月のシズク
mamico



 能力不足のレスポンサー

「ラストサムライ」のレビューをあんな形で公表したことに関して、
それなりの反応が出てくることは予想していました(掲示板参照)。

どちらかというと、アメリカに同情的な部分を出してしまったが故に、
「キミはいったいどこの国の人なの?」というメイルをいただいたり、
「あんなクソ・ハリウッド映画に熱くなるなんて、バッカじゃないの?」
と云われたり。名誉のために弁明しておきますが、私は生粋の日本人で、
この国の文化をこよなく愛しています。アメリカかぶれではありませぬ。

でもね、いろんな人があれだけ議論というか、意見を書いてくれたことを
嬉しく思っているのです。それだけあの映画が、観ているひとの心をぐらぐら
揺さぶったから、その反応が言葉として溢れ出したんでしょ?「そうよね」という
同情文化に慣れた私たちにとっては、少々カゲキに映ったかもしれないけど。

過去の辛い歴史を言語化するって、ほんとにしんどい作業だと思います。
だって、その過去を恥じているから、思い出したくないわけでしょ?
日本だって、そういう過去はある。南京大虐殺や、従軍慰安婦問題など。
どれもまだ、日本国内では言語化できていませんよね。

最近、「脳」に興味を持って、その手の本をよく読んでいます。
記憶が貯蔵されるのは脳なわけだから、どんな記憶が脳のどこに仕舞われるの
かを知りたくて。養老孟司先生と古館伊知郎さんの対談集『記憶がウソをつく!』
を読んでいて驚いたのが、「アメリカと日本は、記憶をチャラにするリセット本能
を持っているところが似ている」と書かれていたこと。

イギリスが嫌になった人々が、本国を脱出してアメリカ国家を作ったように、
かつては日本も朝鮮半島や中国大陸から移住してきた人々によって形成された。
で、「大化の改新」以降、奈良、平安時代に続き、今度は武家政権が出てきた。
それが潰れ、室町になって...歴史をまとめて最期に大リセットしたのが江戸時代。
その後も、明治になってリセットし、戦後になってリセットした。
リセットされるたびに残ってゆく残滓を「和魂」と言った、と。

こんなことを書いたらまた「バッカじゃねーの」と罵倒されそうですが、
私たちも自国について知らないこと、直視できず終いのとこがたくさん
あるんじゃないかな。そんな無意識的部分に気づいただけでも、私はあの
映画を観てよかったなと思っています。掲示板にいただいたご意見に対しても、
何度も考えた上でレスポンスさせてもらいました(能力不足なのは認めます)。

人生の善い面、楽しい面ばかり見て生きていけたら、そりゃ楽だろうけど、
それはそれで不幸ですよね。たぶんおそらく。あー、私って根暗だわ(笑)

2004年03月05日(金)
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