囚はれのシネマ日記
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| 2012年08月30日(木) |
シルヴィー・テステューという女優 |
シルヴィー・テステューを初めて知つたのは 『サガン 悲しみよこんにちは』といふ映画で。 写真と朝吹訳の小説でしか知らないサガンによく似てゐると思つた。 か細い体つきとメランコリックな表情は、その文体に似てゐる のかも知れない。 映画自体は、伝記ものにありがちな事実をなぞつただけの 凡庸で退屈なものに感じたけれど。
ところが、彼女がプルーストの「囚はれの女」の章を翻案した映画 『La Captive 』にアルベルチーヌ役で主演してゐることを知り、 俄然見たくてたまらなくなつた。 と言ふのも、わたしは映画化された『スワンの恋』も『見出された時』も 待ちに待つて観に行つたのだから。 しかしその『La Captive』が日本で上映されることはなく、 DVDとして発売されることもなかつた。 一度だけ、日仏学院で上映されたことを知つたのは、上映後すぐのこと すでに後の祭りだつた。
かうして「囚はれの女」であるところの映画『La Captive 』に 囚はれたまま数年が過ぎて行つた。 そのシルヴィー・テステューがふたたびわたしの前に現れた。 『ルルドの泉で』といふ映画で。
ルルドへの聖地巡礼ツアーに参加した体の不自由な女性に シルヴィー・テステューが扮し、その彼女に奇跡が訪れ、 果たして立つて歩けるやうになつたか否か…といふ筋書き。 この映画はルルドの巡礼を描くドキュメンタリー的要素もあり、 カフェオレボウルの土産物を通じてルルドを夢見るわたしには 興味をそそられるものでもあつた。
シルヴィー・テステューは少し老けたやうにも見えたけれど 横顔の肉がそがれて、より陰影ふかくなり、より複雑化した 精神をあらはし得てゐるといふ体だつた。 最後のシーンでそれを特に感じさせられた。 聖地ルルドと彼女がやうやくにして結びついたと思つた。
かうしてシルヴィー・テステューはしだいに私にとつて 特別な女優となるのだつた。 (つづく)
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