紛らわしい書き方をしてあるけれど)

話は逸れましたが、母ペニー役は、
老けメイクのロリータ・ダビドビッチが演じていました。
『ブレイズ』での、
ポール・ニューマンを虜にしたストリッパー役が
印象に残る官能的美人ですが、
一体どこのオバチャンだと思うような化け方でした。
わざわざこの人にそこまでさせたのには、
それなりに理由があるのですが、
ネタバレ防止のため、それは伏せておきます。

最初と最後に女性の声でナレーションが入りますが、
これは、映画に出演もしているリンダ・ハントのもののようです。
貸し倉庫を仕事場として使っているフランセスという作家役で、
ヤンガーの一家とは長いつき合いと見られます。
オーストラリア映画『危険な年』での男装
(アカデミー助演“女優”賞受賞)や、
『キンダーガートン・コップ』『シー・デビル』
といった作品にも出演している、
非常に個性的なルックスの女優さんです。
いわゆるホルモン異常で身長が伸びなかったそうなので、
表現をする上で却って差別的になってしまうのでは、と思うほど
気を遣ってしまいますが、
小さな体に反比例したデカい態度というか、
堂々とした頼れるオバチャン役がぴったりの人です。

ヤンガーの貸し倉庫を利用している常連顧客は、
皆さんかなり個性的な顔ぶれなので、
そんなあたりも、『バクダット・カフェ』のモーテルを
彷彿とさせるかもしれません。

ヤンガーは、いつも白いスーツに身を包み、
ヤマハのバイクでたまり場に踊りに行ったりするのですが、
似たようなタイプのじい様が数人出てきて、
一様にバイクに乗ったりするものですから、
『さらば青春の光』のワンシーンをちょっとだけ思い出しました。
バイクがベスパでないのが残念ですが、
シルバーモッズとでも呼びたいような、何やら粋な感じでした。
(冷静に考えると、あの白装束は堅気には見えないのですが、
似合っちゃうものは仕方ありません)

倉庫の利用客の中に、「時の人」もいました。
殺人か事故かわからない灰色状態の事件の容疑者、
「ジグザグ・リリアン」ことリリアン(サリー・ケラーマン)と、
その娘メロディー(ジュリー・デルピー)です。
ビデオには、ブレンダンとジュリーの2大スター共演みたいな
うたい文句になっていたので、
てっきり2人のラブストーリーかと思って借りたのですが、
そうでなくて却ってよかったものの、
(といっても、2人は結局恋に落ちますが)
なーんかだまされたという感じも否めません。
でも、ジュリーは控え目ながらムードのある、
放っておけない女性を好演していました。

ところで、ブレンダンが出演している映画で、
もう1本、「グローリー・デイズ」という邦題のものがあるのですが、
これはベン・アフレック主演の青春映画だそうで、
ブレンダンの出演はごく短いそうです。
原題がGlory Daze(1996年作品)ということらしいのですが、
ごらんになった方、感想などお寄せいただければ幸いです。
このYounger&Youngerの邦題がなぜ『グローリー…』なのかは、
理由・由来に関し全く見当がつきませんでした。

結果的には「ジャケットにだまされまくった」映画ではありましたが、
それは私がブレンダンのファンだったからというだけで、
災い転じてというか、なかなか拾い物の作品だったと思います。


ユリノキマリ |MAILHomePage