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■ 本田美奈子のOVERSEA
本名、工藤美奈子。デビュー直前に工藤夕貴がデビューしたため、紛らわしいので苗字を本田に変更したそうだ(当時人気絶頂の"マツダ"聖子を意識したらしい)。 あたしにとって彼女の価値を決定付けたのは、和製マドンナではなくミス・サイゴンでもなく、ただ一枚のアルバム『OVERSEA』に依る。
1987年発売のこのアルバム、全編オリジナルの英語詩で歌われている。辛口批評で有名な某FM雑誌で「このクオリティの高さはただごとではない」と書かれていたのに興味を惹かれたのだ。 同時期、奇しくも松田聖子がアメリカデビューの前哨戦として、やはり全曲英語詩オリジナルアルバム『SEIKO/SOUND OF MY HEART』を発売しており、このような企画が多かったのかもしれない。
1980年代は日本をMTVが席巻し、70年代的方法論とおニャン子登場の狭間でアイドルが変容を余儀なくされた時期である。幕の内弁当的音楽番組が次々と姿を消し、カワイイだけでは立ち行かなくなったアイドルたちの路線変更は多岐にわたった。 本田美奈子がミュージカル・オーディションに臨んだのもおそらく、身の振りの選択肢のひとつだったろうと思われる。『OVERSEA』は、そんな彼女に捨てられた選択肢と言えるかもしれない。
楽曲はソウル、プログレ、パンクと幅広く、テクニックもなかなかのものだ。発音がイマイチでも、それすら愛らしい。華奢な体から発するパンチ力は、後のミュージカル・スターとしての片鱗をも感じさせる。
更なる飛躍への期待と病名と短命がないまぜになり、すでに死が伝説化されるような扱いは意図的でいかがわしく眉をひそめてしまうけれど、彼女のがむしゃらな生き方は貴いと思う。合掌。
2005年11月09日(水)
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