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2005年05月13日(金) みんな12歳だった

もうすぐ5月が終わる。
あたしはもうすぐ12才になる。

ママとは仕事が忙しくてあまり会わない、パパは3年生のときに出て行った。

学校は渋谷の駅から高速道路の下を10分歩くと着く。
通学路の途中では止まった車からあたしたちの写真を撮っている男をよく見かける。
まるでまぶしいものでも見るような男の目はうっとうしい。
あたしたちのまっすぐな足や肩や髪や小さな胸に触りたくてたまらないのだろう。
でもこの男にそんな幸運は一生訪れないだろうなと
いつも胸の中で笑っている。

学校では先生や友達ともうまくやっている。
勉強もまあまあできるほう。
嫌われたり浮いたりするのは面倒だし、仲間はずれやイジメに関わることもない。
あんなのはバカのすることだ。

でもたまに先生や友達と話しているとたまらなくイヤになり、
手に持ったシャーペンを
顔や肩や胸や、とにかくめったやたらに
突き刺したくてしょうがなくなって手がぶるぶる震えてくる。
そんなときはカラダの後ろで手をぎゅっと握りしめ
ステンドグラスの模様をひとつひとつ思い出しながら
震えと刺したい思いが止まるのを待たなくちゃいけない。
やっと震えが止まって手のひらを見るといつもべったりと汗をかいている。

学校でたった一つだけ好きな場所はステンドグラスのある礼拝堂だ。
休み時間や放課後、礼拝堂の硬い木の長椅子に寝転んでステンドグラスを見上げる
この時だけ何もイヤなことを考えないですむ。
50年も前にわざわざイタリアから職人さんを連れてきて作ったという
色とりどりのきれいなガラスを通った光を浴びないと
きっとあたしはあたしでなくなる。

でも新学期になってから礼拝堂には鍵をかけるようになって勝手に出入りできなくなった。

あたしが学校に行く理由がまたひとつ無くなった。だから最近はあまり行かない。

ママはあんまり学校へ行けとかうるさいことは言わない。
学校はときどきすごくくだらないし、自立した女になるためには
こんな時期も必要よ。なんて言っていた。
そんなんじゃないのに、ってあたしは思ったけど何も言わないでおいた。

たぶんあたしはもう少ししたら
ステンドグラスの光を浴びないでも
日々をやりすごしていけるようになるだろう。
きっと震える手をぎゅっと握りしめることも減るだろう。

ステンドグラスなしで生きていけるようになるのが
大人になるってことなら
あたしは

大人になんてなりたくない


When the night has come
And the land is dark
And the moon is the only light we see
No, I won't be afraid
Oh, I won't be afraid
Just as long as you stand
Stand by me,

so
Darling   darling   ・・・



カオル**mail**yapeus**

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