日日雑記
emi



 anywhere but here

SFファンやマニアにとってあまりにイメージがベタ過ぎるため、かえって口はばったい固有名詞がある。
今読んでる小説もそれで(もちろん恣意的なんだけど)、「タイムトラベル」と「夏への扉」が頻繁に出てくる。

最近SFやミステリーの体裁をとった、胸締めつけられるような青春物語に次々当たってる。そのたんび、自分の恥ずかしい過去の想い出に蓋をし損ねて、羞恥で床をゴロゴロしてしまう。
これらの基本コンセプトは「賢いことと知恵があることは違う」「青春の挫折とは、格下だと思ってた相手がいつのまにか実力をつけ、前向きに未来へ漕ぎ出してゆく姿を、黙って見送るしか出来ない"置いてきぼりにされる無力な自分"を自覚すること」、このふたつである。

特に後者は信じられないくらいひどく心をえぐる。格下の相手に対し、保護の気持ちが知らぬ間に恋にスライドしてたりすると、取り返しがつかないほど惨めだ。

ハインラインの不朽の名作「夏への扉」は、時間に翻弄される恋人たちの物語である。紆余曲折を経て、逆転満塁サヨナラホーマーのような画期的解決策が、読後いつまでも深い余韻を残す。
今読んでる小説に「夏への扉」という固有名詞が使われるのはさもありなんだが、こちらは少々勝手が違う。何故なら扉を通って行ってしまう相手の背中にすがることも叫ぶこともできない、思春期特有の自尊心と挫折の物語だからだ。

読みながら、どうしても主人公と鋼の少年の姿がだぶってしまい、頭を切り替えるのに四苦八苦した。彼(ら)の思いはただひとつ「anywhere but here (ここ以外のどこへでも)」。それは自分が無力な存在だと思い知らされたり、誰かに置いてきぼりにされた孤独を味わったり、そんなことのない場所。ただそこへ行きさえすれば。

ただでさえシンクロが激しいのに、書店で新しく翻訳された「星の王子様」を見かけたたら、思わず膝が萎えて泣き出しそうになった。

あまりにも符牒が多すぎる。

それとも単にマルチプルアウトが働いているだけなのか。


2005年07月25日(月)
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