囚はれのシネマ日記
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2004年08月25日(水) ドン・ホセの受難

飯田橋ギンレイホールはもう数少ない名画座になつてしまつた。
銀座並木座、池袋文芸座、高田馬場パール座、早稲田松竹、テアトル新宿、飯田橋佳作座、みんななくなつてしまつた。
このギンレイホールのラインナップはなかなかいいと思ふ。
前回は『スパニッシュ・アパートメント』と『幸せになるためのイタリア語講座』の外国語学習映画の二本立てだつた。
今回はスペインのヴィセンテ・アランダ監督作品の二本立てで『カルメン』と『女王ファナ』。
この『カルメン』はいままで観たどのカルメンより凄い。
まず女優がいい。
スペインのセヴィリア生まれのパス・ヴェガのアンダルシア的強烈さはまつたくカルメンそのものといふ感じ。
つぎにロケがいい。
コルドバのメスキータ、ローマ橋、セヴィリアのタバコ工場、マカレナ教会と本物のロケーションを使つてゐる。
そしてカルメンとドン・ホセの愛のコリーダがいい。
このふたりの愛はまるで闘牛のそれのやうに血まみれだ。
ドン・ホセはマタドールのやうに勇敢に3頭の牡牛をしとめる。
つまりドン・ホセはカルメンを欲するがために3人の男を剣とナイフで刺し殺す。
あげくにはカルメンそのものを刺し殺し、自分は絞首刑となる。
すべてを犠牲にしたあげく死をもつてとどめを刺すパッション。
パッションはふつう情熱と訳される。
しかしそれは受難といふ意味も持つ。
つまりカルメンはホセにとつて避けられない受難であつたといふこと。
ホセがカルメンを刺し殺すのは教会のマリア像のまへだ。
なんと象徴的なシーンだらう。
カルメンとはドン・ホセの熱烈な欲望の対象ではあるが、マリアのやうに超越的存在なのだ。
刺されたカルメンの血が教会の碁盤縞の床へと流れだすシーンがうつくしい。
それはセヴィリアの城壁沿ひのあのマカレナ教会でのことだ。
あの日マカレナ教会はすでに夜の10時を過ぎてゐたため閉まつてゐた。
せめてあと1時間はやく行つてゐたらなあ、と悔やまれる。



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