 |
 |
■■■
■■
■ 焼け跡にバッハが聞こえる
とにかくね、先生は「おまえはダメだ、そんなんじゃ全然ダメだ」って文句ばっかりなんだよ。否定されてばっかだったのね。しかもぼくは生来のあがり症でホント自分はダメなんだーってへこんで。
ところがアメリカに留学したら「いいよ、キミすごくいいじゃない」って教授に言われるわけ。そうするとその人信用できなくなっちゃうんだよ。ウソだ、自分は下手でダメなはずだって。もういろいろ葛藤があってさ、しょうがないんで心理カウンセラー受けたんだ。
それがね、まず向かいに置いてある椅子に齋藤先生が座ってるって仮定すんの。それで先生に対してわだかまってた自分の不満や不安、疑問なんかを次々ぶつけるのよ。最初はできないんだけど、2.3回やるとだんだん慣れてきて(笑)、もう言いたい放題すんの。 次に今度はぼくがその椅子に座り先生の立場になって、さっき自分が投げかけた言葉を受け止めるんだ。 そうすると不思議なもので、先生の考えや苦悩が見えてくんだよねえ。先生が指摘したとおり、自分はなまけてたとか甘えてたとか分かって。それで先生を許せたんだ。でも初めて先生と語りたいと思ったときは、もう遅かった。先生亡くなったあとだったんだ。
齋藤秀雄の生涯を教え子たちが証言する番組の中で、あるヴァイオリニストがこんなふうに語ってました。 去年松本に旅行したとき泊まったホテルに、サイトウ・キネン・オーケストラコンサートのパンフが置かれていて、ロビーでひとりぽつねんと、聞こえない音を拾おうとしてました。
齋藤秀雄編曲バッハのシャコンヌを聴きながら、今宵は眠りにつきましょう。
2005年07月09日(土)
|
|
 |