女の世紀を旅する
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2001年12月25日(火) アメリカの中国脅威論の背景

《近未来の予測 アメリカの最大の仮想敵国は中国 》 
2001.12.25





●北朝鮮の工作船が東シナ海(鹿児島南部の奄美大島の西北)で海上保安庁の巡視船と銃撃戦になり,沈没したが,この地域は中国・台湾・朝鮮半島に近く,かねてから覚醒剤・麻薬の密輸や密入国の取引の舞台となるなど,「海上犯罪の多発地域」として知られており,日本も警戒地域に指定していた場所であり,今回の工作船も密輸関連の疑惑がおこっているのも当然なのだ.


この事件は改めて「ならずもの国家」北朝鮮の悪イメージを再確認することとなり,アメリカとしても中国と並ぶ北朝鮮の脅威論に拍車をかけることになろう.北朝鮮に対する懐柔政策の「太陽政策」を推進してきた韓国にとってはマイナスの事件である.米朝関係・日朝関係に重大ひずみが生じることになったからである.アメリカは今はアフガニスタンや中東パレスチナ問題に忙殺されて,極東の問題に無関心であるかのように見えるが,中東問題が一段落つけば,アメリカはいずれ対中国,北朝鮮と本格的に対峙することとなる.なによりもアメリカにとって最大の仮想敵国は中国であり,そのことに日本人は最大限の注意を払う必要がある.



●米軍,沖縄の空軍基地を強化

 下地島(しもじしま)は、沖縄本島から南西へ約300キロ離れた宮古島の近くにある。
 その下地島空港が今年、アメリカのアジア支配強化の渦の中に巻き込まれた。ことの始まりは今年4月28日、突如として米軍の軍用機とヘリコプターの部隊が空港に飛来したことだった。ヘリ部隊は、沖縄の普天間基地を飛び立ち、フィリピンとの合同軍事演習に向かう途中、給油のために下地島空港に着陸した。
 去年から始まった年中行事にも思える米軍ヘリ部隊の着陸であったが、実はもっと深い意味があることがやがて分かった。今年5月15日、アメリカ国防総省系のシンクタンク「ランド研究所」が発表した報告書「アメリカとアジア」の中に「シモジシマ」の名前が登場したからだった。

 報告書を書いた中心人物は、その後ブッシュ大統領の軍事顧問(国家安全保障会議メンバー)としてホワイトハウス入りしており、この報告書では、北朝鮮の脅威が減る可能性がある一方、アジアでの支配力を強めた中国が台湾を攻撃する可能性が増えていると指摘し、中国が台湾を攻めた場合の米軍の反撃をより効果的なものにするため、台湾海峡に近い場所に米軍の前線基地を新設することを提案している。フィリピンやベトナムに米軍機が離発着できる基地を新設することに加え、「米軍機が下地島をはじめとする琉球列島の各空港を軍事利用できるようにする」という提案が盛り込まれていた。(報告書では台湾海峡有事のほか、インドネシアやパキスタンが内戦に陥った場合に米軍が軍事介入できるよう、東南アジアや南アジアの米空軍拠点を強化することも盛り込まれていた)



●台湾有事に備えた前線基地になる沖縄西部

 琉球列島には、すでに沖縄本島に普天間基地や嘉手納基地という米軍の飛行場が2つある。それなのに新たに下地島などの民間空港を軍事基地として使おうとする背景には、下地島や石垣島といった沖縄県西部(先島諸島)は、沖縄本島に比べてずっと台湾に近いという地理的な事情がある。
 アメリカと中国との関係が悪化したのは今年(海南島に米偵察機不時着)に入ってからのことだが、実はアメリカは2年ほど前から、中国に対する軍事包囲網を作り始めていた。1990年に冷戦が終わった後、米軍が東アジアに駐留している必要性が低くなり、たとえばフィリピンでは大きな米軍基地が相次いでフィリピン側に返還され、基地が閉鎖された。1999年に入って北朝鮮とアメリカとの交渉が進んだときは、沖縄の米軍基地も縮小すべきだという意見が日米双方で増えた。

 この軍縮の動きを阻止したのが、アメリカの政界でわき上がってきた中国脅威論だった。「中国がアジアでの支配力を強化しており、アメリカを駆逐しようとしている」という見方である。この考え方に基づき、たとえば1995年以来やめていたフィリピンとアメリカの合同軍事演習が昨年(2000年 )から再開されている。
 ただし、日米関係を含めたアメリカの東アジア軍事戦略については、曖昧な点が多い。「中国とアメリカの対立が深まった原因は米中どちらにあるのか」「日本政府はアメリカの軍事戦略に対してどの程度ついていくつもりがあるのか」といった意見などである。事実,日本は中国や北朝鮮と対立は深めたくないという世論が強く,それゆえ日本の支援なしにアメリカの東アジア戦略は進めにくいという背景がある.



●アメリカが見捨てたパキスタンを助けた中国のねらい

 タリバン殲滅のアフガン戦争でアメリカはパキスタン政府と友好関係を回復したが,ここ2〜3年アメリカは、それまで同盟国だったパキスタンに冷たい態度をとっていた。1991年のソ連の崩壊まで、ソ連のアフガニスタン侵攻(1979〜86年)や、ソ連と親しかったインドに対抗するため、アメリカはパキスタンを軍事的、経済的に支援し、冷戦の重要な駒として使っていた。(パキスタンは1954年に米国がつくった東南アジア条約機構にも参加していた )

 しかし、1990年代に入るとアメリカはパキスタンとの距離を置くようになり,隣国アフガニスタンのタリバン支援などもあり,パキスタンのイスラム原理主義運動が活発化すると、パキスタンへの警戒感をさらに強めた。アメリカの支援漬けだったパキスタンの有力政治家は腐敗し、アメリカの支援が減るとともにパキスタンが国家破綻の危機に陥った一昨年、軍部のムシャラフ将軍が世直し的なクーデターで政権を奪取した。これはアメリカに捨てられた状態からの立ち直りを目指すもので、パキスタン国民の支持も大きかったのだが、アメリカはほぼ一貫して「ムシャラフは軍事政権で民主的でない」という立場をとり続けた。


 極めつけは昨2000年のクリントン前大統領のインド訪問で、「インドはパキスタンの何倍もの人口がある巨大市場だから」という理由で、アメリカはパキスタン支持からインド支持へと立場を変えた。昨年は経済危機も深まり、海外からパキスタンへの直接投資は70%以上も減ってしまった。
 孤立と混乱が深まる中で、パキスタンを支援し続けたのが中国だった。日用品から家電まで、中国からパキスタンへの輸出も増えた。中国は、対立するインドを牽制する上でもパキスタンに接近するメリットがあったが、インドに対してだけでなく、パキスタン南部のグワダル港開発を通じ、アメリカの世界支配にもくさびを打ち込む狙いがあった。

しかし,2001年10月米軍のアフガン戦争を機にアメリカはムシャラフ政権をはっきり支援する姿勢に転じたため,パキスタンの中国依存に変化が現われ始めたが,敵対するインドとの関係もあり,中国との友好を維持する必要があり,12月ムシャラフ大統領は北京に赴き,江沢民と友好関係の再確認をしてきた.インド北西部のカシミールの帰属問題をめぐってパキスタンとインドの敵対は55年間にわたって対立してきたが,このため両国は核兵器を所有して牽制しあっている.恐ろしいことだ.もしも将来インドとパキスタンが戦争を始めたら,アメリカはどちらを支援するのか,これは大変むずかしい選択となろう.もしアメリカがインドを支援することになったら,パキスタンは迷わず中国に支援をあおぐ可能性が高いが,多分アメリカは中立の立場をとらざるをえまい.パキスタンのような友好イスラム国を敵にまわすことは得策でないからだ.

今後とも中国とアメリカとの関係から目が離せない.






カルメンチャキ |MAIL

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