時々管理日誌
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2018年07月14日(土) 覆面企画8後書き(1)

後書きテンプレ回答が長くなりすぎて、日記の文字数制限に引っかかるので、何回かに分けて連載します。
まだ全部書き終わってないので、全部で何回になるか不明です(^^ゞ
なんでそんなに長いかというと、がっつり設定語りしてるから。

■作者名

冬木洋子

■サイト名&アドレス

カノープス通信 http://www.geocities.jp/canopustusin/

■参加ブロック、作品番号、作品タイトル、作品アドレス

C09『プディヤの祈りは銀の蝶になって』
http://hkmn.html.xdomain.jp/blockc/c09.html


■ジャンル

異世界ファンタジー


■あらすじ

苗(ミャオ)族を主なモデルにした中国周辺高地少数民族風異世界の、女系大家族の跡取り娘(9歳)が、結婚前の通過儀礼を控えた『兄さま(従兄)』の儀式用戦装束に守護の呪力を込めた刺繍をするけど、大好きな兄さまがお婿に行ってしまうのが面白くなくて、ささやかな針目の乱れ(=呪力の綻び)をわざと放置してしまい、でもやっぱり兄さまが大好きだからすぐに後悔してやり直させてもらうという、『異世界千人針』ストーリー。


■意気込みテンプレを使用された方は、URLを教えてください。

http://www.enpitu.ne.jp/usr6/bin/day?id=64893&pg=20180505


■推理をかわすための作戦は?

前回同様、ネタの時点で、隠れるのは諦めてました。
前回はまだジャンルフェイクが効いたけど、今回はジャンルも、普段の私ど真ん中の、フォークロア調異世界ファンタジーなので……。

意気込みに『サイトに傾向が近い話が複数ある』と書きましたが、短篇のために専用のオリジナル異世界・異文化を用意して、その中で、ものすごくささやかな個人の哀歓を、その世界の人の価値観に沿って描く……というパターンが、『恋人の石』や『森の民』と同じなのです。
あ、『セイレーン』もそうかも。

特に、『森の民』シリーズ中の『夏告鳥の頃』には、地下の木の根の先にある『根の国』『影の国』が出てきたりして、世界観が非常に近いです。
どちらも、死んだ人の魂が天ではなく地下に行くという発想がある文化です。
一族の中で年上の人は血の遠近の区別なく十把一絡げに兄/姉・おじ/おば呼ばわりであり、年下はみんな弟/妹扱いの母系大家族という点も似ています。
同じ母系制でも、森の民は婿入り形式ではなく、男女ともに自分の生家を離れない変則通い婚形式なところが違いますが。

そして、アジア風の異世界という点では、覆面4の参加作『サヌザと共に』にも通じるかもしれないし(山岳少数民族みたいな人たちも出てきて、しかも巨鳥も出てくる)。
あと、ロリコン丸出しという点で(笑)、前回のパンドラや前々回の酔夢と通じるものもあるしで、これはもう逃げ隠れのしようがないな……と。

実は、ここ数年、ずっとスランプで、何も新しいネタを思いつけずににいたので、なんとかネタをひねり出せただけで御の字、書けるものを書けるように書くだけで精一杯……という状態で、隠れることにまで気を回す余裕はなかったというのもあります。

でも、せめてタイトルを見ただけでは当てられないようにしたいと、いかにも私がつけそうな『プディヤの祈り』とか『銀蝶樹の祈り』とか『銀蝶樹の森で』とかのシンプルで安直なのはやめて、頑張ってちょっと凝ったタイトルをつけてみたつもりだったのですが……なぜかみんなにタイトルが私っぽいと言われました(^_^;)(ありがとうございます!)

あ、あと、前回指摘された、行頭の『――』の前に字下げがないのは直しました。


■作品のネタを思いついたきっかけは?

(手……手……何も思いつかない……えーっと、何か、手のつく熟語……手作業……手芸……手抜き……? そうだ、手作業(手芸)の手抜きをする話にしよう! 手抜きをしちゃって、それが何か重大な結果を引き起こすとか、引き起こすかも知れないと想像して後悔するとか? で、『手芸』って具体的には……?)と考えたときに、たまたま『ミャオ族の刺繍と民族衣装』という本を読んでいたので、(そうだ、刺繍にしよう!)と思いつきました。
そして、『防護の呪力がこもった刺繍』にすることも思いつけました。
(ミャオ族の刺繍は、先祖の守護を表す吉祥文様なのです)

ここで、千人針とか『妹(いも)の力』とか『オナリ神』とかを連想して、そこから、『多感な少女が、ちょっとした心の揺れから、戦いに赴く親族男性に贈る千人針的な刺繍を手抜きする』というストーリーの大枠が出来、これがガチに戦争とかだと、『多感な少女のちょっとした心の揺れ』なんていうささやかなものと、生命がかかった戦場というシリアスなものが釣り合わないので、通過儀礼としての狩り(完全に形式的なわけではなく多少の危険を伴うが、通常は生死にはかかわらない)にしようと思いつき、そこで、(せっかく異世界ファンタジーなんだから、なにか巨大な始祖鳥とか翼竜的なやつを狩ってくることにしよう! 嘴には歯が生えてるといいなあ……)と、自分でワクワクしはじめました。

こう書くと簡単に思いついたようですが、この、(何も思いつかない……)と呆然としたり、頭の中でひたすら手のつく単語を羅列しつづける段階に、たぶん数週間かかり、その間、(やっぱり何も書けないから参加できないかも……)と悲観したりしてました(^^ゞ

余談ですが、↑の本は、すごい労作です。オススメです!
あと、関連本では、同じ著者によるこちらの『布に踊る人の手―中国貴州苗族 染織探訪18年』も良いです。

いずれも、何か直接参考にしたというほどではなく、イメージの元になっただけで、なので、この人たちはミャオ族というわけではなく、例えば建物とかはちょっとチベット寄りのイメージだったりと、いろんな文化のテイストがブレンドされてます。
名前も、現実の文化圏に当てはまりすぎないよう、どこかの国の名前から取るのではなく、プディヤとかパドゥハは、がんばって、検索に出てこないような珍名を創作しました。
(ユウアムだけはミャオ族の神話から取りましたが、響き的にあきらかに中国語っぽくはないので良いかな、と……。あと、ノイは、検索でいくらでも出てきそうだけど、端役だし、いろんな国に実際にありそうだしゲーム等でもたくさん使われてそうな名前だから、かえって文化圏を限定しなさそうで良いかな、と……)

そういうわけで、無国籍異世界ではありますが、樹木崇拝とか銀とか蝶々とか鳥とか羽とか、モチーフ的には、いろいろとミャオ族の文化から借りてきています。

ここから、ネタ元を語りながら、ついでに創作裏話に突入しちゃいます。

ミャオ族の聖木は楓香樹(フウノキ)という木だそうなのですが、銀蝶樹というオリジナル樹木に変えました。
これは、花が蝶の形だということは、たぶんマメ科の樹木で、だから、ニセアカシア(ハリエンジュ)みたいなイメージ……かな?
でも、ひとつひとつの花がもっと平たく開いて蝶っぽくて、花がぽたぽた落ちるのではなく花びらがひらひら散る感じ(……だといいなぁ)。
途中で一度、マメ科じゃなく、辛夷みたいな木でもいいかもしれない……と迷いましたが(これも蝶がとまってるみたいに見えるので)、蝶が舞うような落花をイメージするならやっぱりマメ科かなあ、と。

そして、作中で先祖の霊が蝶々の姿をしているのは、ミャオ族に『蝶々が楓香樹の下の泉の水の泡と恋をして始祖が生まれた』という大変ロマンチックな始祖神話があるためです
その蝶々が銀なのは、苗族が銀を神聖視して民族衣装に銀細工を使うところから。
鳥や羽というモチーフも、ミャオ族にとっては鳥も神話的なもので民族衣装の刺繍のモチーフに使われたり、お祭りの衣装に羽をあしらったりするから。(裾に鳥の羽をあしらった衣は『百鳥衣』というそうです)

あ、あと、もうひとつ、ネタ元。
『妹の力』を連想したときに思い出したのが、『もののけ姫』のカヤ(アシタカの元・許嫁)。
彼女がアシタカにあげる守り刀(アシタカが何の迷いもなさげにサンにあげちゃうやつ)について、スタッフ(宮崎監督だったか別の誰かだったか忘れた)がインタビューで、『あれは妹の力。でも、もちろんカヤはアシタカが好きなんですよ。じゃなきゃ面白くないでしょう?』的なことを語っていて、(ひどい……w)と思ったんですが。
『じゃなきゃ面白くないでしょう?』という一言が、(そうだよなあ……、ひどいけど、まあ、そうだよなあ……)と、印象に残ってて、ネタを考えてるときに、ちょっと連想したかもです。

というわけで、『兄さま』に恋してる血縁の少女という設定は同じですが、カヤがアシタカの許嫁だったらしいのと違い、こっちは、同じ〈大屋根〉内では同腹の兄妹じゃなくても実兄妹扱いで、結婚は考えられないので、もしユウアムがパドゥハと結婚しなくても、もし年が離れていなくても、プディヤにチャンスが回ってくる可能性はありません。
プディヤもそれは分かっているし、彼らの文化ではそれが常識なので、そのことに疑問を持ってもいません。
もしかしたら、プディヤは小さい頃、「大きくなったら兄さまをお婿にするの」とか言ってたかもしれないけど、それは幼女が「大きくなったらパパのお嫁さんになる」と言うのと同じで、プディヤにとっては赤面ものの黒歴史だし、ユウアムも当然、幼児の可愛いたわごととしか思ってなくて、まさかプディヤが将来ほんとに自分に恋をするかもなんて、想像したこともなかったはずです。

次回(その2)に続く……


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