日日雑記
emi



 こんにちは、いーちゃん

確か去年の今頃には完結してたハズの西尾維新「戯言シリーズ」。なんだかんだ引きつつ、とうとう大団円を迎えました。全9冊、"セカイ系"の頂点に立つ若者たちのカリスマ作家による渾身の最終巻……といったところなのでしょうか。

全冊揃って、さあ読みましょうな方のためにネタバレは控えようと思います。しかし一応ミステリーと銘打ってあるもの、ネタバレ無しに感想は書けません(T-T)
なので、以下は読みたい方だけお願いします。


西尾さんを始めとしてメフィスト賞でデビューした舞城王太郎や佐藤友哉ら三人は<ゼロの波の新人>と呼ばれるそうです。10代のほとんどをバブル崩壊後の1990年代という「スカ」の時代に送った彼らは、それまでと全く違った価値観を持っているのではないか――そんなことを揶揄しているそうです。

そんな彼らに共通してると(個人的に)思えるのは、「すべてを意味付けようとする鎖で、がんじがらめになった世界」を最早収拾のつかないまでに破壊し、散らばった欠片を呆然と眺めながら「こうはならなかったであろうもうひとつの世界」を夢想する……要するにTVアニメのエヴァンゲリオンをかなり忠実にトレースしているという点です。すなわち、世界の複雑な動態を単一要因に強引に理由付けようとする還元主義的思想の否定と言い換えられましょう。

ちりばめられた謎が謎を呼び、その衒学性が社会的ムーブメントを引き起こしていたEVAの最終回は、多くの視聴者に「物語の結論は与えられるだけでなく、観ている自分が選ばなくてはならないものなのだ」という考えを強烈に植え付けました。その結果、予定調和との戯れを求める者は混乱し拒否する一方で、創作の種を内に抱える者たちは新たな受け手との関わりの可能性を模索し始めます。

「気に入らない終わりは拒否するんですか?」
「当然だ。俺は作者じゃなくて、読者だからな」

もともと読者をして「ああ、自分は今読者として物語りに関わっているんだ」と意図的に意識させるジャンルは、およそミステリー以外にないとは思います。しかし、ここまであからさまに「自分は読者なのだ。終わりを選ぶ権利がある」と主張するのも稀有なこと。
最終回から10年近く経って、エヴァの子どもたちがたどり着いた答えが「これ」なのかもしれない――そう思うと数多のキャラを惜しげもなく消費してきた物語の根拠が、うっすら見えてくる気がするのです。


だから、さよならではなく、こんにちは。
こんにちはだよね、いーちゃん!





2005年11月14日(月)
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