R女王様の秘密のお部屋...Dr.R

 

 

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『知らない』権利 - 2004年08月31日(火)

インフォームド・コンセント(※注)という言葉はここ10年余りで随分広く知られるようになりました。今や、患者の権利として常識になりつつあります。
(※→informed consent。自分の受ける医療行為について、いくつかの選択肢を含めた説明を医師から受け、充分に理解・納得した上で自らに施される医療行為の選択を行う方法のこと。『説明と治療』とも。最近『納得治療』という訳語をお役所が打ち出したが…、なんだかなぁ。)

でも、時々こうも思ってしまったり。






いやいや、勿論、患者さんのためにならないとかそういう事じゃないんです。人間には自己決定権というのがありますから。
訴訟リスクを下げる、とかそういう事でもなく(まぁ、きちんと納得していただいた上で治療し、ちゃんと信頼関係が構築されていたら、普通訴訟沙汰にはならないですが、そのためにするものでは断じてないので…)。

では、何が良いのかというと、このやり方では”実際の病名の告知”が前提になるということ。つまり、病名を隠してあれやこれや誤魔化さなくて良いということなんですよ!
もう、この、嘘を吐かなくてもいいってだけで圧倒的に気持ちが楽なのです。いや、マジで。
※総合的に見れば、告知にも苦しさ大変さはあるのですけどね

市中病院には、告知せず違う病名で治療を進めるケースが今でも結構あるようです。(勿論、望む方には告知しますよ!)大学病院ではどちらかというと告知が前提のことが多かった(治験はするし、そもそも科名からして『腫瘍内科』とかだし)のとは対照的です。患者さんの層(世代や考え方等々)が違うということでしょうか?

今月受け持ったとある女性患者さん。
肺癌(扁平上皮)、T2N0M1。(←専門外の方はごめんなさい)
ご家族の強い要望で告知はしないことになりました。
外来初診時の問診表のアンケートにも『(もし重い病気であってもそのことは)告げられたくない』とあります。告知の余地ナシです。

ところがどっこい。かな〜り手ごわい相手でした。

仮の病名を疑ってカマをかけるかける。自分、知らされたくないって言ったやん!!とこっそり思いながら、否定する毎日でした。

結局、他の患者さんの『私は癌だって言われたわ。先生がそうじゃないって言うなら、あなたは癌じゃないのよ』という一言で、彼女は疑うことを止めました。少なくとも、表向きには。

ありがとう…某患者さん…(感涙)

でも、でもね…、彼女は癌です…。stage�犬痢帖�うぅう…。

医者なのに嘘吐いてごめんなさい。でも、全ての患者さんには、知る権利と同じように、知らない権利もあるんですよ。。。


私は今日いっぱいで呼吸器内科を離れるので、主治医から外れ、同期のS先生@血内お疲れ!に引継ぎをするだけ。さらに言えば、治療を終えたら元の病院へお返しするだけ。
本当に辛い、医師としての裁量と良心を問われる日々は、この先症状が出現して、悪化の一途を辿るようになってからです。

今後もし私が患者さんを絶望させるような疾患を扱う医者になったとして、そのことを告げるときはどうしよう。

ふっと考えながら、今日も嘘を吐きます。

彼女の『知らない・知らされない権利』を、微力ながら守るため。

今晩の当直を以って、呼吸器内科ローテーションを終了いたします。
お世話になった先生方、色々とご親切にありがとうございました。
もう針刺しはこりごりです(泪)



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