Experiences in UK
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2005年04月18日(月) 第88週 2005.4.11-18 ラドクリフ圧勝、MGローバーの破綻

(マニフェスト)
週末の買い物でスーパーのテスコに出かけたところ、雑誌売場の片隅に保守党のマニフェスト(選挙公約パンフレット)が置かれていました。来月五日の総選挙を前にして、11日に発表されたものです。
近年の日本がお手本にしている英国のマニフェストとやらはこれか、と思って手にとって見てみました。映画のパンフレットのような装丁で、厚さもパンフレット並みの薄い冊子でした(28頁)。最初、非売品かと思ったのですが、価格2.5ポンド(約500円)としっかり記されていました。
記念に買おうかとも思いましたが、もったいないのでやめました。ウェッブ・サイトから無料でダウンロードすることも可能なのですが、いったい誰が何の目的で2.5ポンドを支払って買っていくのでしょうか。

(ラドクリフ圧勝)
日曜日に行われたロンドン・マラソンで、英国期待のポーラ・ラドクリフ(女子マラソンの世界記録保持者)がブッチ切りの好記録で優勝しました。昨年のアテネ五輪では途中棄権という不本意な結果に泣きましたが、その後のレースでは二連勝したことになります。
今回の記録は、純粋に女子だけのレースでの世界最高記録であり(2時間17分42秒)、また前代未聞のおまけまで付いたようです。私はテレビ観戦していないのですが、報道によると、ラドクリフは序盤から一人旅だったものの、途中で腹痛がひどくなって"toilet break"を挟み(10秒ほど路上にしゃがみこんだらしい)、それでも二位以下に五分以上の差をつけて勝ったそうです。やはり彼女は規格外の大物ランナーです(04年11月22日、参照)。
翌日のメディアは、記録の凄さよりも、途中のラドクリフの「判断」に注目していました。その件に関する質疑応答を報じたBBCのウェッブ・サイトには、次のようにあります。”Paula Radcliffe has described her decision to answer a call of nature during the race as “an embarrassing necessity””
さらに、ラドクリフはレース後のインタヴューの中で、「(観戦していた)国民の皆さんに謝りたい。本当は何十万人もの人々の目の前であんなことはしたくなかった」と言ったそうです。

(MGローバーの破綻)
ところで、英国で唯一の国産自動車メーカーであるMGローバーが経営破綻したというニュースは、今月に入ってから毎日のように英国メディアで報じられています。
「ローバー・ミニ」など個性的な車で知られるローバー社の経営不振は90年代から続いていました。94年に独BMWが買収しましたが、建て直しに失敗し、2000年にわずか10ポンドで英国人による投資家グループに売却されました。この際、人気の高い「ミニ」はBMWに残され、同じく四駆の人気車種を擁する「ランド・ローバー」部門はフォードに売却されています。この時点でMGローバー社に明るい未来は残されていなかったといえましょう。昨年秋、中国の自動車メーカーによって再び買収されるというニュースが流れましたが(それ自体ビッグ・ニュースでした)、今回の経営破綻でそれもご破算となったようです。
かつては英国を代表した自動車メーカーの悲しい末路に対する、センチメンタルな報道が目に付きます。

(英国における日本車のプレゼンス)
4月13日付のフィナンシャル・タイムズ紙にも、本件に関する長い論説記事がありました。この記事の中で私が改めて驚いたのが、記事で紹介されていた棒グラフのデータです。
「英国のトップ自動車メーカー」と題されたグラフが示していたのは、2004年に英国内で販売された自動車のメーカー別ランキングなのですが、一位から三位までを日本メーカーが占めていました。実数はわからないので、グラフからの目の子での読み取りですが、一位ニッサン(32万台、前年比▲3.7%)、二位トヨタ(24万台、同16.2%)、三位ホンダ(19万台、同4.7%)となっていました。以下、BMW(18万台、同8.6%)、プジョー(17万台、同▲16.5%)、ランド・ローバー(15万台、同1.5%)、ヴォクソール(15万台、同18.4%)と続き、その後にMGローバー(10万台、同▲20.1%)とジャギュアー(10万台、同▲16.3%)が来ます。これらのなかで、ランド・ローバーとジャギュアーについては、かつては英国の自動車メーカーでしたが、現在はいずれも米国のフォード社によって所有されています。
確かに、これら日本メーカーの車は街中でよく見かけると思っていましたが、ここまで大きなプレゼンスがあるとは思っていませんでした。

(製造業の退潮)
ところで、FT紙の同記事には、MGローバーの経営破綻に関する経済専門家の見方を紹介したコラムが欄外に掲載されていました。ブレア政権は、総選挙の直前ということもあって、MGローバー社の救済に対して熱心なポーズを見せているようですが、大方の経済専門家は、「資源の最適配分の観点から考えて、非効率なローバー社を生き残らせるのは国民経済にとってマイナス。そもそもローバー社の経済活動が英国全体に占める割合はきわめて小さいものだし、メランコリックになって政府が救済するなんて愚の骨頂」と冷ややかにみているとのことでした。至極もっともな意見といえましょう。

今や英国のみならず日本やドイツでも、製造業の雇用が全体に占める割合は大きく低下していることにも言及されています。1980年から2002年にかけて製造業の雇用比率は、日本で25%から19%に低下、ドイツで34%から25%に低下したとのことです(同期間、英国は25%から13%に低下、米国は19%から11%に低下)。
そんな趨勢のなか、最後に残った国産自動車メーカーを経営破綻から救う理由はどこにもないということなのでしょう。


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