海を進む
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彼は私を嫌いになって別れようと思ったことがある。 それを私に伝えるには至らなかったけど、隠してくれなかった。 その直前の、怒鳴られたケンカを思い出すと今でも涙が出る。 たぶん悔しいからだと思う。 何度言ってもわかってもらえないことは最近は言わないようになった。
私は小さいときからずっと大人しいいい子だけど、 彼と一緒にいる時には、すぐに膨れる、すぐに泣く。 ほんと信じられない。 ほんとにわがままで強情で、そんなのを出さずに26年間も 大人しく暮らしてたなんて、ほんと信じられない。 でももう彼は私の望むようには反応しないし、 彼の機嫌のほうが悪くなることもある。 だから私はけっこう我慢するようになったと思う。 というより、そこまで泣いたりわめいたり彼を怒らせてまで 何かを主張する気にならなくなったのかもしれない。
私が泣いたりわめいたり、彼のベッドから抜け出して一人で ソファーで寝たり、真夜中に彼の家を飛び出してタクシーで自分の家に 帰ったり、そういうのは全部、満たされないのが原因だと思ってた。 思ってたっていうか今も思ってるけど、求めても求めても満たされないのは 彼を好きすぎるからじゃないことだけは確かだと思う。 彼がどんなにかまってくれても優しくしてくれても満たされないのは、 そもそも相手が違うからなのかもしれないな。 わかっていたけど、彼に依存していた。今もしてるかな。 この満たされない感の解消のために、というかごまかすために、 器を小さくしようとしたんだけど、というか正確には細かく分割しようと したんだけど、ほんとに多少ごまかされただけだったような気がする。 あっちの器、こっちの器、って忙しくなって満たされない感は まぎれるけれど、ふと立ち止まったらもっと寂しいような。
一年前の私は、正しいか正しくないかということを ものすごく重要だと思っていた。 今の私は、人はやっぱり感情の生き物だって思ってる。 だけど、やっぱり何が幸せかってのはあるんだろうな。
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