Experiences in UK
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2003年09月22日(月) 第6週 2003.9.15-22 英国の旧国鉄、英国は社会的弱者に厳しい?

今週のロンドンは暑い日が続きました。8月終わりに寒いくらいの日が続いたのですが、一転してこのところは暖かい日が続いております。新聞によると、今年の9月は異例の暖かさと少雨とのことです。天候についてはいぜん異例ずくめです。

(ロンドナーのファッション)
以前に会社近辺(ピカディリー)のビジネスマンのラフな服装とシティーのビジネスマンの地味な服装について書きました。もうひとつ、ロンドンの人々の服装について気づくことがあります。男女ともに黒っぽい色の人が非常に多い印象があります。流行に関係あるのかどうか知りませんが、日本などでは華やかな色合いの服装の方が多い女性について、とくに黒が目立ちます(郷に入っては郷に従えなのか、会社員の日本人女性も黒い服を身につけている人が多いです)。これも渋め好みというロンドン人気質の表れなのでしょうか。

(英国の旧国鉄)
さて、週末にとある場所の英国保存鉄道に行きました。保存鉄道とは、いまは使われなくなった蒸気機関車を博物館的な意味合いで走らせている鉄道のことで(実用には供されない)、英国各地に点在しています。ほとんどがロンドンから遠く離れた郊外にあり、ボランティアによって運営されているとのことです。
我々が出かけたのは、Spa Valley Railwayというところで、ロンドン中心部から旧国鉄(Brit Rail International, BRI)でおよそ50分の駅からさらにバスで10分の場所にあります。出かけた理由は、「機関車トーマスに会える」というイベントをしていたからで、トーマスは息子の大のお気に入りです。イベント自体は田舎のちゃちな客寄せ興業という感じでありました(ぼろぼろの機関車に数十分乗るだけで、2才の息子を含めて6ポンドずつ徴収された!)。
私としては、始めて乗った旧国鉄=BRIが実に興味深いものでした。意外だったのが、列車がとてもきれいだったことです。BRIといえば、旧国鉄の民営化に際して上下分離方式(線路と列車の運営主体を分離することにより鉄道に競争原理を働かせようとする試み)を導入したものの、事故が多発するなどかえって問題が拡大してしまい、存続すら危ぶまれるとんでもない鉄道というイメージがありました。確かに、我々が乗ろうとした電車もダイヤ通りの時間には来ず、15分遅れの出発になりました。それでも、乗った電車はどれも日本の特急並みにきれいで快適な旅でした。上下分離方式の問題は主に「下」(線路)の方にあるようなので、「上」はむしろ進んでいるということなのでしょうか。もちろん、しばしばBRIのぼろさを言う際に例示される、降りる際に扉の窓を開けて外にあるハンドルを自分で開けるタイプの旧型車両も見かけましたが、我々の乗った車両は新型のきれいな車両でした。

(社会的弱者に厳しい?)
これまでの拙文を読まれたある方から、「イギリスは社会的弱者に厳しい国ですね」とのご指摘があったのですが、今回の鉄道の旅でもそれを実感させられました。つまり、駅にエスカレーターやエレベーターの類が一切ありませんでした。バギーを抱えて階段を上り下りせざるをえず、大変です。地下鉄でもほとんどの駅がそうです。
鉄道に限らず、歩道の作りや信号のシステムなど社会的弱者への配慮という点では、日本と比べても大きく遅れているのではないでしょうか(もちろん個人の心持ちの問題ではありません)。もう二昔以上も前の話とはいえ「ゆりかごから墓場まで」(福祉先進国)のイメージは、今のこの国には全くありません。
この点について、先日イギリスの都市政策などの専門家の方に聞いてみたのですが、確かにその通りで社会的に問題にならないのが不思議なくらいとのことでした。理由の一つとして、他にやるべき投資が多すぎてそれらの投資についてはいまだに二の次、三の次の扱いに止まっていることをあげられていました(なお、その方が言うには、その点大陸欧州は全く違うとのことでした)。
この辺がこの国の経済・社会の脆弱さの一端を示しており、逆に最近は社会的弱者に対する政策という点でイギリスを遙かに凌駕してしまった感のある日本経済の懐の深さを知る思いがします。


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