こばなし

雨が降っていた。

ざあざあと音を立て、なにかにかんしゃくを起こした子供のように
激しく、なげやりな。



「…久しぶりだね。」


懐かしい声に顔を上げれば、少し困ったように笑んだ目が見下ろしている。

「ぬれるよ」

と、手を差し出す。
何のためらいもなく、それが当たり前のように。

「…もう、充分濡れてますよ」
「じゃあそれ以上濡れてもしょうがないだろう。
おいで。風邪を引くといけないから」

幼子のように手を引かれ、見覚えのある町屋に連れて行かれる。
自分はまるで野良犬だ、と思った。











やまなしおちなしいみなし。
2006年06月24日(土)

生きてるってなあに / にこりん