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2008年12月01日(月)
「君のお父さんは、源氏物語が好きだったのかな。いやお母さんの方か」 腕の中に葵を抱き込みながら、セイヤは訊くともなく話しかけた。 「ゲンジ…?」 葵の返事は眠そうだ。 一戦交えた後、うとうとと眠りかけていたらしい。 「君の名前さ。葵の上から取ったんじゃないのか」 「俺の名前…付けたのは祖父さんだって話だけど」 あくび混じりに答える。 「ほう、ではその方の趣味かな」 なんでセイヤは眠くないんだろう、と葵は思う。睡眠時間は決して多くはないし、今だってさんざん激しく運動したのに。 「んー、祖父さんの趣味は時代劇だよ。いつもTVの再放送見てた…」 「源氏物語も時代劇…と言えなくもないが」 無理がありすぎだ、と葵もセイヤ自身も心の中で思う。 「祖父さんが好きだったのは『水戸黄門』だよ。で、兄貴には三登って名前付けた。俺には光圀って付けたかったらしいけど、母さんが泣いて反対して葵になったって」 「…」 「俺は光圀の方が良かったな、葵ってなんか、女みたいな名前だし」 「いやいや、よく似合ってるじゃないか」 ミツクニなんてかわいげのない名前じゃなくて良かった―――と、心の中で首を振るセイヤだ。 「ちぇっ、だから嫌なんじゃないか」 まだぶつくさ言う葵のほっそりした背を抱きしめる。 「AOIの方が呼びやすい」 「まあ、それはそうなんだよなー。アメリカ人にミツクーニとか言われるのも、いまいちだよな」 いまいちどころではない。そんなのは誰か別の人間だ、とセイヤは思う。 葵は葵だ。他の名前など考えられない。 それに、セイヤの頭の中では絶対に『この紋所、の葵』ではなく、『光源氏の正妻である葵の上』だ。助さん角さんの持つ印籠のイメージじゃなく、あくまで深窓の姫君でなくては。 「まあいいや…セイヤにそう呼ばれるのは好きだし」 言いながら、セイヤの首に腕を絡ませる。押し当てられたその欲望がまた育っているのを感じてセイヤは笑みをこぼす。 この葵は、物語の葵の上とは違って実に奔放だ。 その身体の上にもう一度乗り掛かりながら、セイヤは葵の名を呼んだ。
END
ボストンのお屋敷に来たばかりの頃のエピソード。まだ二人とも新婚さん(笑)
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