徒 然 草
自堕落日々の暴露記です。
更新があればタイトルに載せますのでご参照ください。

2004年09月01日(水) ひとまわり。

突然、オリジナル書きたい病が発病しました。何故に(笑)?逃避かしら(笑…えない)?

ま、餅日記があまりに別人モードだったからだと思いますが(苦笑)☆

そんな餅日記ですが、今回でどうにか1年分クリアできました。元旦がないのが残念かな。
ちょっとホルストの「惑星」の気持ちです。あの組曲は地球と冥王星がないので。冥王星の発見前に書かれた曲なので仕方ないのですが、彼の星を守護星(聖に非ず)とする私は少し淋しいです。ホルストが書いたらどんな曲だったのかなぁ…。

閑話休題(いつものこと<居直んな)。

食べ物に釣られて書き始めたこのシリーズは「毎回完全独立設定で一発勝負」という気楽さが私に合っていたような気がします。
つか、枯木山が思いっきり停滞している(現在進行形<殴)のでそのお詫びも兼ねていたのは今だから言えることだったり。お詫びになっていなくてすみません(ぺこり)。
食欲&地方色全開でいつも以上に独り善がりだったかと思いますが、少しでもお楽しみいただけたら恐悦です。

1年間、お付き合いくださいましてどうもありがとうございました〜(ぺこり)v


それから、四方山の背景を変えてみました。今月は私の大好きな曼珠沙華v
(先月の向日葵も好き〜v)
できれば毎月背景を変えていきたいと思います。写真を選ぶのって楽しいですね〜♪自分で撮れたらもっと楽しいんだろうなぁv

浅間山が噴火したのですね。ネットの情報でしか存じ上げませんが、某さんを始め付近の方はどうか灰などで体調崩されませんようになさってくださいませね。


それでは、ラストコール(「アタック25」かい☆)。
中3設定の天不破となります。ごゆるりとどうぞ♪



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「燎一、今日は何時に家を出る?」
「10時です。先に、仏前に参らせてもらう予定ですので」
 キリマンジャロが香り立つマイセンのカップをソーサーに戻して天城は答えた。
 インクを乾かす為にかけられたアイロンの温もりを残した新聞から、視線を逸らさずに会話が続けられる。
「そうか。…では、これで何か買っていくといい」
 傍らに控えていた秘書に眼差しで促し財布を出させると、数枚の紙幣を抜き出した。それを改めて秘書に渡す。
「くれぐれも先方に失礼のないようにな」
「はい」
 テーブルの対角から歩み寄った秘書から紙幣を受け取り、胸ポケットに丁寧にしまった。
 手土産代にしては多額なそれには、供花代も含まれていることは自明だった。
「…かずえは、雛菊が好きでした」
「そうか。私はもう出社する」
 一面と経済面のめぼしい記事のチェックを済ませ、席を立つ。そのまま扉に向かう背中に、穏やかな声が掛けられる。
「有り難うございます、父さん」
「…ああ」
 軽く視線を交わすと、開かれた扉へと歩を進めた。眼差しが見送っているのを感じる。9ヶ月振りの再会にしては、交わした言葉は少ないと言えるだろう。だが、二人はそれで満足していた。


 大きくなったな、燎一…。


 黒塗りの送迎車の中で父が微かに頬を緩ませたことは、運転手だけが知るところであったのである。





 台風一過で見事なまでの晴天の中、かずえの遺族から菩提寺を教えてもらった天城は久しぶりの日本の湿度に辟易しながらも手桶と供花を携えていた。
 新盆を済ませたばかりの墓には慎ましやかな花々が供えられている。残暑で萎れかかったそれと持参した雛菊を取り替えて、線香に火を点ける。小さく息を吹きかけ、煙をくゆらせる。膝をつかないように腰を下ろし、両手を合わせて瞳を閉じた。

 
 かずえ…。遅くなったが来たぞ。元気か?

 
 脳裏に小柄な姿が甦る。胸中で渡独後の様子を言葉少なに報告し終えた天城は、徐に瞼を開くとすらりと立ち上がった。

 
 …っ!!

 
 気配を感じて振り向いた直後、刮目する。それを受けた不破が薄く笑った。
「やはり、ここに来ていたのだな」
 満足気に首肯すると、砂時計の止まった天城に制服姿で歩み寄る。
「9ヶ月と3日ぶりだな。…少し身長が伸びたか?」
 すい、と薄めの掌が伸ばされる。否、以前よりは厚くなってはいるのだがやはり自分よりは薄い。一度梳られてから、それを手に取る。
「ああ。2センチほど伸びた。不破は?」
 掌の中の左手と眉尻がぴく、と震えた。眉間に皺が刻まれる。
「…ぬ。俺は、1.5センチだ」
 僅かに声音が低まった返答に、今度は天城が瞳を細める。控えめな風が、二人の間を通り過ぎた。それに促されるようにかずえの墓前を後にする。不破の手を離し、手桶を持ち上げると「また来る」と告げて背を向けた。




「不破、学校は?」
「今日は始業式とHRだけだからな。もう終了した。お前の家に電話をかけたら出掛けたと言うので、おそらくこちらだろうと思って来た」
 離れるにつれて小さくなる墓石を一瞥して軽く目礼する。再度天城に視線を戻した。
 その対象は、うっすらと頬を染めて瞬きをする。大きな掌で砂色の頭髪を掻いた。
「…すぐに連絡しなくて、悪かった」
「?」
 くり、と焦茶色の頭部が右に傾いだ。
「お前はこの為に帰国したのだから、最優先するのは当然だろう。何故謝る?」
 天城が僅かに瞠目し、微苦笑を零す。


 変わっていないな…。


 渡独後は時折メールを遣り取りしてはいたが、やはり実物から受ける印象が強い。その声、その姿、その存在が淡白でありながらどこまでも鮮烈なのだ。
 そして、感情を排他すると誤解されるほど合理的。それがほんの少しだけ、淋しく感じられる。


 俺は、ドイツの家で与えられる素直で惜しみない愛情に慣れてしまったのだろうか。
 物足りない。
 もう少しだけでも多く…不破の感情が、知りたい。


 そう思いながら歩く天城のシャツの裾を不破が引っ張る。
「どこまでいくつもりだ?」
 手桶の返却所を通り過ぎかけていた天城が慌ててそれらを元の位置に戻した。
「後は住職に挨拶して終わり、だな」
 その問いかけに一つ肯く。本堂の脇で本人に出会うと、天城が声を掛ける。
「住職、お世話になりました。これで失礼しま…」
「済まないが住職、小皿を貸しては貰えないか?」
 皆まで言い切る前に、不破が割って入る。不遜とも捉えられかねない言種だったが、住職は快く応じた。
「はい、少々お待ちいただけるかな。何枚必要かな?」
 刹那、思案した不破が「4枚願いたい」と返す。
 3分後、小皿を手にして再び登場した住職に礼を言う。そのまま立ち去ろうとする住職を不破が呼び止めた。右手に提げていたビニール袋を軽く掲げる。
「住職の時間があればだが、一緒にこれを食べないか?」
 天城と住職が顔を見合わせる。歯牙にもかけずに不破が続ける。
「こいつに、故人の話でも聞かせてやって欲しい」
 瞬時に朱に染まる天城を見て、住職が破顔した。
「そういう事でしたら、喜んでご相伴に預からせて頂きましょうか。さあ、どうぞ」
「感謝する」
 促された不破が住職の後に続く。暫し凍結していた天城も不破に引き摺られるようについて行った。




 住居となっている建物の縁側に通され、お茶を供される間に不破が持参の菓子を小皿に載せた。一皿に二つずつ。4番目の皿が誰の為の物なのかに気付き、不覚にも目頭に熱が滲んだ。

「……有り難う、不破」

 僅かに震えるその声が、不破の心に染み入った。はんなりと眦が綻ぶ。
「どういたしまして、だ。後で彼女にも食べてもらおう」
 宗教や霊魂についてその信憑性の乏しさを口にすることを憚らない不破が、これほどかずえを思い遣ってくれている。 そのこと自体も有り難かったが、それ以上にここまで自分に寄り添ってくれたその気持ちこそが、天城には嬉しかった。

 
 やっぱり、俺は贅沢になっていたようだな…。

 
 今だってこうして自分の肉親でもない人間の昔話を興味深げに聞き入っている。それは単に情報として興味を持っているのかもしれなかったが、それでも充分だといえるだろう。
「ほう、可愛らしいおはぎですのう。それではいただきます」
 一頻り語り終えると、直径5センチほどの小さなおはぎに菓子楊枝を刺した住職が微笑んだ。半分に切ってゆっくりと噛み締める。
「美味しいですね。これはきっとかずえさんにも喜んでいただけると思いますよ」
「うむ、住職にそう言ってもらえると心強い」
 既に半分食べ終えた不破が天城の手元に視線を投げた。僅かに惑ったそれに、天城がそそくさとおはぎを口にする。
「…美味しい。昔、かずえが作ってくれたものに味が似ている。こんな風に塩味が少し強かったんだ」
 鼻腔を掠める小豆の優しい甘さを吸い込んで、味蕾からの刺激と一緒に堪能した。素直な味の餅米を包んだつぶし餡が、それを嬉しそうに作っていた乳母の両手を想起させる。
「…そうか」
 小さく零されたその言葉に、少なからぬ安堵が含まれていたのに住職は気付いた。顔面の皺が一際揺れる。庭先に愛らしく咲き誇る赤紫の花々を見遣って語り出した。
「おはぎは、このつぶし餡のつぶつぶとした小豆の色を萩の花に見立てて“萩の餅”と呼んだのがその始まりだったと言われているのですよ。かずえさんは植物がお好きでしたから、嬉しく思われることでしょう」
 二人の少年を優しい笑顔が包み込む。軒下では風鈴が、同意するように柔らかな音色を立てた。






 再び、かずえの墓前に立ち寄っておはぎを供える。二人並んで黙祷する。


 自分の大切な人間が、大切な人間を大切にしてくれるということは、嬉しいものだな…。
 かずえ…、お前の笑顔と似ているような気がする。
 だから、俺がこいつをこれからも大切にしていたら、お前も喜んでくれるだろうか…?


 琥珀色の虹彩を澄み切った青空に向けると、先程の風鈴の音が鼓膜に届いたような気がした。



「そろそろ、行こうか」
「了解した」
 ごく自然に差し伸べられた右手を、当然の如く握り返す。
 柔らかくしっかりと繫がれた掌からは、互いの温もりが緩やかに溶け合っていった。





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餅日記のトリは意外なところで天不破で(笑)。
背番号に因んだのだから、藤でもOKなのですが。当然のように主人公はスルーというのが東屋らしい…(苦笑)。
藤はやっぱり書けませんでした…(がくり)。藤不破は読み専の勢いでGO☆
よりマイナー(だと思われる)で需要の少ない(だと思われる<天不破スキーの方すみません)坊ちゃまに転ぶのが私らしいかと。この組み合わせも結構好きなんですよ♪
しかし思いっきり絡みが少ないのが私流天不破の特徴(多分)なので、お楽しみいただけるかは別問題且つ大問題なのですが(をい)。
(や、東屋に求められているのはぶっちゃけ絡みだと思っているのですよ私)
それでも久しぶりの坊ちゃまを、楽しく書かせて頂きましたvかずえ関連は当然ながら脳内設定なので宜しくお願いいたします(言うの遅)。
  
そんな微妙な一品ですが、先日目出度くも十万打を迎えられた緑の君に勝手にお贈りさせていただきたく思いますv
がっつり遅くなりましたが(殴)、6桁突破おめでとうございます〜vv
ご多忙だとは思いますが、これからもご自分のペースで制作された素敵な作品で私たちファンを倖せにしてやってくださいませv
  


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真砂 天藍