観能雑感
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2004年08月21日(土) 東京バレエ団創立40周年記念ガラI

東京バレエ団創立40周年記念ガラI  東京文化会館大ホール PM6:30〜

 古典から現代振付家の作品まで幅広いレパートリーを誇る東京バレエ団。本日のプログラムも多彩。
 C席、3階舞台向かって右サイド、舞台から遠いエリアに着席。舞台右下端が若干切れるが、ま、こんなものだろう。ほぼ満席状態。


『レ・シルフィード』
プレリュード:斎藤 友佳理
詩人:木村 和夫
ワルツ:佐野 志織
マズルカ:遠藤 千春
コリフェ:大島 由賀子、福井 ゆい
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

 ショパンのピアノ曲をオーケストラ演奏用にアレンジした音楽にのせて、ロマンティック・チュチュに身を包んだダンサー達が優美に踊る。コールドを従えてソロ・ダンスを見せるが、これといった筋書きはなく、クラシックバレエのエッセンスが凝縮されていて、ゆったり楽しめた。
 耳に馴染んだショパンの曲、ワルツとかマズルカとは大まかな区切りは識別できても、OP何番という曲番をすっかり失念していて、少々哀しい。

『パーフェクト・コンセプション』
井脇 幸江 吉岡 美佳 飯田 宗孝 大嶋 正樹

 イリ・キリアンの東京バレエ団オリジナル作品。舞台右側に逆さに吊るされた気のオブジェ。ダンサー達は紺色の着脱可能な四角いチュチュを時に腰の周りで回転させたり、頭にかぶったりと様々に駆使。黄色い照明にカラスの鳴き声、グールドの奏でるゴールドベルク変奏曲(晩年の演奏だと思われる)、配水管の水音などなど音楽も種手雑多。音と動きに包まれて、ついつい自分の思考に沈殿しがち。あの変幻自在なチュチュは、自我なのだろうか、などとぼんやり考える。

『椿姫』
斎藤 友佳理  高岸 直樹
ピアノ 高岸 浩子

 ジョン・ノイマイヤー作。三部構成の最後の部分。日本初公演とのこと。
 自分から離れていったマルグリットの気を引こうと彼女の友人に近づくアルマン。死病を得ている彼女は彼の部屋を訪れ無体は止めてくれと懇願する。
 ショパンのワルツ(例のごとく曲番は失念)はこれほどまでに激しさを秘め、情熱的だったのかと瞠目したピアノ演奏。斎藤は己の本心とあるべき振舞いの間で身を引き裂かれそうになっている女を哀しくも美しく見せる。揺れ動く心の襞を繊細に表現して圧巻。濃紺のドレスからベージュのドレスに早変わりし、直接的な愛の表現を示唆するが、観ていて胸が締め付けられるようであった。本日一番の収穫。

『バクチIII』
シャクティ:上野 水香
シヴァ:後藤 晴雄

 モーリス・ベジャール作。シヴァとその妻シャクティの踊り。バクチとはヒンドゥー語で敬愛を意味するとか。
 今年3月牧阿佐美バレエ団から電撃移籍した上野の移籍後日本初舞台。
 コールドに男性ダンサー数名。女性は上野のみ。全員赤いレオタードとタイツ姿。シヴァの存在感が不思議なほど希薄だが、シャクティはシヴァの一部でもあることを考えると、そもそもそういう構成なのかとも思う。驚くほどに均整のとれた上野の肢体は「踊るシヴァ神」と呼ばれる像を連想させる。音楽と振付もインド舞踊を意識していてその感をなおさら強めた。シヴァのエネルギーがシャクティという姿になって顕現したごとく、力強く幻惑的。本日二番目の収穫。

『エチュード』
エトワール:吉岡 美佳、木村 和夫、高岸 直樹
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

 ハラルド・ランダー作。基本的なバーレッスンから段々高度な技になり、最後は超絶技巧で締めくくる、バレエ・ダンサーの成長過程を通して古典的なバレエのテクニックをこれでもかと見せる。女性ダンサーは黒と白のクラシック・チュチュ、男性ダンサーは白とグレーのタイツ姿。音楽はツェルニーのピアノ練習曲をオーケストラ演奏用にアレンジしたもの。人気のある作品だし、何も考えずに楽しめるのだが、やや退屈してしまった。自分は単なる技の披露にはあまり興味がないのだと思う。

 ロビーでは久々にウラジーミル・マラーホフが王子役を踊る『ジゼル』と『白鳥の湖』のチケット先行予約を受け付けていた。観たいけれど、何かと出費の多い昨今、少々厳しい。来年の『SWAN LAKE』にはぜひ行きたいし。舞台は観始めるとキリがなくなるなぁと、ふと嘆息。


 


こぎつね丸